輪転機(読み)リンテンキ(英語表記)rotary press

デジタル大辞泉 「輪転機」の意味・読み・例文・類語

りんてん‐き【輪転機】

印刷機械の一。版を巻きつけた円筒と、これを圧しながら回転する円筒との間に、ふつう巻き取り印刷紙を通して連続的に印刷するもの。短時間に大量印刷ができ、新聞・書籍などの印刷に使用。活版用やオフセットグラビア用、小型の孔版印刷用などがある。

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精選版 日本国語大辞典 「輪転機」の意味・読み・例文・類語

りんてん‐き【輪転機】

報知新聞‐明治三〇年(1897)五月六日「輪転機を据え付け夫れぞれ試験を積みたる末」

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改訂新版 世界大百科事典 「輪転機」の意味・わかりやすい解説

輪転機 (りんてんき)
rotary press

輪転印刷機ともいう。円筒状の版を用い,円筒形の圧胴によって紙を押しつける形式の印刷機。印刷速度が早いのが特徴で,オフセットもグラビアもこの方式で印刷することが多いが,一般には輪転機というと,新聞印刷用の新聞輪転機として理解されている。また輪転機には枚葉紙を使うものがあるが,新聞輪転機からの連想巻取紙を使って連続的に印刷するもの(巻取紙輪転機)だけを輪転機と呼ぶ傾向が強い。巻取紙輪転機が枚葉紙を使うものより高速であることは機械的にみても当然であり,巻取紙輪転機が増える傾向にある。ただし,少量部数の印刷とかとくに精密なカラー印刷などには不向きであり,また出版印刷用の機械には必ず折り装置か,枚葉紙に切る装置が付属し,包装紙用などでは巻取装置とかその他の加工装置を連結したものもある。巻取紙を供給する装置は,簡単なものでは巻取紙1本を心棒で受け,これから紙をほぐし出すが,高速になると巻取紙1本が数十分程度で終わり,次の巻取紙に掛けかえて紙を継ぐ手間と,その間にゆるんだ分の紙の印刷がだめになる損失が大きい。このため運転を止めないで紙を継ぐ装置が早くから研究され,新聞用に,紙継ぎ装置つきの3本の腕の先に巻取紙を掛けて,この腕を順に旋回する式のリールが使用された。しかし全速のまま確実に紙継ぎできるものは最近になって実用化されたものである。以下,巻取紙輪転機のおもなものについて述べる。

(1)新聞輪転機 高速印刷が要求されるのは新聞がもっとも切実で,輪転機は新聞用として製作された。すなわちロンドンのタイムズ社が1866年に製作し,日本では90年にフランスのマリノニ社製の輪転機が,官報印刷用として官報局(現在の印刷局)に,新聞印刷用として朝日新聞社に輸入された。この機械の速度は版胴の最高速度が毎分250回転で,紙の走行速度にして現在の半分足らずで紙幅も小さかったが,当時としては非常な高速であった。その後しだいに高速化し,昭和の初めには版胴速度が毎分600回転に達し,紙幅は現在と同じ新聞の横幅4ページ分となった。新聞輪転機の印刷速度は4ページ新聞が1時間に何部印刷できるかで表すことがふつうで,当時すでに15万部と公称されたが実用速度はこの半分くらいであった。その後速度はあまりあがっておらず,実用で最高12万部くらいで,最近は速度をあげることより,故障発生の防止,安全性・操作性の向上,騒音の減少,全体の軽量化などの方向にむかっている。また8ページ,12ページ,24ページとかの新聞を作るために表裏1色の機械を何台か連結したものが使われ,各印刷部から出たものを一つの折り装置に導入して重ねたものを折って出す。

