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19世紀末自由競争に立つ資本主義経済のなかから一産業部門を独占する大企業や,銀行と癒着していくつもの部門に広がる大企業が形成された。シンディケート,トラスト,コンツェルンと呼ばれるこれらの独占的大企業と企業集団が独占資本と呼ばれて,新段階の資本主義経済を代表するものとみなされた。独占資本は国家・政府に強い影響力を持ち,対外的な活動を積極的に行う,帝国主義時代の隠れた主役であった。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
生産と資本を集積・集中することによって市場支配力をもつに至った大資本。ドイツやアメリカでは,1870年代から20世紀初めにかけ,重工業を舞台に独占資本の展開をみたが,日本ではこれと異なり,綿紡績業が先頭となった。有力紡績会社は,日清戦後恐慌を契機に多くの会社を合併・買収して大規模化することで商社との関係を有利化し,不況時の国内向け生産の抑制と輸出ダンピングという大日本紡績連合会のカルテル活動を主導し,1918年(大正7)には鐘淵・東洋・大日本の3社が綿糸生産の51%を占めるに至った。なお,独占資本は本来重工業において形成されるものだとの観点から,日本における形成期を第1次大戦以後に求める説も有力である。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…帝国主義段階あるいは独占資本主義段階とも呼ばれる19世紀末以降の後期資本主義を特徴づける,支配的な資本の存在形態をさす言葉。オーストリアのマルクス主義者R.ヒルファディングの《金融資本論》(1910)以来,経済学上の重要な概念になっている。…
…【岩崎 晃】
【マルクス経済学からみた独占】
他の多数の資本とはかけ離れた大規模な資本(企業または企業グループ)が,単独または少数で,関連する分野の生産,流通,金融などに支配的影響力を及ぼす状態をいう。また,その状態にある資本(独占資本)そのものを指すこともある。〈自由競争〉という言葉と対比的に用いられるが,資本主義的な私企業間の競争のあり方が変わるということであって,一般に競争がなくなるわけではない。…
…近代経済学者としての彼の名を高めた論文《寡占状態における需要》(1939)において寡占価格の硬直性を説明した屈折需要曲線の理論を提示して寡占企業の行動の分析に一石を投じたが,彼の関心は,ミクロ的な静態論からマクロ的な動態分析へと進み,ケインズ経済学の内在的批判を通じてマルクス経済学に傾いていった。《資本主義発展の理論》(1942)およびP.A.バランとの共著《独占資本》(1966)がその成果であり,実証的で教条にとらわれない姿勢が示されている。【中村 達也】。…
※「独占資本」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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