南方前池遺跡(読み)みなみがたまえいけいせき

日本歴史地名大系 「南方前池遺跡」の解説

南方前池遺跡
みなみがたまえいけいせき

[現在地名]山陽町南方

前池の池底から発見された縄文時代遺構群で、県指定史跡。遺構はドングリなどの木の実を収納した土中に掘られた穴で、直径・深さとも一メートル内外の穴一〇基が発見された。穴は木の葉やアンペラで覆われていたものと推定されている。発見当時から一般に貯蔵穴とよばれているが、単に貯蔵を目的としたものではなく、穴に浸出する地下水を利用して渋抜きをしたものと考えられている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「南方前池遺跡」の意味・わかりやすい解説

南方前池遺跡
みなみがたまえいけいせき

岡山県赤磐(あかいわ)市南方の丘陵斜面をせき止めた溜池(ためいけ)の底にある縄文時代晩期と弥生(やよい)時代の複合遺跡。県指定史跡。遺跡の下層には縄文晩期の土器が包含されるが、この層の上面から下方に掘り込まれた小竪穴(たてあな)10個が発見された。小竪穴は径約1メートルの円形で深さ70~130センチメートル、底丸で、内部にトチ、カシなどのドングリが大量にあり、上部には木を渡して樹皮や木の葉や網代(あじろ)で覆い、さらに粘土で密封した状態がみられた。縄文晩期の食物貯蔵の好例である。

[今井 尭]

『南方前池遺跡調査団編「岡山県山陽町南方前池遺跡」(『私たちの考古学』7号所収・1956・考古学研究会)』

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