(2)書籍輪転機 雑誌などの本文を印刷するための活版輪転機で,基本的には新聞輪転機と同じであるが,折る回数が多いので折り装置は複雑である。

(3)オフセット輪転機 オフセット印刷に用いられる輪転機。1912年にドイツのフォマーク社で最初に製作され,第2次大戦後急激に発展し,日本ではやや遅れたが70年ころから各方面で需要が急速に増えた。これは,製版や印刷の技術はもちろん,用紙やインキなども改良されて環境衛生問題も解決し,美しい印刷物が短時間に得られるようになったことと,カラー印刷の場合でもグラビアに比べ製版が簡単であることによっており,電話帳,パッケージ,ちらし,雑誌のカラー刷りなど幅広く利用されている。ただし製版の点では長所が多いが,機械は他の版式に比べて複雑で操作にも高い技術を要する。カラー刷り用の印刷機には,1本の太い圧胴に何色分かの印刷部を配した構造(衛星型という)をもつものと,圧胴なしに表用・裏用のゴムブランケット胴どうしをつきあわせて,この間に紙を通して表裏を同時に印刷するユニットをいくつも並べた構造(ブランケット-ブランケット型という)とがある。

(4)グラビア輪転機 グラビア印刷を行う輪転機。グラビア印刷はほとんど巻取紙使用の輪転機で行われ,版は円筒の表面に直接作られ,この版胴をインキに浸して回転し,ドクターでインキの余分をこき落としたところに圧胴で紙を押しつける。機械は簡単だが製版が複雑で長時間を要するため,印刷部数の多いもの,また製版の性質上写真の多いものの複製に最適である。日本には第2次大戦前に輸入されていたが,戦後,写真の多い雑誌(グラフ類)が増え,また紙以外のものにも印刷できる特色をいかしてパッケージにもグラビア印刷が歓迎され,カラーグラビア輪転機の生産も盛んになった。印刷界では出版物用の印刷に対し,パッケージや壁紙・化粧板の印刷は特印グラビアとして区別しているが,機械の構造の基本的な部分は同じで,前者用には折り機が,後者用には巻き取る装置がついているのがふつうである。
印刷機
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百科事典マイペディア 「輪転機」の意味・わかりやすい解説

輪転機【りんてんき】

平盤の版面をもつ円圧式印刷機に対し,円筒状になっている版面と,これに紙を押しつける圧胴が相対した構造の印刷機。凸版オフセット印刷グラビア印刷の各印刷方式にそれぞれ輪転機がある。高速度で大量生産を必要とする新聞,雑誌等の印刷に向いている。1811年にF.ケーニヒ高速輪転機を発明,1866年にはロンドンのタイムズ社が新聞輪転機を製作した。日本にも1890年にフランスのマリノニ社製のものが朝日新聞社などに導入された。また,1912年にドイツのフォマーク社でオフセット輪転機が作成され,日本では1970年代に普及した。
→関連項目印刷機新聞用紙平圧式印刷機

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世界大百科事典(旧版)内の輪転機の言及

【印刷機】より

…版の方式によって,凸版を用いる凸版印刷機,平版を用いる平版印刷機,凹版を用いる凹版印刷機,およびシルクスクリーン印刷謄写版用の孔版印刷機にわけられるが,平版はそのほとんどすべてがオフセット印刷なので,平版印刷機=オフセット印刷機と考えても差支えない。また版の形状と押圧の機構からは,平らな版を用い平らな圧盤で加圧する平圧式印刷機,版の形状は平らであるが円筒形の圧胴で加圧する円圧式印刷機,および丸い版を利用し円筒形の圧胴で加圧する輪転機の三つに大別される。このように印刷機にはさまざまな種類があるが,基本的には,(1)加圧機構,(2)インキをつける装置,(3)紙を供給・移送し,刷り終わったものを整えて排出する装置,(4)その途中で乾燥させる装置の4部から構成されており,高性能のものほど主要機構である加圧部より他の部分が大がかりである。…

【ケーニヒ】より

…17年バウアーと共同でビュルツブルクに印刷機製造工場を設立。高速輪転機の生産を行い,漸次大量生産に入りはじめた19世紀前半の新聞・出版業に,格好の生産手段を提供する。1813年イギリスの《タイムズ》がこのケーニヒの輪転機を買い(この機械で印刷を開始したのは1814年11月29日号から)日刊紙生産に大変化をひきおこすのが,そのことを象徴している。…

※「輪転機」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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