呼吸器のしくみとはたらき(読み)こきゅうきのしくみとはたらき

家庭医学館 の解説

こきゅうきのしくみとはたらき【呼吸器のしくみとはたらき】

◎呼吸とは
◎呼吸器のしくみ
◎呼吸器のはたらき
◎おもな呼吸器疾患の症状
◎呼吸器の病気の検査法

◎呼吸とは
 呼吸とは、からだに必要な酸素を取り入れ、不要な二酸化炭素(炭酸ガス)を放出するはたらきのことです。
 私たちの体内では、たえず複雑な化学反応(代謝(たいしゃ))がおこっています。そのなかには、(食事中の)熱源になる物質と酸素を結びつけ、エネルギーを発生させて、生命活動のエネルギー源にするという代謝活動があります。この代謝活動には多くの酸素が必要で、外から取り入れる必要があります。そして、この燃焼ともいえる代謝の結果、多量の二酸化炭素が発生するので、不要な二酸化炭素はからだの外に放出しなければなりません。
 呼吸にかかわる臓器を呼吸器(こきゅうき)といいます。そのなかで、もっとも重要なはたらきをしているのは肺(はい)です。そのため呼吸器と肺とが同じような意味で用いられることが多く、そのため、呼吸器疾患(こきゅうきしっかん)ということばが肺疾患(はいしっかん)ということばと同様の意味で使われています。

◎呼吸器のしくみ
 肺は左右に2つあって、右肺は、上葉(じょうよう)、中葉(ちゅうよう)、下葉(かよう)に分かれ、左肺は、上葉と下葉に分かれています(図「呼吸器のしくみ」)。
 右肺のほうが左肺より少し重いのですが、体重60kg程度のおとなでは、片方だけで350から400gほどの重さがあります。
 肺は、空気の取り入れと放出をおもな役目としている気道(きどう)と、酸素を血液中に取り入れて血液中の二酸化炭素を排出するガス交換(こうかん)をおもな役目とする肺胞(はいほう)とに分けることができます。
 気道の大部分と肺胞の全部は、肋骨(ろっこつ)、脊椎(せきつい)、肋間筋(ろっかんきん)、横隔膜(おうかくまく)に囲まれてできた、胸郭(きょうかく)と呼ぶカゴのようなものの中に収められています。そして、胸郭が収縮・拡張運動をくり返すことによって、肺の中に空気が取り入れられたり、押し出されたりするポンプのようなはたらきがなされます。
●気道(きどう)
 気道とは、空気中の酸素を肺胞に導き入れ、肺胞内の二酸化炭素を外界へ排出する導管のことです。
 気道は、口や鼻孔(びこう)から順に、口腔(こうくう)→鼻腔(びくう)・副鼻腔(ふくびくう)→咽頭(いんとう)→喉頭(こうとう)→気管(きかん)→気管支(きかんし)→細気管支(さいきかんし)という経路になっていますが、鼻腔・副鼻腔から喉頭までを上気道(じょうきどう)、気管から細気管支までを下気道(かきどう)と呼びます。
 気管支は、2本、2本としだいに分かれていき、平均すると16回の枝分かれをしたのち、細い終末気管支となります。終末細気管支には、ガス交換の機能がありませんので、非呼吸細気管支と呼ばれます(図「気管支と肺胞(枝分かれする気管支)」図「気管支と肺胞(細気管支と肺胞)」)。
●呼吸細気管支(こきゅうさいきかんし)
 終末細気管支と肺胞の間に呼吸細気管支があります。呼吸細気管支の周囲には、少数ですが、肺胞が付着しており、ガス交換が行なわれています。
●肺胞(はいほう)
 肺胞は、肺にきている動静脈(どうじょうみゃく)の毛細血管(もうさいけっかん)に付着している小さな泡のような組織です(図「肺胞の構造」)。成人では約3億個の肺胞があり、ガス交換を行なっています。
 肺胞の薄い壁は、つぎのようなはたらきのちがういくつかの細胞からできています。
 肺胞上皮細胞(はいほうじょうひさいぼう) Ⅰ型とⅡ型があります。Ⅰ型肺胞上皮細胞は肺胞壁の96%を占める細胞で、ガス交換を行なっています。Ⅱ型肺胞上皮細胞は肺胞壁の5%を占める立方形の細胞で、肺胞の表面を滑らかにし、肺胞がつぶれずに空気の出入りができるようにする物質(肺胞表面活性物質(はいほうひょうめんかっせいぶっしつ))の産生と分泌(ぶんぴつ)を行なっています。また、この細胞はⅠ型肺胞上皮細胞に変化します。
