病原体はマイコプラズマ・ニューモニエで、せきなどのしぶきや感染者との濃厚な接触により感染し、増殖する。潜伏期間は通常2~3週間。頭痛や全身の
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出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
(1)Mok JY, Inglis JM, Simpson H. Mycoplasma pneumoniae infection. A retrospective review of 103 hospitalised children. ActaPaediatr Scand. 1979;68:833-839.
(2)Trochtenberg S. Nebulized lidocaine in the treatment of refractory cough. Chest. 1994;105:1592-1593.
(3)Martin RE, Bates JH. Atypical pneumonia. Infect Dis Clin North Am. 1991;5:585-601.
(4)Bartlett JG, Dowell SF, Mandell LA, et al. Practice guidelines for the management of community-acquired pneumonia in adults. Clin Infect Dis. 2000;31:347-382.
(5)Niederman MS, Mandell LA, Anzueto A, et al. Guidelines for the Management of Adults with Community-acquired Pneumonia. Diagnosis, assessment of severity, antimicrobial therapy, and prevention. Am J RespirCrit Care Med. 2001;163:1730-1754.
(6)File TM Jr, Segreti J, Dunbar L, Player R, et al. A multicenter, randomized study comparing the efficacy and safety of intravenous and/or oral levofloxacin versus ceftriaxone and/or cefuroxime axetil in treatment of adults with community-acquired pneumonia.Antimicrob Agents Chemother. 1997;41:1965.
出典 法研「EBM 正しい治療がわかる本」EBM 正しい治療がわかる本について 情報
肺炎マイコプラズマMycoplasma pneumoniaeに感染することによっておこる呼吸器感染症。肺炎マイコプラズマは地域で流行する肺炎(市中肺炎)のおもな原因菌の一つであり、学童期~青年期にみられる肺炎のなかではもっとも頻度が高い。マイコプラズマ症ともよばれる。またほかに、「非定型肺炎atypical pneumonia」(肺炎球菌などの定型的な細菌による肺炎とは違って、症状が軽く、胸部X線写真像も異なるためこうよばれる。なお非定型肺炎はその多くをマイコプラズマ肺炎が占めるが、クラミジア肺炎やウイルス性肺炎なども含まれる)や、「歩きまわれる肺炎walking pneumonia」(胸部X線写真の肺炎像と比較して症状が軽いため)、「オリンピック病」(日本では、新型コロナウイルス感染症〈COVID(コビッド)-19〉の流行以前は4年周期でオリンピックのある年に流行を繰り返してきたため)などとよばれることもある。
[水野真介・笠井正志 2024年4月17日]
肺炎マイコプラズマには、菌を構成するタンパク質の違いによって二つの異なるタイプがあり、一方のタイプに感染しても、他方のタイプに対する免疫は得られないため、交互に人々の間で感染が広がり、数年ごとに感染が流行する。
肺炎マイコプラズマは、感染者からの飛沫(ひまつ)感染(咳(せき)やくしゃみなどによる感染)により、気管支の表面に存在する気道線毛上皮に感染をおこす。ただし、直接細胞を壊したり、菌が細胞内に侵入したりすることはほとんどない。通常、菌の成分の一部に対して、ヒトの免疫が反応することによって肺炎が生じる。感染により抗体がつくられるが、その効果は持続しないため、一生の間に複数回感染することがある。
