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去勢 きょせいcastration

翻訳|castration

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

去勢
きょせい
castration

一般に動物の性腺を摘除することをいう。家畜では食用牛などで行われる。ヒトでは,普通は男の精巣除去をさすが,女の卵巣摘除も去勢ではある。男の去勢は,昔中国で宮廷に仕える者 (宦官 ) に対して行われる風習があった。最近では,前立腺癌を治療するために行われる。去勢すればもちろん生殖能力を失うが,性欲や勃起は去勢の実施時期による。 10歳頃までに去勢されると,思春期を過ぎても第2次性徴発現がなく,性欲が起らない。成人を去勢すると,性欲は不変またはわずかに低下し,ひげが消失,肌は女性的で皮下脂肪が増す。女性は去勢されても男性化せず,いわゆる更年期症状や乳房の萎縮,肌あれがみられる。

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デジタル大辞泉の解説

きょ‐せい【去勢】

[名](スル)
生殖腺(せいしょくせん)を除去し、機能をなくさせること。もとは雄の精巣(せいそう)除去をいった。第二次性徴の発現する前に行うと、中性的な体つきとなる。家畜では、闘争心をなくして群飼育できるようになり、脂肪の適度な肉質になる。
自主性や抵抗する気力を失わせること。多く、受け身の形で用いる。「去勢された現代人

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百科事典マイペディアの解説

去勢【きょせい】

一般にはの精巣(睾丸(こうがん))を摘出して生殖機能を永久的に奪うこと。卵巣除去を含めることもある。畜産上では,品種改良のため劣等個体を除去する目的や,肉量をふやしたり,性質を温和にして管理を容易にする目的で,雄に実施する。

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世界大百科事典 第2版の解説

きょせい【去勢 castration】

雄性の生殖腺である精巣を摘出するか,あるいは他の方法でその機能を廃絶させること。雌の卵巣を摘出する卵巣割去を含めることもある。去勢により雄は雄性ホルモンの分泌が絶たれるため二次性徴は消失する。ヒトでは前立腺癌や乳癌などのホルモン依存性腫瘍の治療のため去勢を行うが,家畜ではその利用価値を高めるためにしばしば用いられる。すなわち肉用家畜では雄畜の肉の不快なにおいが除かれ,かつ筋繊維が細かくなって肉質が向上するうえ,脂肪の蓄積がよくなって肥育性が増す。

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大辞林 第三版の解説

きょせい【去勢】

( 名 ) スル
動物の雄や人間の男子から精巣を取り除くか、その機能をなくすこと。広義には、雌雄を問わず生殖腺を除去すること。その結果、生殖不能や二次性徴の退化が起こる。食肉用の牛・豚や鶏に対して行うと、脂肪の多い柔らかい肉が得られる。使役用の家畜に行うと性質が温順になる。 「 -された牛」
人から反抗心や気力を奪うこと。 「 -された思想」 「 -者」

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

去勢
きょせい
castration

動物の雄の精巣(睾丸(こうがん))を手術的に摘除するか、または性腺(せいせん)刺激ホルモン放出ホルモンアナログの大量、持続的投与などにより生殖腺(性腺)機能をなくさせることをいう。雌の卵巣摘除を含めることもあり、この場合は性腺摘除gonadectomyともよばれる。普通は両側の性腺摘除を意味する。[白井將文]

