印刷機械(読み)いんさつきかい(その他表記)printing machine

日本大百科全書(ニッポニカ) 「印刷機械」の意味・わかりやすい解説

印刷機械
いんさつきかい
printing machine
press
printer

版にインキをつけ、紙に押し付け、版の模様を写す機械装置。版の種類によって、凸版印刷機、平版(へいはん)印刷機、凹版印刷機、孔版印刷機の4種になる。また紙の形状により、枚葉印刷機(A判、B判など一定のサイズに断裁された紙=枚葉紙に印刷する機械)、巻取印刷機(輪転機)があり、紙以外の物質に印刷する場合、金属板印刷機(ブリキ印刷機)、チューブ印刷機、ビニル印刷機、布地印刷機などの別がある。また、コンピュータによって作成・保存された文字や画像の電子データを紙などに出力する装置もプリンターとよばれ、印刷や印刷機械の概念を広げることとなった。

 凸版印刷機の原型は、1445年ごろドイツのヨハネス・グーテンベルクがブドウ絞りの機械を改造してつくった活版印刷機である。螺旋(らせん)とレバーとを組み合わせ、インキをつけた活版の上に紙をのせ、真上から圧力をかけるプレス方式で、ここから印刷機をプレスというようになった。この場合、版面が平らで、圧板も平らであるから平圧機という。この加圧方式は小型機に用いられ、大きな圧力を加えられるが、印刷速度は遅い。そこで円筒によって圧力を与える円圧機が1810年ごろに出現した。これは大型印刷機に利用される。版をのせる版盤は往復運動をするため、印刷速度は遅い。その後、鉛版(えんばん)を丸くして、版も圧胴もシリンダー状にし、巻取紙を使う輪転機が1868年ごろ完成し、その後しだいに改良が加えられている。

 1798年、ドイツのゼーネフェルダーによって石版(せきばん)印刷が発明され、簡単な手動印刷機が実用になった。石版はやがて金属平版となり、オフセット印刷法が1904年に発明された。これは版から直接紙に印刷せず、一度ゴムブランケット(ゴム布)に印刷してから紙に印刷する方法である。現在使用されているオフセット平版印刷機は、自動的に紙を供給し、版を湿し、インキを与え、印刷圧を与え、紙を取り出し、積み上げる。巻取紙を使うオフセット輪転機も多用される。また、グラビア印刷は輪転形式で、版胴に与えられた余分なインキをかき取るドクターブレードがあるのが特徴で、毎分数百回転のスピードが出る。オフセット輪転機もグラビア輪転機もインキ乾燥設備が付属する。

[山本隆太郎]

『渡辺昭俊著『印刷機械入門』(1989・印刷学会出版部)』『印刷機械自動化事典編集委員会編『図解印刷機械自動化事典』(1995・印刷学会出版部)』『泉和人著『新・印刷機械入門』(2001・印刷学会出版部)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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