日本大百科全書(ニッポニカ) 「匹見」の意味・わかりやすい解説
匹見
ひきみ
島根県南西端、美濃郡(みのぐん)にあった旧町名(匹見町(ちょう))。現在は益田市(ますだし)の南東部を占める地区。1955年(昭和30)匹見上(かみ)、匹見下(しも)、道川(みちかわ)の3村が合併して匹見村となり、1956年町制施行。2004年(平成16)美都(みと)町とともに益田市に編入。旧町域は、中国山地の脊梁(せきりょう)部に位置し、匹見川とその支流が流れ、南東部は広島県・山口県と接する。国道191号、488号が通じる。旧石器・縄文・弥生・古墳の各時代の遺跡や埋蔵文化財が多い。区域の96%は山林。雑木林が多く、パルプ用材のチップや木工加工品を生産する。渓流沿いは年平均気温が約14℃で、ワサビ栽培(生産量は全国有数)が盛ん。おもに京阪神と広島県へ出荷され、芽茎は静岡へ送られる。冬季は積雪が多く、昭和30年代に人口の半数以上の流出をみた。過疎対策がとられ造林業、森林の整備・管理の振興が図られている。東部一帯は西中国山地国定公園の一部で匹見峡がある。
[野本晃史]
『矢富熊一郎著『石見匹見町誌』(1965・匹見町)』