反陽子1個と陽電子1個からできている水素の反物質.と表される.P.A.M. Diracの相対論的量子論で1930年代から存在が予言されていたが,1995年にはじめて,CERN(欧州合同原子核研究機関)で9原子の
がつくられた.プロトンシンクロトロンでつくられた反陽子は高いエネルギーをもっているので,陽電子と安定な原子状態をつくらないため,LEAR(Low Energy Antiproton Ring)を使ってS.van der Meer(1984年ノーベル物理学賞を受賞)が考案した確率冷却法によって冷却して,はじめて反水素原子状態が得られた.陽電子は,反陽子ビームとキセノンの気流をLEAR中で衝突させてつくられた.このときの
はまだ高温であったため,寿命は2.5 ps(ピコ秒)程度であったとされる.その後,冷却技術が進み,2002年にはCERNで,大部分が日本の資金でまかなわれた反陽子減速装置AD(Antiproton Decelerator)からの反陽子を,金属はくの通過と低温電子とのクーロン相互作用でさらに冷却し,22Na 陽電子源からの低温陽電子とともに電磁トラップ中に閉じこめて,約50000原子の
がつくられている.検出は
のトラップの電極との衝突による反陽子消滅の際に発生するπ中間子のシリコン飛跡検出器による検出と,陽電子消滅の際の消滅γ線のCsIγ線検出器による同時計測による.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報