 肺胞(はいほう)マクロファージ 肺胞の壁を移動しながら、肺胞内に侵入した異物をのみこんで処理したり(貪食(どんしょく))、殺菌したりする大型の細胞です。
●肺間質(はいかんしつ)
 呼吸という肺のはたらきには直接には関与しない組織を肺の間質と呼びます。正確にいうと、肺胞上皮細胞下の基底膜(きていまく)と、毛細血管内皮細胞とを境とするまばらな結合組織からなる部分で、肺胞と毛細血管を結合させている組織です。
 肺胞の中に炎症がおこった場合を肺炎(はいえん)といい、肺間質に炎症がおこった場合は間質性肺炎(かんしつせいはいえん)と呼びます。
●肺の血管
 からだ全体の組織に栄養や酸素などを運び(動脈)、老廃物や二酸化炭素などを回収する(静脈)血液の循環・流れを大循環系(だいじゅんかんけい)といいますが、これとは別に、ガス交換のために肺と心臓との間にある血液の循環・流れを小循環系(しょうじゅんかんけい)と呼んでいます。そのため、肺の血管には、肺血管系(小循環系)と気管支血管系(大循環系)の2つがあります。
 肺血管系(はいけっかんけい) 肺のもっとも重要なはたらきであるガス交換を担当している血管です。(心臓の右心室(うしんしつ))→肺動脈→肺毛細血管→肺静脈→(心臓の左心房(さしんぼう))の経路で流れています。
 酸素が少なく二酸化炭素の多い静脈血の流れる肺動脈(ふつうの動脈とは機能が反対であることに注意)は、右心室から出て、気道系と平行して走り、毛細血管となる部分でガス交換(二酸化炭素の放出と酸素の取り入れ)を行ない、酸素が多く二酸化炭素の少ない動脈血となって肺静脈に入ります(ふつうの静脈とは反対であることに注意)。
 肺静脈は気道系とは関係なく走っており、左心房にもどります(図「肺胞をとりまく毛細血管」)。
 気管支血管系(きかんしけっかんけい) 呼吸器の各臓器への酸素と栄養の供給、二酸化炭素と老廃物の回収を受け持っている血管です。
 気管支動脈は、胸部大動脈から分かれ、食道(しょくどう)、縦隔(じゅうかく)、肺門(はいもん)の部分にあるリンパ節などに小枝をだしながら、肺門部にいたり、主気管支に沿って肺内に入り、毛細血管になります。呼吸細気管支までの気管支壁と肺動静脈、リンパ節、神経などの機能維持に関与しています。
●肺のリンパ系
 リンパ液の流れるリンパ系は、体液量のバランスを保つはたらきを担っています。肺胞にはリンパ管はありませんが、肺の毛細血管からもれ出てきた組織液(体液)は、間質の間を流れてリンパ管に流れ込みます。そして、リンパ節、またリンパ管を経て、最終的には静脈に入る経路をとっています。
●胸膜(きょうまく)
 胸郭の大部分は、皮膚(ひふ)、肋骨(ろっこつ)、肋間筋(ろっかんきん)、内側をおおう胸膜からなる胸壁(きょうへき)です。胸膜は、外側の胸膜(壁側(へきそく)胸膜)と内側の胸膜(肺側(はいそく)胸膜)とで成りたっています。健康な人でも、壁側胸膜で胸水(きょうすい)がつくられ、肺側胸膜から吸収されていて、胸腔内(きょうくうない)には、常に10~20mℓの胸水が存在します。

◎呼吸器のはたらき
 呼吸器には、①呼吸=酸素と二酸化炭素の交換をする、②防御=からだを外界から守る、③代謝=必要な物質をつくる、の3つのはたらきがあります。
●呼吸機能
 呼吸をすると空気は気道(呼吸細気管支)から肺胞に入り、肺胞壁で空気中の酸素と二酸化炭素の交換が行なわれます。肺胞の周りには、毛細血管がはりめぐらされていて、二酸化炭素を多く含んだ静脈血を、酸素を取り込んだ動脈血に変えるのです。酸素が気体から液体に移り(拡散(かくさん))、取り込まれた酸素は肺血管系によって心臓に到達して、全身に送り出されます。二酸化炭素の排出は、これと逆の過程で行なわれます。脳の呼吸中枢(こきゅうちゅうすう)と呼ばれる部分が、神経・内分泌系を通じてこのような過程をコントロールしています。
●防御作用
 肺には、1日に1万ℓもの空気が出入りしています。したがって、肺は吸入される空気とともに運び込まれるさまざまの異物(いぶつ)にさらされます。これらの異物は、有害なものから比較的無害なものまで、さまざまです。
