改訂新版 世界大百科事典 「木材貿易」の意味・わかりやすい解説
木材貿易 (もくざいぼうえき)
1995年の日本の木材需要(供給)量は1億1193万m3(薪炭材,シイタケ原木を除く)で,内訳は製材用5038万m3,パルプ・チップ用4493万m3,合板用1431万m3,その他である。このうち外材は8900万m3を占め,外材依存率は80%,輸入金額も1兆円を超え,石油,液化天然ガス,石炭などに次ぐ大きな輸入品目となっている。1955年にはわずか5.5%にすぎなかった外材依存率は70年に55%に達し,現在に至っている。こうした木材輸入の急増は,高度経済成長に伴う木材需要量の増加に対して日本の林業の木材供給力が追いつかず,価格的にも天然林の伐採による安価な外材と太刀打ちできなかったことによる。しかしながら石油危機(1973)以後,日本の木材需要も停滞に転じ,また世界的に森林保護と木材資源の不足が叫ばれるようになって,世界一の木材輸入国日本にも変化が現れている。木材輸出国の輸出規制強化と,とくに発展途上国で国内産業の保護育成のため丸太輸出を制限し,製材品,合板などの加工品輸出に努めるようにしているためである。丸太輸入の減少,製材品,チップ,合板の輸入増が近年の特徴である。輸入木材は地域別に米材,南洋材,ロシア材に大別され,その輸入割合はほぼ9対5対3であり,傾向としては南洋材の減少,米材,ロシア材の増加が目だつ。
南洋材
南洋材の供給国はインドネシア,フィリピン,マレーシア,パプア・ニューギニアなどで,近年ではインドネシアとマレーシアがとくに多く,この両国で輸入南洋材の80%強を占める。かつて輸入木材の首位にあったフィリピンは70年をピークとして大幅な減少に転じた。南洋材はラワンなどフタバガキ科の広葉樹がほとんどを占める。南洋材産地国では,自国における木材産業の発展を図るため,丸太輸出の制限を強めており,代りに製材,合板などの製品輸出を進めている。また自国森林資源の保護,有効利用を図り,有利な交易を行う必要からSEALPA(東南アジア木材生産者連合。1975設立。インドネシア,フィリピン,マレーシア,パプア・ニューギニアの木材生産者により構成)が結成された。インドネシアでは木材産業の振興を図るため丸太輸出を規制し,合板などの製品の国内生産,輸出の増大に力を入れている。またインドネシア人による国の経済的自立化策も進められており,外国資本に対する制限が厳しさを増している。マレーシアでは1977年から丸太輸出を規制する一方,木材産業の振興と製品輸出の拡大を図っている。フィリピンでは丸太の全面的輸出禁止の方向を打ち出している(輸出制限は1977年から)。パプア・ニューギニアでは丸太輸出を進めて外貨収入の増大を図り,外国資本も導入して木材工業を発展させる方策をとっている。
米材
米材はアメリカ,カナダ産の木材であって,樹種は大部分がベイツガ,ベイマツなどの針葉樹である。アメリカの対日輸出地域は,約70%を占めるワシントン州のほか,オレゴン州,アラスカ州,カリフォルニア州である。以上の各州のうちワシントン州有林以外の州有林,連邦有林は丸太の輸出が原則的に禁止されているため,アメリカからの丸太輸入は私有林材,ワシントン州有林材がほとんどを占める。最近,国内産業の保護と雇用の確保を図る観点から,丸太輸出の制限と製品輸出の拡大を求める声が強くなっている。カナダの対日輸出地域はブリティッシュ・コロンビア州である。ここでは1906年から丸太輸出を原則的に禁止している。パルプ用材を除き,輸出丸太には輸出税を課している。カナダからの製材輸入量は増加傾向にある。
ロシア材
対日木材輸出地域は主としてサハリン州,プリモルスキー地方,アムール州,ハバロフスク地方,カムチャツカ州などで,樹種はアカマツ,エゾマツ,トドマツなどマツ科の針葉樹が多い。
木材チップ輸入
輸入先はアメリカ,オーストラリアが大半である。アメリカは針葉樹チップ,オーストラリアは広葉樹チップで,オーストラリア産の輸入が増える傾向にある。アメリカからはワシントン州,オレゴン州の製材工場や,合板工場で生産される木材チップが輸入されるので,現地の製材,合板需要,紙・パルプ産業の景気動向に影響されやすい。
→外材 →木材工業 →林業
執筆者:筒井 迪夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報