10種類の善行を総称した仏教用語。十悪に対する。十善業(じゆうぜんごう),十善道(じゆうぜんどう),十善業道(じゆうぜんごうどう)などともいう。仏教では人間の行為のすべてを身体,口(言葉),意(こころ)の3種に分かち,十善とは身三,口四,意三の悪行(十悪)をなさないことである。すなわち,身体において殺生(せつしよう)(殺すこと),偸盗(ちゆうとう)(盗むこと),邪淫(じやいん)(男女の交わりのよこしまなこと),言葉においては妄語(もうご)(うそをつくこと),両舌(りようぜつ)(仲たがいさせることばをいうこと),悪口(あつく)(わるくちをいうこと),綺語(きご)(でたらめをいうこと),意においては貪欲(とんよく)(むさぼること),瞋恚(しんい)(怒ること),邪見(じやけん)(誤った考え方をすること)の,それぞれをなさないことである。この十善をきびしく守ることを十善戒といい,江戸時代後期の慈雲が広く説いた。国王,天皇,またはその位を十善というのは,前世で十善を行った功徳によってその位についたと考えられたからである。
執筆者:井ノ口 泰淳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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