 また、吸入した空気に含まれる異物に加えて、口の中(口腔(こうくう))や咽頭(いんとう)で分泌されたものが、気管・気管支にまで吸引されることもあります。
 異物は、小粒子(しょうりゅうし)、有害ガス、微生物の3つに分類できます。とくに口腔や咽頭には細菌類が常在していますから、肺に吸引された分泌物が思わぬ細菌の侵入源となることもあります。
 また、肺の毛細血管には、肺血管系(小循環系)を通じて、微生物を含む各種の物質、抗原(こうげん)、抗体(こうたい)、免疫複合体(めんえきふくごうたい)などが侵入してくる可能性もあります。
 このように、肺は、外因性、あるいは内因性物質によってさまざまな障害が頻繁(ひんぱん)におこっても不思議がないようにみえます。ところが実際には、種々のしくみによって、外来の異物の排除が行なわれたり、異物と生体の反応がコントロールされたりして、肺は守られているのです。
 肺の防御作用には、免疫反応の関係しない防御作用(浄化作用)と、免疫反応の関係する防御作用があります。
 浄化作用のあらまし表「肺の浄化機構」に示しましたが、鼻腔から肺胞にいたる肺のあらゆるところで行なわれています。
 免疫反応とは、以前に体内に侵入したことがある異物(抗原)に抗体ができており、再び同じ異物(抗原)が入ると抗原抗体反応がおこり、抗原である異物を処理してしまう作用ですが、肺のあらゆるところでみられるはたらきです。
 このように、肺の防御作用には大きく2種類ありますが、より大きなはたらきをしているのは浄化作用です。
●代謝作用(たいしゃさよう)
 肺では、肺のはたらきを維持するエネルギーをつくるのに必要な代謝だけでなく、肺表面活性物質の産生、さまざまな血管に作用する物質の産生や代謝、また、いろいろな臓器の調節にかかわっているプロスタグランジンの産生や代謝なども行なわれています。

◎おもな呼吸器疾患の症状
 呼吸器の病気では、せき、たん、血(けっ)たん、喀血(かっけつ)、呼吸困難、胸痛などの症状がみられます。
●せき(咳)
 気道の中に侵入してきた異物を排除するための反射的な反応で、呼吸器が外来性の異物に侵入されることを防いでいる重要なからだのしくみです。
 せきには、たんをともなっている場合(湿性咳(しっせいがい))と、たんをともなってはいない場合(乾性咳(かんせいがい)あるいはからせき)があります。病気の種類によって、乾性になったり、湿性になったりします。
●たん(痰)
 気道の分泌物に、細かなちりや、ほこり、細菌、気道からはがれた細胞などが加わった混合物です。
 健康な人では、たんに気づくことは、あまりなく、たんに気づくのは気道の分泌物過多、気道の閉塞(へいそく)など、たんを出すしくみがうまくいかない場合です。
 喫煙者では、軽い気道の炎症がたえずおこっているので、たんがみられることが少なくありません。細菌やウイルスなどによる気道の感染がおこると、たんが増加します。また、肺の中でアレルギー反応がおこった場合には、水様のたんがみられます。
●血(けっ)たん・喀血(かっけつ)
 喀血は、せきとともに血液が吐き出されるものです。血たんは、たんに血がまじっているものです。吐き出される血液量にちがいはあっても、血たんも喀血も、おこるしくみは同じです。
 原因の多くは、炎症、腫瘍(しゅよう)(がん)などによって肺の血管が破れた場合です。また、血小板(けっしょうばん)の減少など、血液の凝固(ぎょうこ)のしくみに障害がおこった場合にみられることもあります。
 しかし、血たんを訴える患者さんは、たいていは原因不明の一過性か、鼻腔・咽頭からの小出血のことが多く、重大な病気の症状であることはあまり多くありません。
●呼吸困難(息苦しさ)
 呼吸困難とは、呼吸(換気運動)のたびに努力を必要とする感覚をさしています。したがって、意識障害があると、肺の換気障害があっても呼吸困難を訴えません。高齢者にときにみられることがあるので、注意が必要です。
