石版印刷(読み)セキバンインサツ

デジタル大辞泉 「石版印刷」の意味・読み・例文・類語

せきばん‐いんさつ【石版印刷】

石版で印刷すること。また、その印刷物

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精選版 日本国語大辞典 「石版印刷」の意味・読み・例文・類語

せきばん‐いんさつ【石版印刷】

  1. 〘 名詞 〙 石版を用いて印刷すること。せきいん
    1. [初出の実例]「有山商店 石版印刷及び額画発行販売店にして十五番地にあり」(出典:風俗画報‐二〇五号(1900)神田鍋町)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「石版印刷」の意味・わかりやすい解説

石版印刷
せきばんいんさつ

石版石を加工し、版として使って印刷するもの。石版石とは大理石に似た石でドイツの特産品である。1798年ドイツのゼーネフェルダー発明した印刷法で、石版石の表面脂肪を受け付ける画線部分(インキがつくところ)と水を受ける非画線部分(インクがつかないところ)とを化学的につくる。脂肪性インキをつけたローラーを石版上で転がせば、模様(画線部分)以外の部分は石の多孔質のために水分を含んでいるのでインキはつかず、画線部分は脂肪性であるのでインキを受け付ける。このように石版は水と脂肪の相反発する性質を巧みに利用した印刷法であり、発明者は石の凸版をつくろうと種々の実験を試みているうち偶然にこの原理を発見した。印刷にあたっては、まず水で版面を湿し、ついでインキをつける。

 石版印刷は最初、手がきの製版だけであったが、砂目をつけた石版や多色の石版、あるいは他の印刷法から石版に移す転写法のくふうが行われ、きれいに色が出るので芸術的ポスターなどの印刷に盛んに用いられた。日本には明治時代技法が伝えられ、額絵、雑誌付録などの印刷に利用されたが、樹脂凸版によるカラー印刷原色版印刷)が始まり、また金属平版が発明されるに及んで、重くて取扱いの不便な石版はしだいに衰退した。その技法は金属平版に受け継がれ、また芸術的版画としてリトグラフの名でいまも画家に利用されている。

[山本隆太郎・中村 幹]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「石版印刷」の意味・わかりやすい解説

石版印刷
せきばんいんさつ
lithography

平版印刷の一種。版材に炭酸カルシウムを主成分とした石版石を使うもので,1796年ドイツの A.ゼネフェルダーによって発明された。石版石の上に脂肪性を含んだインキを落し,それをふき取ったところ,その跡が水を反発する層になっていることを発見,それが発明のきっかけになったという。その原理は製版用インキ (解墨〈ときずみ〉) の中に含まれている石鹸分が加水分解によって脂肪酸分子を遊離し,その一端のカルボキシル基で石版石表面に吸着して画線の基礎をつくる。これに使う専用印刷機もあるが,特殊な工芸印刷以外はほとんど金属平版に変った。

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図書館情報学用語辞典 第5版 「石版印刷」の解説

石版印刷

石版石を利用した平版印刷の一種.石版石は石灰石の一種で,脂肪をよく吸収する性質と,水分をよく吸収・保持する性質を備えている.これに脂肪性の液体やチョークで描写し,アラビアゴム液を与えると,画線部分は油性,非画線部分は水性の版面ができる.この版に油性のインキを用いれば,画線部分のみにインキが付着する.この方法で初めて印刷を行ったのはドイツのゼネフェルダー(Johann Nepomuk Franz Alois Senefelder 1771-1834)であった.

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世界大百科事典(旧版)内の石版印刷の言及

【印刷】より

…ここで凸版印刷の大宗である活版印刷の方法が確立し,500年にわたる文字印刷を築きあげた。 1798年,ドイツのA.ゼネフェルダーは,ゾルンホーフェン地方に産する大理石の1種を加工して凸版を作り楽譜印刷を試みたが,凸版形式にせずとも化学的な方法により印刷版を作ることを発明,石版印刷を完成した。多孔質である石の面に脂肪に感ずる画像部分を作り,同じ平面でありながら,脂肪性印刷インキのつくところとつかないところを作って印刷を行う平版版式である。…

※「石版印刷」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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