原子力事故の被害者による原子力事業者に対する損害賠償請求について、円滑、迅速、かつ公正に紛争を解決することを目的として設置された公的な紛争解決機関。裁判によらない紛争解決手続き(ADR:Alternative Dispute Resolution)を進める公的機関の一つで、原発ADRともよばれる。2011年(平成23)3月に発生した東北地方太平洋沖地震にともなう東京電力福島第一原子力発電所事故の損害賠償について和解の仲介手続きを行うため、原子力損害賠償法に基づき、2011年8月、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会の下部組織として発足した。文部科学省、法務省、裁判所、日本弁護士連合会の専門家で構成される。第一および第二東京事務所と福島事務所(郡山市)のほかに福島県内に4支所があり、同年9月から事故被害者からの申立て受理などの業務を開始した。東京電力は原子力損害賠償紛争審査会が示した賠償の目安(中間指針)に基づいて賠償基準や賠償額を決めており、この東京電力の決定に不服がある場合、事故被害者は原子力損害賠償紛争解決センターに仲介を申し立てる。申立てを受け、同センターの調査官が調査を行い、弁護士らで構成する仲介委員が和解案を提示して早期合意を促す。仲介手続きの口頭審理は東京・福島事務所や4支所で行われるほか、電話やテレビ会議で事情を聞くこともある。申立てや和解の手数料は無料である。同センターはホームページに、成立した和解実例の一部を公表しており、似たような境遇にある事故被害者の救済の参考にしている。
発足当初、センターの人員は仲介委員約100人、調査官約30人、事務補佐員約20人であったが、申立て件数に比べて調査や仲介にあたる人員が圧倒的に不足していたため、順次、増員している。しかし2014年2月末時点で、申立て件数1万0145件に対し、和解成立件数は6914件にとどまる。当初は申立てから4~5か月程度での和解成立を想定していたが、実際は和解成立に平均約8か月かかっており、仲介打切り(749件)や取下げ(729件)になるケースもあり、仲介に不満で裁判を起こす事例も出ている。
[編集部]
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