十善(読み)じゅうぜん

精選版 日本国語大辞典 「十善」の意味・読み・例文・類語

じゅう‐ぜん ジフ‥【十善】

〘名〙 仏語
① 十悪を犯さないこと。不殺生・不偸盗(ちゅうとう)・不邪淫・不妄語・不綺語(きご)・不悪口(あっく)・不両舌・不貪欲・不瞋恚(しんい)・不邪見の一〇種の善をいう。十善業十善戒十善業道
法華義疏(7C前)一「経既云五戒得人身、十善得天身
② (前世に①を行なった果報によって、この世で天子の位を受けるとする仏教思想による) 天皇、天子のこと。十善の君。また、天子の位。
※東大寺続要録(1281‐1300頃)造仏篇「昔本願皇帝展十善手壇」
※幸若・烏帽子折(室町末‐近世初)「王は十ぜむ神は九ぜむ」

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デジタル大辞泉 「十善」の意味・読み・例文・類語

じゅう‐ぜん〔ジフ‐〕【十善】

仏語。十悪を犯さないこと。不殺生・不偸盗ふちゅうとう・不邪淫・不妄語・不両舌・不悪口ふあっく不綺語ふきご不貪欲ふとんよく不瞋恚ふしんに・不邪見。

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改訂新版 世界大百科事典 「十善」の意味・わかりやすい解説

十善 (じゅうぜん)

10種類の善行を総称した仏教用語。十悪に対する。十善業(じゆうぜんごう),十善道(じゆうぜんどう),十善業道(じゆうぜんごうどう)などともいう。仏教では人間の行為のすべてを身体,口(言葉),意(こころ)の3種に分かち,十善とは身三,口四,意三の悪行(十悪)をなさないことである。すなわち,身体において殺生(せつしよう)(殺すこと),偸盗(ちゆうとう)(盗むこと),邪淫(じやいん)(男女の交わりのよこしまなこと),言葉においては妄語(もうご)(うそをつくこと),両舌(りようぜつ)(仲たがいさせることばをいうこと),悪口(あつく)(わるくちをいうこと),綺語(きご)(でたらめをいうこと),意においては貪欲(とんよく)(むさぼること),瞋恚(しんい)(怒ること),邪見(じやけん)(誤った考え方をすること)の,それぞれをなさないことである。この十善をきびしく守ることを十善戒といい,江戸時代後期の慈雲が広く説いた。国王,天皇,またはその位を十善というのは,前世で十善を行った功徳によってその位についたと考えられたからである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「十善」の意味・わかりやすい解説

十善
じゅうぜん

仏教用語。十悪,十悪業道に対する語。 10種の悪をなさないこと。十善業道ともいう。

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