和玉篇(読み)わごくへん

精選版 日本国語大辞典 「和玉篇」の意味・読み・例文・類語

わごくへん【和玉篇】

室町中期の漢和辞書。三巻。編者成立未詳中国の「玉篇」にならって編んだ部首分類体の字書漢字の音を傍記し、訓を下に示す。最古写本である長享本以下、室町・江戸の両時代にかけての数十種の写本・刊本があり、通俗字書としてきわめて流布したことがうかがえ、名は漢和辞書の別名のようにも用いられた。

わぎょくへん【和玉篇】

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改訂新版 世界大百科事典 「和玉篇」の意味・わかりやすい解説

和玉篇 (わごくへん)

〈わぎょくへん〉とも読み,《倭玉篇》とも記す。部首分類体の漢和字書。3巻。室町時代に《世尊寺本字鏡》などの系統を引く辞書を中心として成立したものか。中国の《大広益会玉篇》の影響を受けるものもある。古くは写本で伝わるものが多く,《篇目次第》《元亀字叢(じそう)》《玉篇要略集》などと呼ばれる異本がある。室町時代から江戸時代にかけてたびたび改編増補して刊行された。《節用集》《下学集》と合わせて室町時代の代表的な国語辞書と称される。単字を中心とし,右に音,下に2~3の和訓片仮名で示されている。当時の和訓を知る資料として重要なものである。簡便な漢和字書として広く利用されたもので,一般に対する影響も大きかった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「和玉篇」の意味・わかりやすい解説

和玉篇
わごくへん

部首分類による字形引きの漢和字書。三巻。『倭玉篇』とも書き、「わぎょくへん」とも読む。室町初期ごろの成立で、編者は未詳。漢字を見出し語として掲げ、傍らに字音を、下に和訓を片仮名で示してある。写本、版本の数が多く、書名も『和玉篇』のほか『大広益会玉篇(だいこうえきかいぎょくへん)』『篇目次第(へんもくしだい)』『音訓篇立(おんくんへんだて)』など多様である。『新撰字鏡(しんせんじきょう)』『類聚名義抄(るいじゅうみょうぎしょう)』『字鏡』など、なかでも『大広益会玉篇』(陳彭年(ちんほうねん)編)からの影響が大きい。成立後も種々の改編が行われ、中世語・近世語資料として重要である。

[沖森卓也]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「和玉篇」の意味・わかりやすい解説

和玉篇
わごくへん

『倭玉篇』とも書き,また「わぎょくへん」ともいう。著者,成立年代とも未詳。漢和辞書。漢字部首によって分類し,音と訓を片仮名で示したもの。成立後,宋の陳彭年 (ちんほうねん) らの『大広益会玉編 (だいこうえきかいぎょくへん) 』 (1013) によってその内容を整備した。最古の写本は長享3 (1489) 年のもので,その後数十種の写本・刊本が出ている。これら一類の辞書は,室町から江戸時代の代表的漢和辞書として最も広く行われ,明治まで用いられた。

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百科事典マイペディア 「和玉篇」の意味・わかりやすい解説

和玉篇【わごくへん】

〈わぎょくへん〉とも読み,《倭玉篇》とも記す。漢和辞書。3巻。1489年,1491年の古写本があるが,成立,著者とも不詳。部首分類体の字書で,カタカナで,漢字の音を右傍に注し,下に訓を2〜3列記する。室町ごろより盛行,江戸〜明治期には漢和辞書の代名詞ともなった。

和玉篇【わぎょくへん】

和玉篇(わごくへん)

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世界大百科事典(旧版)内の和玉篇の言及

【辞書】より

…漢字・漢語に関するものとしては,まず部首引きのものに《字鏡(じきよう)》(原本は院政時代の成立か),《字鏡集》(菅原為長著。寛元期(1243‐47)ころ,またはそれ以前に成立)が現れ,ついで,室町中期に《和玉篇》が出た。古写本,版本とも多種あって,《元亀字叢(げんきじそう)》《玉篇略》などの異称をもつ本もある。…

※「和玉篇」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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