[水野真介・笠井正志 2024年4月17日]
ヒトに病気を引き起こすマイコプラズマ科の菌には、マイコプラズマ属菌とウレアプラズマ属菌の二つが存在する。マイコプラズマ属菌の特徴は、細胞の直径が150~250ナノメートルで、細胞壁をもたないことである。ヒトに病気を引き起こすことができ、自己増殖が可能な真核生物のなかでもっとも小さく、生物学的には細菌に分類される。ヒトの呼吸器検体から検出されるマイコプラズマ属菌のなかでもMycoplasma pneumoniaeはもっとも頻度が高い。
[水野真介・笠井正志 2024年4月17日]
肺炎マイコプラズマに感染すると、気管支炎や肺炎を生じる。感染から症状が現れるまでの期間は通常2~3週間で、症状は緩やかに進行する。初めは発熱、倦怠(けんたい)感、頭痛、のどの痛みが現れ、その3~5日後には痰(たん)の絡まない、乾いたような咳が出始める。鼻汁や消化器系の症状は、年長の子どもではあまりみられない。また呼吸器以外の症状が引き起こされることがあり、感染者の10~20%に皮膚の発疹(ほっしん)が現れる。
さらに、マイコプラズマ感染症による粘膜炎、脳炎、ギラン・バレーGuillain-Barre症候群(神経疾患)、溶血性貧血(赤血球が壊れることによる貧血)、心筋炎(心臓の筋肉の炎症)など、さまざまな病気が引き起こされることがある。
[水野真介・笠井正志 2024年4月17日]
肺炎マイコプラズマは完全な細胞壁をもたないため、一般的な細菌検査に用いられるグラム染色で染色されないという特徴がある。また、ほかの一般的な細菌と比べて増殖する速度が遅く、検査室の試料で培養するには通常約2週間かかる(ただし多くの医療施設では、患者の呼吸器試料(咽頭(いんとう)ぬぐい液や痰)を使って、肺炎マイコプラズマを構成するタンパク質や遺伝子を迅速に検出することが可能である)。
感染した患者の血液を使用して、肺炎マイコプラズマに対する抗体を検出する方法も一般的である。ただし、感染後、1週間以内では十分な抗体の増加が得られないこともあり、誤って陰性となってしまう可能性がある。また、抗体検査は陽性結果が数か月間続くこともある(過去に感染し、今回の症状とは関係がない場合もある)ため、慎重に判断する必要がある。
[水野真介・笠井正志 2024年4月17日]
肺炎マイコプラズマは完全な細胞壁をもたないため、通常、市中肺炎をおこす細菌に対して使用するβ(ベータ)ラクタム系の抗菌薬では効果が得られない。
日本マイコプラズマ学会では「肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針」(2019年改訂)において、最初に選択すべき抗菌薬としてマクロライド系薬を勧めている。マクロライド系薬は有効性が高く、治療後に除菌されている割合も高いからである。しかし、マクロライド系薬に対する耐性遺伝子が検出された場合や、マクロライド系薬を2~3日使用しても熱が下がらない場合、ほかの抗菌薬への変更を検討することがある。
肺炎以外の合併症の治療にはステロイドが使用されることがある。
[水野真介・笠井正志 2024年4月17日]
通常、1週間で咳がもっとも激しくなり、2週間以内には症状が改善傾向となることが多い。しかし、一部の患者では4週間以上にわたり喘鳴(ぜんめい)を伴う咳が続くこともある。有効な抗菌薬治療を受けると症状のある期間が短くなり、通常は抗菌薬治療から2~3日で熱が下がる。ほとんどの患者は合併症をおこすことなく回復する。
呼吸器感染症の合併症として副鼻腔(ふくびくう)炎、クループ症候群(喉頭(こうとう)炎)、閉塞(へいそく)性の細気管支炎、胸水の貯留、気管支喘息(ぜんそく)、中耳炎、外耳道炎などがある。呼吸器以外の合併症として脳や脊髄(せきずい)に感染が及んだ場合、患者の23~64%に長期的・神経学的な後遺症を残すと報告されている。
[水野真介・笠井正志 2024年4月17日]
肺炎マイコプラズマにおいても薬剤耐性(感染症の原因となる細菌に抗菌薬が効かなくなること)が問題となっている。過去に処方されて余っている抗菌薬を自己判断で服用したり、量や期間を処方通りに服用しないと、抗菌薬の効果が得られないだけでなく、薬剤耐性菌が生じて感染症の治療や予防の妨げとなることがある。
[水野真介・笠井正志 2024年4月17日]
マイコプラズマ肺炎は、小集団内で流行を起こすことが特徴のひとつで、かつては4年周期でオリンピック開催年に大きな流行を繰り返してきたため、「オリンピック病」と呼ばれていました。