 また、過激な運動の場合、息苦しさを感じるのは当然ですが、軽い運動でも息苦しさを感じるときに、病気か病気でないのかの区別はむずかしいもので、それだけに注意が必要です。
●胸痛(きょうつう)
 胸郭を形成している骨、筋肉、皮膚などには知覚神経があるので、病変部と痛いところが一致します。胸膜のうち、肺側胸膜には知覚神経がありませんので、病変があっても痛みを感じません。しかし、壁側胸膜には知覚神経があるので、病変がおこれば、胸痛を感じることになります。

◎呼吸器の病気の検査法
●喀(かく)たん検査(けんさ)
 健康な人でも、朝、目がさめたとき、のどに少したんがあるのがふつうです。このたんで、細菌、結核菌(けっかくきん)などの抗酸菌(こうさんきん)、真菌(しんきん)(かびの一種)の検査ができます。
 胸部X線写真で肺がんが疑われる、血(けっ)たんが続く、たばこを吸う人が肺がん検診を受けるなどのときに、3日間のたんを特別な容器にためて細胞診をするサコマノ蓄たん法があります。
●胸部X線写真
 肺や気管支の病気を調べる場合に単純写真を撮ります。撮影の方向には、正面、側面のほか、胸水(きょうすい)などをみる場合の側臥位(そくがい)があります。発見された陰影を詳しく調べるには、1cmまたは0.5cmずつ垂直方向に焦点の深さを変えて数枚撮影する断層撮影もあります。
●胸部CT(コンピュータ断層撮影)
 異常な陰影をさらに詳しく調べるため、コンピュータで画像処理した断層写真です。胸部を水平方向に一定の間隔で撮影し、垂直方向の輪切り像を得ます。単純撮影と、血管とそれ以外の組織とを区別する造影法があります。
●気管支鏡検査(きかんしきょうけんさ)
 気管支鏡は、胃カメラと同じ構造をもつ内視鏡(ないしきょう)の一種です。直径は約5mmで胃カメラより細いのですが、そのままではせきが出てつらいので、検査前にせき止めを飲んだり、筋肉をゆるめ唾液(だえき)の分泌(ぶんぴつ)を抑える注射をし、直前には麻酔薬をのどに噴霧します。気管支鏡検査には、目的に応じて、いろいろな項目があります。
①気管支内腔(きかんしないくう)の観察、直視下生検(ちょくしかせいけん)
 気管支内を観察したり、観察しながら耳かきの先くらいの検査用の組織をとる。
②穿刺吸引細胞診(せんしきゅういんさいぼうしん)
 気管支の外側に接したリンパ節や腫瘤(しゅりゅう)に針を刺して細胞を吸引する。
③ブラシ細胞診
 内視鏡で観察しながら、またはX線テレビで画像を見ながら、ブラシで細胞をこすりとる。
④透視下腫瘤生検(とうしかしゅりゅうせいけん)
 末梢肺(まっしょうはい)の腫瘤細胞をとって検査する。
⑤経気管支肺生検(けいきかんしはいせいけん)(TBLB)
 各種のびまん性肺疾患での末梢肺組織をとって検査する。
⑥気管支肺胞洗浄(きかんしはいほうせんじょう)(BAL)
 気管支や肺胞の洗浄液から細胞などをとる。
 以上の気管支鏡検査に必要な時間は、10分~1時間ぐらいです。外来でできますが、2、3日入院が必要な場合もあります。
●経皮吸引針生検(けいひきゅういんはりせいけん)
 気管支鏡検査で検査用の組織がとれない場合、胸壁(きょうへき)から、超音波やCTによる映像を見ながら針を刺して組織などをとる方法です。
●開胸肺生検(かいきょうはいせいけん)
 びまん性肺疾患の際、肋骨(ろっこつ)の間を小切開(しょうせっかい)し、肺組織を径1~3cmとって検査する方法です。
●胸腔鏡下肺生検(きょうくうきょうかはいせいけん)
 肺とその外側の胸郭(きょうかく)の間に胸腔鏡を入れ、肺組織をとる方法で、負担の少ない新生検法です。
●胸水検査(きょうすいけんさ)、胸膜生検(きょうまくせいけん)
 肺とその外側の胸郭の間にあるすき間(胸膜腔(きょうまくくう))にある胸水を、針やチューブで吸引し、その性質や含まれる細胞を検査するのが胸水検査です。胸膜(壁側胸膜(へきそくきょうまく))をこすりとって検査するのが胸膜生検で、胸膜の病変を疑うときに行ないます。
●超音波検査
 エコー検査ともいいます。たまっている胸水の量や部位などを確認するために行ないます。
