普通の醸造みそのようにみそ汁などには用いず,そのまま飯の菜などとして食べるなめ物みその総称。径山寺(きんざんじ)みそのように初めからなめ物として醸造するものと,普通のみそに魚肉,野菜,香辛料などを加えて作ったものとがあるが,後者は配合する副材料によってさまざまなものができるので,種類が多い。《守貞漫稿》によると,江戸後期の三都に共通して見られたのは径山寺みそで,ほかに江戸では鉄火みそ,京坂には桜みそやタイみそがあった。いずれも普通みそを加工したもので,鉄火みそがトウガラシをきかせたのに対して,桜みそはゴボウ,ショウガなどのほか水あめや砂糖を加えた甘いものであった。タイみそはタイのすり身を加えたもので,大坂の八百源という料理屋が売り出したという。なめみそ類は多く煮豆屋や漬物屋が扱い,また行商のなめ物売りも見られた。
執筆者:鈴木 晋一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…なめみその一種。いったダイズ,刻みゴボウなどを油でいため,赤みそに砂糖,トウガラシを加えたところへ入れて練り上げたもの。…
…古くから日本人には気のきいたしゃれや軽口を秀句と呼んでかっさいする風があり,そうした秀句好きの風潮に便乗して,例えば〈従兄弟煮(いとこに)〉とか〈天竺(てんじく)みそ〉といった名をつけて供したのである。前者はアズキ,ゴボウ,サトイモ,ダイコン,豆腐,焼きグリなどをみそ煮にしたもの,後者はトウガラシで口が焼けそうななめみそである。奇妙な名なのでそのいわれを聞かれると,煮えにくいものから〈追い追い(甥(おい)おい)〉に入れていくので〈従兄弟煮〉,〈から(唐)過ぎる〉ので〈天竺みそ〉などと答えて座をにぎやかにするというものだった。…
※「嘗味噌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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