しかし最近はこの傾向が崩れてきており、1984年と1988年に大きな流行があって以来、全国規模の大きな流行はみられていません。この数年は散発的な流行が多くみられ、2000年以降その発生数は毎年増加傾向にあります。
マイコプラズマは
最も特徴的な症状は
一般検査所見では、白血球数は増加しないことが多く、一過性の肝酵素(ALT、AST)の上昇が約30%に認められます(クラミジア・ニューモニエ)。
日本呼吸器学会がマイコプラズマ肺炎を中心とした非定型肺炎を疑う項目を公表しています(表1)。筆者らの検討では、この鑑別表を用いることによって85%以上の確率で診断できることを証明しているので参考にしてください。
培養検査には特殊な培地(PPLO培地)を使用しますが、細菌培養に比べて長時間を必要とするため、診断は主に血液を用いた血清抗体価測定に依存しています。しかし、血清抗体価測定法は早期に診断ができないといった欠点があり、このためIgM抗体を迅速に検出するイムノカード(IC)法が開発されました。しかし、本法は偽陽性例が多く、陽性持続期間も長いため、急性感染を確定する方法ではないとされています。
マイコプラズマは細菌の一種ですが、一般の細菌とは異なって細胞壁をもっていません。そのため、
一方、マイコプラズマのマクロライド耐性株が2000年以降に日本各地で分離されるようになりました。その頻度は、小児科領域で40~60%にも及んでいるので注意が必要です。
大部分のマイコプラズマ肺炎は比較的良好な経過をとりますが、時に急性呼吸不全を起こす重篤な症例も認められます。このような重症の場合では、抗菌薬とともに副腎皮質ステロイド薬の併用が有効であるとされています。
家族内や小集団内で発生することから、周囲の人たちがマイコプラズマ肺炎と診断されていて、頑固な咳が続く場合には病院を受診してください。また、世間一般に広く使用されているβラクタム系抗菌薬が効かない場合は、医師に相談してください。
宮下 修行
マイコプラズマという病原体による、学童期に比較的多い肺炎です。昔は4年に一度流行していたので「オリンピック肺炎」などと呼ばれましたが、現在その傾向は崩れつつあります
マイコプラズマという細菌の感染によります。
感染している人と濃厚に接触してうつります。潜伏期間は2週間前後です。
主な症状は熱と
合併症を起こすことは少ないです。
胸部X線検査により肺炎と診断し、血液検査でマイコプラズマの抗体を測定してマイコプラズマ肺炎の診断をします。
マイコプラズマに効果のある、マクロライド系の抗生剤を使います。これにより多くは2~3日以内に熱が下がります。
なお、子どもによく使われるペニシリン系やセフェム系の抗生剤はまったく効果がありません。
熱とひどい咳が3~4日以上続いたら早めに医療機関を受診してください。
とくに、小学生でこのような症状があったり、ペニシリン系やセフェム系の抗生剤を服用していても症状の改善がまったくみられない時は、この病気にかかっている可能性があります。
大石 智洋
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
(石川れい子 ライター / 2011年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
マイコプラズマ・ニウモニエMycoplasmapneumoniaeによって起こる肺炎で,原発性非定型肺炎の約30~40%を占める。この病原微生物は,細胞壁を欠き細胞膜のみをもち,ウマ血清と酵母エキスを加えた培地で培養できる。一般的には比較的軽症の肺炎を起こし,4年周期で多発流行する傾向がある。症状として,咳,発熱,痰,咽頭症状がみられ,ときに鼓膜炎を合併して耳閉塞感,耳痛を伴う。きわめてまれであるが脳炎などの中枢神経合併症,心筋炎,溶血性貧血,関節炎などを合併することもある。血沈値は著しく増え,寒冷凝集反応が陽性となり,白血球数は正常範囲内かむしろ減少する。咽頭のぬぐい液から病原体が培養できるか,もしくは血清反応で病初と回復期血清の間に4倍以上の抗体価の上昇があれば確定診断される。マクロライド系またはテトラサイクリン系の抗生物質が有効で,一般に予後はよい。
執筆者:木村 仁
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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