●呼吸機能検査
 一般に肺機能検査ともいい、いろいろな項目があります。一気に息をはき出す力をみる一秒率や肺活量(はいかつりょう)がよく知られており、これらはフローボリューム曲線で表わされ、曲線の形が病気の識別に役立ちます。その他、閉塞性肺疾患(へいそくせいはいしっかん)の診断に役立つ残気量(ざんきりょう)、気道(きどう)の末梢病変の診断に役立つクロージングボリューム、肺気腫(はいきしゅ)や間質性肺炎(かんしつせいはいえん)の診断に役立つ肺拡散能(はいかくさんのう)(DLCO)などの検査があります。
●動脈血ガス分析
 肘(ひじ)や手首から採取した動脈血中の酸素(PO2)や炭酸ガス(PaCO2)の量、酸性かアルカリ性か(pH)などを測定し、病気の状態を知る検査です。PO2の基準値は年齢とともに低下しますが、少なくとも60mmHg以上、PaCO2は35~45mmHg、pHは7.35~7.45が正常です。
●気道過敏性試験(きどうかびんせいしけん)
 気管支ぜんそくの素因の有無を調べる検査です。各種の吸引刺激によって気管支の平滑筋(へいかつきん)が過剰な収縮をするかどうかをみます。
●シンチグラム
 胸部X線写真ではわからない肺への空気の出入り(換気)や血流の分布、炎症や腫瘤(しゅりゅう)の位置や状態を調べます。注射または吸入とカメラ撮影だけの検査です。肺血流シンチ、肺換気シンチは、肺の血栓塞栓症(けっせんそくせんしょう)の有無、原因不明の低酸素血症、肺腫瘍(はいしゅよう)などによる圧迫・閉塞でおこる血流や換気の障害を調べるものです。ガリウムシンチは、肺腫瘍の発見や間質性肺炎(かんしつせいはいえん)の活動性の判定に使われます。
●右心(うしん)カテーテル法
 静脈から細いカテーテルを入れ心臓での血流をみて、呼吸器の病気が心臓と関係しているか、心不全(しんふぜん)をともなっているか、肺高血圧症をともなっているかを調べます。
●血清総(けっせいそう)IgE(アイジーイー)
 アトピー型気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、寄生虫感染、高IgE症候群、IgE骨髄腫(こつずいしゅ)などで上昇します。
●抗原特異的(こうげんとくいてき)IgE抗体(アイジーイーこうたい)(RAST(ラスト))
 アトピー型気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などの原因抗原を、静脈血を採血して調べます。
●沈降抗体(ちんこうこうたい)
 過敏性肺炎やアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の原因抗原の診断に用いられます。
●CRP(C反応性(シーはんのうせい)たんぱく)
 炎症(感染やアレルギーなど)や腫瘍などによる組織破壊が進むと血中に増えるので、その程度がわかります。
●寒冷凝集反応(かんれいぎょうしゅうはんのう)
 マイコプラズマ肺炎や、びまん性汎細気管支炎(せいはんさいきかんしえん)のときに、上昇します。
●マイコプラズマ抗体
 マイコプラズマ肺炎や気管支炎発病後10日目ころから上昇し、1~2か月で最高に達し、1年くらいで消えます。発病後と数週間後の2回測定し、上昇を確認します。
●腫瘍(しゅよう)マーカー
 肺がんと関係する腫瘍マーカー(「腫瘍マーカー」)は10種類ちかくが知られています。肺がんの早期発見や診断の確定には役立ちませんが、経過や治療効果をみるのに使われます。
●ツベルクリン反応(PPD)
 BCG接種を受けるか結核菌に感染すると、陽性になります。結核を発病すると、より強く反応します。
●ナイアシン・テスト
 抗酸菌がみられた場合に行ないます。陽性なら結核菌、陰性なら非定型抗酸菌です。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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