反響定位(読み)ハンキョウテイイ(英語表記)echolocation

翻訳|echolocation

デジタル大辞泉 「反響定位」の意味・読み・例文・類語

はんきょう‐ていい〔ハンキヤウテイヰ〕【反響定位】

エコーロケーション

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改訂新版 世界大百科事典 「反響定位」の意味・わかりやすい解説

反響定位 (はんきょうていい)
echolocation

エコロケーションともいう。動物が自分で音を出し,その音の反響によって定位を行うことをいう。ソナーレーダーと同じ原理である。最も著明なのはコウモリ(小翼手類)の超音波によるもので,この現象は1937年アメリカのD.R.グリフィンによって発見・証明された。コウモリの出す超音波定位音は大まかにFM(frequency modulation,周波数変調)型とCF(constant frequency,純音)型とに大別される。コウモリは発達した聴覚によって,出した音と,その音が障害物に衝突して生じたエコースペクトルとから,物体の性質・方向・距離・速度などの情報を読みとって定位を行っている。コウモリの声帯から発声される超音波の大半は30~100kHz程度のものである。空間における障害物の検出や,とくに食虫性コウモリで典型的にみられる敏しょうな狩りでの音響定位のようすは次のようなものである。(1)探索期cruising phase ゆるやかに飛びながら障害物や獲物を探索している時期。パルス(短い音)はゆるやかに規則的に出されている。(2)標定期approaching phase 獲物や物体を発見し,追跡接近を始める時期。パルスの発射頻度が急速に高まる。(3)終期terminal phase 獲物の最終追跡にかかる,あるいは障害物に最も接近する時期。パルスの反復率は最高になり,1秒間に200に達する場合もある。狩りを終え,あるいは障害物をよけてしまうと,ゆるやかな探索期のピッチにもどる。

 反響定位を行う他の動物としてはルーセットオオコウモリ,中南米産の鳥アブラヨタカ,東南アジア産のイワツバメ,食虫類の数種,イルカなどがある。前3者はいずれも洞穴に生息していてやみ夜や洞穴の中でのみ反響定位を行うことが知られている。彼らの出す音声は低い周波数なのでヒトの耳で聞くことができる。このように音響定位は光の乏しい環境に生活する動物の特殊に発達した生活様式である。この現象の各動物における起源や発達経過についてはまだよくわかっていない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「反響定位」の意味・わかりやすい解説

反響定位
はんきょうていい
echolocation

物体に音波を当て、反響によってその物体の位置を知ること。エコロケーションともいう。反響定位に用いられる音の波長が短いほど、つまり周波数が高いほど、小さい物体を検出することができる。また、近い物体からの反響は短時間内に返ってくるため、反響定位に用いられる音は持続時間が短い必要がある。コウモリは、2万ヘルツから10万ヘルツの超音波からなる数ミリ秒の短い叫び声を発し、その反響によって、直径0.3ミリメートル以下の針金を避けて飛んだり、カ(蚊)のような小さい昆虫をとらえたりする。イルカは17万ヘルツに達する高い周波数の超音波を用いて完全な暗黒中でも魚をとらえることができる。反響定位はアブラヨタカのような鳥にも知られている。

[村上 彰]

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