日本大百科全書(ニッポニカ) 「カストラート」の意味・わかりやすい解説
カストラート
かすとらーと
castrato イタリア語
少年時の声を大人になっても保つために去勢した男性歌手。喉頭(こうとう)は少年時代のままであるが、肺は成人の肺になるため、強く張った響き、特有の声質、非常に広い声域をもつ。カストラートに関する記録は、1562年のローマ教皇庁礼拝堂にまでさかのぼるが、全盛期は1650年ごろから1世紀で、ファリネッリFarinelli(1705―82)がもっとも有名である。カストラートはオペラ・セリアにしばしば登場したが、喜劇的オペラにはまれにしか用いられなかった。モーツァルトのオペラ『イドメネオ』『ティトゥス帝の慈悲』にはカストラートのための役がある。ローマ教皇は1903年にカストラートを禁止した。最後のカストラートはモレスキAlessandro Moreschi(1858―1922)で、彼の声はレコードに記録されている。
[美山良夫]