ヒトの去勢

精巣(睾丸)摘除術によらず、性腺刺激ホルモン放出ホルモンのアナログを大量に持続的に投与することにより性腺機能をほぼ完全に抑えることができるようになったが、外科手術による去勢と多少意味が違ってくる。なお、男性の場合、両側の精巣摘除による心理的影響を緩和するため、シリコーンの義精巣を陰嚢(いんのう)内に挿入することがある。
 両側の性腺が摘除されると、男性では男性ホルモンのテストステロン血中濃度が、女性では卵胞ホルモンのエストロン血中濃度が、それぞれ低下する。これに伴って下垂体前葉に特有な細胞(去勢細胞)が多数出現し、性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)を分泌する。すなわち、視床下部―下垂体―性腺のホルモン分泌のフィードバック機構によるものであり、男性ではゴナドトロピンが増え始めて、30~60日後に血中濃度が一定値に落ち着く。女性の場合は去勢後20日前後に最高値に達して一定となる。この値は、閉経後の女性の値に近いものである。
 なお、前立腺癌(がん)のうち、80~90%はアンドロゲン(男性ホルモン物質の総称)依存性があり、去勢によって精巣性アンドロゲンを体内から消失させることにより、癌細胞を退行変化させようという抗アンドロゲン療法の一つを去勢療法という。しかし、最近では精巣摘除術はほとんど行われなくなり、もっぱら性腺刺激ホルモン放出ホルモンアナログの大量、持続的投与が行われるようになった。これに抗アンドロゲン剤投与を併用すると効果がより大きくなる。
 男性で二次性徴発現前に去勢を行うと、精巣上体(副睾丸)、前立腺、陰茎などの副性器の発育が停止して萎縮(いしゅく)や性器発育不全をおこし、中性的な体型の男性(いわゆる類宦官(かんがん)症)となる。成人になってから去勢すると、二次性徴が徐々に退行し、性欲減退などがみられる。女性の場合も二次性徴発現前に去勢を受けると、子宮、卵管、腟(ちつ)、陰核などの副性器の発育が停止して性器発育不全をおこし、中性的な体型となる。[白井將文]

動物の去勢

家畜を改良するには、利用しようとする能力をいっそう向上させ、強力に遺伝させることが重要である。また、動物の雄は性的に成熟すると闘争心が強くなり、群れのなかでのボス的位置づけが決まるまで争うことがある。このため家畜では、繁殖上の必要がない個体は、性的成熟の前に雄性生殖腺である精巣を外科的に切除する。一般に去勢とよばれるこの手術により、肉質の粗剛化を防ぎ、肥育の面でも筋繊維間に適度な脂肪の沈着・蓄積を図り、市場価値への向上に務めている。さらに、飼育の面では群飼も可能になる。一方、雌の生殖器は腹腔(ふくこう)内にあり、これを切除するのは煩雑である。しかし、ほぼ雄の去勢に近い目的で卵巣を割去することもあり、これを卵巣去勢とよぶ場合もある。
 ウシやブタ、ニワトリでは、飼養規模が大きく一度に大量の去勢手術が望まれることから、便利な器具が考案されている。しかし基本的には、精巣を覆っている陰嚢を切皮し、精系を切断して出血を止め、化膿(かのう)を防ぐことである。また、ウシでは近年、陰嚢の基部に鈍性の刃を挟んで強力に圧切し、精系を挫滅(ざめつ)して去勢の目的を達する無血去勢鉗子(かんし)法が行われる。ウマでは競走馬を除いて、乗馬とか使役馬として柔順化を図る目的で、メンヨウでは肥育と毛質の改善のために去勢をする。イヌやネコでは、発情時期の喧噪(けんそう)と雑種の繁殖を防ぐために卵巣去勢が行われる。このほかに、イヌに対して発情抑制剤を皮下に移植する方法と、懸濁(けんだく)水性液の注射を数回くり返して発情を抑え、妊娠を防ぐ方法がある。皮下移植の場合、ある一定期間内に抑制剤を摘出することが必要で、摘出すると発情は再発し、注射の場合は投与を中止すると発情が再発するため、それぞれ一時的な避妊処置として使われる。[本好茂一]

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世界大百科事典内の去勢の言及

【除雄】より

…人為的に植物の雄性器官を取り除くこと。同じ操作を動物に施す場合には去勢という。作物では品種改良で交配を行うときに,自花受粉を防ぐためにとくに必要とされる操作である。この場合の除雄は,花粉が成熟する前の時期に行う必要があり,一般には人手により,未裂開の葯を完全に除去し,花粉が飛ばないようにする。イネでは花粉のほうが子房よりも温度に対する抵抗性が低いので,この差を利用して穂を温湯に浸して花粉のみを死滅させる方法もある。…

【ヒツジ(羊)】より

…断尾は断尾器を用いて,第3と第4の尾椎間で切断する。肉用のものでは雄の去勢も行われる。削蹄(さくてい)は3ヵ月に1回くらい行う。…

※「去勢」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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