同一の集団や社会層に属する人々がほぼ共通に示す性格上の中心的諸特徴をいう。たとえば、普通「国民性」とよばれているものは、国民という大きな枠でとらえた社会的性格にほかならない。この種の社会的な枠をどう設定するかによって、たとえば職業や階級によるもの(職人気質(かたぎ)、官僚タイプ、農民的性格、プチブル性など)、あるいは性別や年齢によるもの(たとえば女らしさや青年らしさ)など、さまざまのレベルで社会的性格を考えることができる。それらは、それぞれの集団や社会層に共通の基本的経験や生活様式に基づいて形成されると考えられる。
フロムやアドルノらは、この社会的性格の概念を用いて、ファシズムの社会心理的基盤を分析し、第一次世界大戦後のドイツの下層中産階級の社会的性格(権威主義的性格)がナチズムの受容と支持に大きな役割を果たしたことを指摘した。またリースマンは、近代市民社会の発展につれて、西欧人(主として上層中産階級)の社会的性格が伝統志向型から内部志向型に変化し、さらに資本主義の高度化(大衆社会化)につれて、他人志向型へと変化していくとした。しかし日本では、近代化と大衆化とが急激に、そして互いに重なり合いながら進行したので、リースマンの図式をそのまま当てはめることはむずかしい。そこで、日本の現実に即した社会的性格の類型として、日高六郎(1917―2018)は、(1)庶民的性格、(2)臣民的性格、(3)市民的性格、(4)大衆的性格、(5)人民的性格、の五つを区別した。
社会的性格は、それを生み出した社会的・集団的構造を維持する方向に働く場合が多く、その意味で「社会構造の接着剤」といわれるが、反面、社会の変化しつつある部分に対応する社会的性格が、旧来の停滞的な部分に対立し、社会全体の変動を導く「起爆剤」となることもある。
[井上 俊 2018年6月19日]
『E・フロム著、日高六郎訳『自由からの逃走』(1951・東京創元社)』▽『日高六郎著『現代イデオロギー』(1960・勁草書房)』▽『D・リースマン著、加藤秀俊訳『孤独な群衆』(1964・みすず書房)』▽『T・W・アドルノ他著、田中義久他訳『権威主義的パーソナリティ』(1980・青木書店)』
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… この問題をとりあげ,社会がいかに人格形成に大きな影響を与えているかを強調したのがフロムである。彼の性格形成論の根底には社会的性格なる概念があり,それはあるひとつの社会集団の成員のほとんどがもっている性格構造の本質的な中核をなすもので,その集団特有の基本的経験と生活様式とから発達したものであるという。〈社会的性格は外的な必要を内面化し,ひいては人間のエネルギーをある一定の経済的社会組織の課題に準備させる〉。…
※「社会的性格」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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