参らす(読み)マイラス

デジタル大辞泉 「参らす」の意味・読み・例文・類語

まいら・す〔まゐらす〕【参らす/進らす】

[動サ下二]連語まいらす2」の一語化》
物などをすすめる意の謙譲語。さしあげる。
御台をだに―・せで、め奉りつるを」〈落窪・一〉
補助動詞)他の動詞の連用形に付いて、謙譲の意を表す。…申し上げる。お…する。
「かくだに思ひ―・するもかしこしや」〈・一二八〉

まいら◦す〔まゐらす〕【参らす/進らす】

[連語]《動詞「まいる」の未然形+使役助動詞「す」》
「行かせる」の謙譲語。参上させる。
「急ぎ(生マレタ皇子ヲ)―◦せて御覧ずるに」〈桐壺
「させる」「すすめさせる」の謙譲語。奉仕させる。差し上げさせる。
「まじなひ加持など―◦せ給へど」〈若紫

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「参らす」の意味・読み・例文・類語

まいら‐・すまゐら‥【参・進】

  1. 〘 他動詞 サ行下二段活用 〙 ( 四段活用動詞「まいる(参)[ 二 ][ 一 ]」に、使役の助動詞「す」の付いた「さし上げさせる」「奉仕させる」の意の「まいらす」が、その使役される者を表に出さないで、「さし上げる」動作そのものを表わすように変化して一語化したもの )
  2. [ 一 ]
    1. 上位者へ物などをすすめる意の謙譲語で、その動作の対象を敬う。さし上げる。献上する。
      1. [初出の実例]「人々引き具して帰り参て〈略〉薬の壺に御文そへてまいらす」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    2. ある動作をする意の謙譲語で、その動作の対象を敬う。してさし上げる。奉仕する。また、用意申し上げる。
      1. [初出の実例]「みぐしあげまゐりて、蔵人ども、御まかなひの髪あげてまゐらするほどは」(出典:枕草子(10C終)一〇四)
  3. [ 二 ] 補助動詞として用いる。他の動詞の連用形に付いて、その動作の及ぶ対象を敬う謙譲表現を作る。…し申し上げる。
    1. [初出の実例]「如何にもして永らへて、御行末を見進らせよと仰せられて」(出典:平松家本平家(13C前)九)

参らすの語誌

( 1 )[ 二 ]の補助動詞としての用法は、院政時代から「聞こゆ」「奉る」に代わって盛んになった。室町時代には「まらする」「まいする」の形を生じて、謙譲語・丁寧語に用いられたが、あらたまった場面などの謙譲語としては「まいらする」も使用された。→まらする
( 2 )「まゐらせさせ給ふ」「まゐらせさせおはします」などのように「まゐらす」に尊敬の助動詞「さす」の付いたものがマイラッサスと変化し、この促音が表記されないでマイラサスの形になっているものがある。「讚岐典侍日記‐上」の「苦しうせさせ給へば申しつるぞ。その足とらへ参らさせ給へ」など。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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