改訂新版 世界大百科事典 「参詣記参宮記」の意味・わかりやすい解説
参詣記・参宮記 (さんけいきさんぐうき)
社寺へ参り詣でたときの記録。参詣は社寺に参り詣でること,参宮は宮に参ることであるが,ことに参宮の語は中世以降伊勢の神宮に参る場合に限って用いられている。社寺の由緒,沿革より,社殿・伽藍の説明,途中の紀行を記したものもあり,宗教史上,歴史上,文芸上すぐれたものがある。古いものとして,《東大寺衆徒参詣伊勢大神宮記》《熊野御幸(くまのごこう)記》などがあるが,伊勢参宮に関するものが中世,近世を通じて多い。《東大寺衆徒参詣伊勢大神宮記》は,1186年(文治2)4月俊乗坊重源が東大寺建立祈願のため,同寺の僧綱以下衆徒を率いて参宮,大般若経を転読供養した次第を,一行中の慶俊の記した書。《熊野御幸記》は藤原定家の《明月記》の一部で,1201年(建仁1)後鳥羽上皇の熊野御幸のときの記録で,別に途中の藤代王子,滝王子での和歌会の詠草をつけている。また有名なものに1286年(弘安9)伊勢豊受大神宮上棟拝観のため参詣した通海が,皇大神宮に詣で,神域で僧と布衣の俗人との問答を聞書したとの形式の《太神宮参詣記》(《通海参詣記》)があり,さらに1301年(正安3)撰の《他阿上人参詣記》,1342年(興国3・康永1)坂十仏の《伊勢太神宮参詣記》等があり,また一方に西国三十三ヵ所巡拝,四国八十八ヵ所巡礼というように多くのものがみられる。
執筆者:鎌田 純一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報