地域医療情報連携ネットワーク(読み)ちいきいりょうじょうほうれんけいねっとわーく

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

地域医療情報連携ネットワーク
ちいきいりょうじょうほうれんけいねっとわーく

病院、かかりつけ医薬局、訪問看護、救急医療機関、介護施設等の間で、現在および過去の診療情報(患者基本情報、病名、診療内容、検査・処置処方手術・リハビリ情報等)を情報システム(ICT)を用いて共有する仕組み。患者の同意のもと、情報を共有することにより、重複検査や時間の無駄なく効率的に、最適な診療・ケアを提供することができる仕組みとして整備が進められている。

 「地域における医療及び介護を総合的に確保するための基本的な方針(平成26年9月)」の基本的な考え方・方向性の一つとして「情報通信技術(ICT)の活用」があげられている。そこでは、「質の高い医療提供体制及び地域包括ケアシステムの構築のためには、医療・介護サービス利用者も含めた関係者間での適時適切な情報共有が不可欠であり、情報通信技術(ICT)の活用は有効な手段である」とされている。「日本再興戦略 改訂2015」等の政府戦略のなかでは、具体的施策として「地域医療情報連携ネットワークの全国各地への普及」があげられている。普及に向けた情報提供の一環として、「医療情報連携ネットワーク支援Navi(アーカイブ)」というウェブサイトが設置されている。

 「データヘルス改革」および「未来投資戦略2017」のなかでは、「全国保健医療情報ネットワーク」の整備があげられている。これは、個人の健診・診療・投薬情報等を医療機関等の間で共有できる全国的な情報ネットワークである。都道府県や医療圏を超えた広域の連携や、地域医療情報ネットワークが整備されていない地域においても情報連携を行うことが可能となる。2020年度(令和2)中の本格稼働を目ざし整備が進められており、2020年度以降には、診療情報や服薬情報に加え、介護情報などさらに幅広い情報の共有を予定している。この全国ネットワークは、本人の同意のもと、医療機関の診察時に、患者基本情報や健診情報等を共有できる「保健医療記録共有サービス」と、救急時に患者情報を活用できる「救急時医療情報共有サービス」とで構成されている。

 地域医療情報連携ネットワークは、各地域独自にシステム導入が進んだ結果、隣接する医療圏でネットワーク接続する際の困難さが課題となっており、特定の電子カルテシステムやシステム事業者に依存しないマルチベンダーによるシステム連携を行うための標準化・共通仕様システムの導入が推進されている。全国ネットワーク構築に際しても初期コスト・運営コストの低減のため、電子カルテの標準化の促進とともに、クラウドサービス基盤上に、医療機関等のレセプトおよび電子カルテ等のデータの一部(ミニマムデータセット)を収集・保管し、医療情報連携ネットワークのポータルサイトから、統合ビューアを通して患者情報を閲覧するシステムが検討され、開発が進められている。

 厚生労働省が行った地域医療情報連携ネットワークの現状に関する調査結果によると(2020年10月16日公表)、「地域医療介護総合確保基金および地域医療再生基金」を活用して構築した全国の218か所の地域医療情報連携ネットワークのなかに活動状況が低調なものがあることが明らかとなった。今後、地域医療情報連携ネットワークの運用状況のフォローアップを都道府県が行うとともに、ネットワークのあり方について、カバーする圏域、登録患者数や参加医療機関数の目標値等を設定することが検討されている。

[前田幸宏 2020年12月11日]

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