向ける(読み)ムケル

デジタル大辞泉 「向ける」の意味・読み・例文・類語

む・ける【向ける】

[動カ下一][文]む・く[カ下二]
その方向正面が位置するようにする。ある方向を向かせる。「視線を―・ける」「背を―・ける」「マイクを―・ける」「怒りを他人に―・ける」
その方向をめざす。「現地へ―・けて出発する」「母校に足を―・ける」
ある目的用途にそれをあてる。ふりあてる。ふりむける。「寄付金人件費に―・ける」
使いとして行かせる。さしむける。「使者を―・ける」
たむける。ささげる。
ぬさ取り―・けてはや帰りね」〈・六二〉
従わせる。服従させる。
韓国からくにを―・けたひらげて」〈・八一三〉
[類語]向かう向く向き合う向かい合う対するあい対する正対せいたいする面する臨む直面する対峙たいじする送る

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「向ける」の意味・読み・例文・類語

む・ける【向】

  1. 〘 他動詞 カ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]む・く 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙
  2. 物をまわして、ある方向をさすように向きを変える。その方向へ正面が位置をとるようにさせる。
    1. [初出の実例]「夕潮に 舟を浮けすゑ 朝なぎに 舳(へ)牟気(ムケ)漕がむと」(出典万葉集(8C後)二〇・四三九八)
    2. 「女、こなたのかたにうしろむけて、持たる物を折」(出典:落窪物語(10C後)一)
  3. 服従させる。討ち平らげる。→向け平(たいら)ぐ
    1. [初出の実例]「如し吾在(あ)らさらましかは、汝(いまし)何そ能く此の国を平(むケ)む」(出典:日本書紀(720)神代上(丹鶴本訓))
  4. 神、霊などに供えものをささげて祈る。たむける。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
    1. [初出の実例]「マウジャニ ミヅヲ muquru(ムクル)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  5. その方角をめあてにする。目的地として、その方角を位置づける。目ざす。
    1. [初出の実例]「王子朝をせめたほどに楚へむけてにげていなれたぞ」(出典:寛永刊本蒙求抄(1529頃)二)
    2. 「岡田は〈略〉足を二三歩その方へ向(ム)けた」(出典:雁(1911‐13)〈森鴎外〉一九)
  6. ある対象・目的・用途にそれをあてる。ふりむける。ふりあてる。充当させる。
    1. [初出の実例]「をるを、他人に、むけては、をれ也」(出典:名語記(1275)三)
    2. 「詞は三代集の中にてたづぬべくとも教へ、深く入りたる人にむけては、又かはる事多し」(出典:為兼和歌抄(1285‐87頃))
  7. ある所へ行かせる。やる。さしつかわす。さしむける。
    1. [初出の実例]「親久を召て、内裏には兵を此方へむけられ候ふべきか」(出典:金刀比羅本保元(1220頃か)中)

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