俵物
たわらもの
長崎では「ひょうもつ」といった。江戸時代,長崎から輸出した海産物。俵に詰めて輸出されたので,この称がある。初めは「いりなまこ」「乾あわび」の2品であったが,のち「ふかのひれ」を加えた。 17世紀末以来,長崎のおもな輸出品は銅であったが,18世紀なかばから銅が不足し対清貿易は俵物諸色 (しょしき) がこれに代った。幕府は各地に請負人を定め,長崎には俵物会所をおき,長崎町人に取扱わせたが,天明5 (1785) 年俵物請方を廃して俵物元役所を設け,役人を諸国に派遣して直接買入れを行なった。
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たわら‐もの たはら‥【俵物】
〘名〙
① 俵に入れた物。多く、米や海産物をつめたもの。
※鵤荘引付‐永正一八年(1521)二月一一日「俵物を被レ註、任二彼員数一に可二打賦一」
② 江戸時代、
長崎貿易の輸出品であった
水産物をいう。元来は
煎海鼠(いりなまこ)、干鮑
(ほしあわび)の二品であったが、のち
鱶鰭(ふかのひれ)を加えて三品とした。諸色(昆布・鯣・天草など)とちがい俵に入れたところからいう。
※牧民金鑑‐御廻米・延宝元年(1673)二月「少成共疑敷儀有之候而俵物刎捨候は」
ひょう‐もの ヘウ‥【俵物】
〘名〙 俵に入れたもの。また俵づめした
穀類。
俵子(ひょうす)。ひょうもつ。たわらもの。
※浮世草子・日本永代蔵(1688)一「杉ばへの俵物(ヒャウモノ)、山もさながら動きて」
ひょう‐もつ ヘウ‥【俵物】
※文明本節用集(室町中)「俵物 ヘウモツ 又云俵子」
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俵物
たわらもの
江戸時代,長崎から輸出した食品原料の煎海鼠 (いりこ) ・干鮑 (ほしあわび) ・鱶鰭 (ふかのひれ) の3品の総称
俵詰めにしたのでその名があり,「ひょうもつ」とも読む。長崎貿易での輸出品の首位は銅であったが,生産減少のため幕府は1764年俵物輸出を奨励。田沼意次 (おきつぐ) は'85年俵物元役所を設け,産地の蝦夷 (えぞ) 地で直接集荷させて輸出につとめ,金銀を輸入した。
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俵物【たわらもの】
一般には俵詰にした米,水産物などを総称していうが,特に江戸時代長崎貿易で中国へ輸出された海産物のうち俵装したものをいい,煎(いり)ナマコ,干しアワビ,フカの鰭の3品。金・銀・銅の流出防止のため輸出された。コンブ,テングサ,するめ等は諸色(しょしき)と呼ばれた。
→関連項目隠岐国
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デジタル大辞泉
「俵物」の意味・読み・例文・類語
たわら‐もの〔たはら‐〕【俵物】
1 俵に入れてあるもの。米穀や海産物など。
2 江戸時代の長崎貿易で、輸出品であった水産物のうち煎海鼠と乾鮑の2品をいう。のち、鱶鰭を加えて3品とした。ひょうもつ。
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たわらもの【俵物】
いりこ,干しアワビ,フカのひれなどの海産物を俵に詰めて輸送したために起こった呼称。近世長崎貿易において中国貿易で銅代替輸出品として重要な地位を占めていた。これらの海産物は中国の高級食品として需要が多く,日本のみならず東南アジア,南太平洋諸地域でも生産され,中国市場へ輸出されていた。幕府は,はじめ長崎の中国貿易を金銀で決済していたが,その流出が著しく増加したため,1685年(貞享2)金銀に代えて銅を輸出することとした。
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世界大百科事典内の俵物の言及
【三陸海岸】より
…産業面では世界四大漁場の一つに数えられる三陸沖を舞台にマグロ,カジキ,カツオ,サンマ,イカ,サバ,イワシなどの漁業が盛んである。また古くから〈俵物(たわらもの)〉として輸出された海産物の産地の一つで,アワビ,ワカメ,コンブ,ホタテガイなどの養殖漁業も発達している。宮古,釜石,気仙沼,女川は全国屈指の水揚高をもつ漁港で,設備も整っている。…
【抜荷】より
…例えば武器は1634年(寛永11)輸出は禁止され,外国貿易での抜荷にあたる。俵物三品(いりこ,干しアワビ,ふかのひれ)は1785年(天明5)長崎会所以外の者が生産者から買うことは禁止されたので,それ以外の者と取引するのは国内貿易での抜荷である。この場合および次の(2)の場合は抜買ともいった。…
※「俵物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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