布衣(読み)ほい

精選版 日本国語大辞典「布衣」の解説

ほ‐い【布衣】

〘名〙
庶民着用の製の衣服ふい。また、それを着ている者。その身分。また、朝服に対して、常着。平服ほうい
※続日本紀‐宝亀三年(772)四月丁巳「其弟浄人、自布衣、八年中至従二位大納言
※宇津保(970‐999頃)祭の使「元則しばしほいになりて、その装束この学生にとらせよ」
② 布製の狩衣。転じて一般に、狩衣の異称。ほうい。
※九暦‐九条殿記・五月節・天慶七年(944)五月五日「此間吉野国栖三人奏風俗〈〈略〉二人布衣烏帽其礼甚専輙也〉」
③ 江戸時代、大紋につぐ武家の礼服。絹地無文で裏のない狩衣。また、それを着用した、御目見得以上の者。また、その身分。
随筆・折たく柴の記(1716頃)中「六月十一日に布衣の侍に召加らる」

ふ‐い【布衣】

〘名〙
① 庶人の服。昔、中国で、庶人は老人以外はすべて、麻または葛(くず)の繊維で織った布の服を着たという。転じて、官位のない人。庶人。匹夫(ひっぷ)。ふえ。
※仮名草子・浮世物語(1665頃)三「布衣(フイ)より天下取り給ふ程の大功を遂げ給ひき」 〔呂氏春秋‐孝行覧・首時〕

ほう‐い【布衣】

〘名〙
① =ほい(布衣)①〔伊呂波字類抄(鎌倉)〕
※今鏡(1170)四「の宮には、冠にてこそ 常は人々候ふを、これはほういになされてなむ侍し」

ぬの‐きぬ【布衣】

〘名〙 (「ぬのぎぬ」とも) 布で作った衣服。
※万葉(8C後)五・九〇一「あらたへの布衣(ぬのきぬ)をだに着せかてにかくや嘆かむせむすべをなみ」

ぬの‐ごろも【布衣】

〘名〙 布で作った衣類。ぬのきぬ。
※後拾遺(1086)春上・一二四・詞書「布ごろもきたる小ほふしして、誰ともしらせでとらせ侍りける」

ふ‐え【布衣】

〘名〙 =ふい(布衣)〔いろは字(1559)〕

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デジタル大辞泉「布衣」の解説

ほ‐い【布衣】

庶民着用の衣服。また、官服に対して、平服。転じて、平民のこと。
流石さすが淮西わいせいの一—より起って」〈露伴運命
狩衣かりぎぬのこと。初め布製、平安時代以後は狩衣一般、特に無文の狩衣をさした。また、それを着る六位以下の身分の者。
江戸時代、武士大紋に次ぐ4番目の礼服。また、それを着る御目見おめみえ以上の身分の者。

ぬの‐きぬ【布衣】

《「ぬのぎぬ」とも》植物繊維で織った布で作った衣服。
「荒たへの—をだに着せかてにかくや嘆かむせむすべをなみ」〈・九〇一〉

ふ‐い【布衣】

《昔、中国で、庶民はの衣を着たところから》官位のない人。庶民。→ほい(布衣)

ほう‐い【布衣】

ほい(布衣)」に同じ。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「布衣」の解説

布衣
ほうい

狩衣 (かりぎぬ) の別称。ほいともいう。狩衣は元来,麻の布でつくられたから布衣と称したが,次第に綾,織物でも仕立てられるようになっても,旧称のまますべて布衣といわれるようになった。特に江戸時代では,五位以上の者が着用する有文 (文様のある) を狩衣,六位以下 (地下) の者,また江戸では御目見以上の者の無文を布衣といった。

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百科事典マイペディア「布衣」の解説

布衣【ほい】

〈ほうい〉とも読む。狩衣(かりぎぬ)の別称。江戸時代には有文のものを狩衣と称したのに対し,6位以下の者が着用する無文の狩衣を布衣と呼び,転じて6位の者の異称ともされた。

布衣【ほうい】

布衣(ほい)

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世界大百科事典 第2版「布衣」の解説

ほうい【布衣】

〈ほい〉ともいう。公家では狩衣(かりぎぬ)の別称で,たとえば上皇が禅位後はじめて狩衣を着る儀式布衣始(ほういはじめ)という。布衣という称呼は,狩衣が正式の服ではなく,身分の低いものの服装から生まれた野外用の略装であったからであろう。もともと〈布衣〉は古い語で,庶民の着る麻などの服を意味し,さらに無官の人を指すこともある。〈布衣〉より起こって天下を統一した人物として漢の高祖,明の洪武帝がよくあげられる。

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世界大百科事典内の布衣の言及

【布衣】より

…〈ほい〉ともいう。公家では狩衣(かりぎぬ)の別称で,たとえば上皇が禅位後はじめて狩衣を着る儀式を布衣始(ほういはじめ)という。布衣という称呼は,狩衣が正式の服ではなく,身分の低いものの服装から生まれた野外用の略装であったからであろう。…

【布衣】より

…〈ほい〉ともいう。公家では狩衣(かりぎぬ)の別称で,たとえば上皇が禅位後はじめて狩衣を着る儀式を布衣始(ほういはじめ)という。布衣という称呼は,狩衣が正式の服ではなく,身分の低いものの服装から生まれた野外用の略装であったからであろう。…

【狩衣】より

…その下にはく裾くくりの袴もともに上質でゆるやかなものとなり,ここに猟衣でありながら平生衣にも用いられる衣が成立し,その時期は,10世紀ころからではないかと推定される。したがって狩衣は,のちのちまで本来布製の粗服であったなごりをとどめ,布衣(ほうい)という別称をもっていた。 こうして狩衣は初め常服としての性格がつよく,公家では若公達や,遠方の旅行などに用いられる程度で軽装であったが,平安時代末から鎌倉時代になると,地質・文様もますます華麗となり,一方には新興武士階級がこれを正装としたため,ますますその位置を高めることとなった。…

※「布衣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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