コトバンクはYahoo!辞書と技術提携しています。

地母神 チボシン

世界大百科事典 第2版の解説

ちぼしん【地母神 earth‐mother】

大地の豊饒性,生命力の神格化されたもの。父神的性格をもつ上神(天父)に対する。ギリシア神話大地女神ガイアは,原古にカオスに次ぎ最初に誕生し,自分が生んだ天空神ウラノスと結婚して,神々の祖となったとされる。ギリシア人は,最古の人類も大地から生まれたと信じていた。このように大地を,万物を生み養う偉大な母神としてあがめる信仰は,世界中の農耕文化に共通して見いだされる。ギリシア神話では,ほかにも,名前そのものが文字どおり〈地母〉を意味した可能性が強いデメテルをはじめとして,ヘラ,アフロディテアルテミスなど,有力な女神の多くに〈地母神〉の性格が認められる。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

大辞林 第三版の解説

じぼしん【地母神】

多産と豊饒ほうじようをもたらす女神。母なる大地の神。ちぼしん。

ちぼしん【地母神】

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

地母神
ちぼしん

大地の豊饒(ほうじょう)、生成、繁殖力を人格化した女神。その源流は、オーリニャック期(旧石器時代末期)の象牙(ぞうげ)、骨、石などに彫られたいわゆるビーナス像にまでさかのぼるといわれ、古代文明の幾多の女神、たとえばシュメールのイナンナ、セム人のイシュタル(アシュタルテ)、ペルシアのアナヒタ、エジプトのイシス、ギリシアのゲーやレア、インドのパールバティやカリー、メキシコのコアトリクエなどがいる。これら女神の崇拝および祭祀(さいし)はとくに農耕文化と結び付いて広まったが、クレタの山の母神をはじめ、アナヒタ、キベレ、イシュタル、アルテミスなどは、もとの狩猟時代の要素が残ったために野獣の守り神とされている。またイシュタルとタンムーズ、キベレとアッティスというように、往々にしてこれらの女神はその繁殖力の源泉として若い男神を従えていた。そのため、祭祀は若い男神との性的結合やその死を象徴する流血供犠などを伴う。この大地の母神の結婚相手としては、ときに天空を人格化した男神、つまり天父(てんぷ)が登場する。中国の皇天后土(こうてんこうど)の信仰などもその例であるが、同様なものはポリネシア、北アメリカのインディアン、アフリカなどにもみられる。また地母神は、とかく死者祭祀や冥府(めいふ)と結び付くことが多いが、これは大地を死者の安住、休息の場と考えたことによるものであろう。[松前 健]
『石田英一郎著『桃太郎の母』(1956・法政大学出版局) ▽エリアーデ著、堀一郎訳『大地・農耕・女性』(1968・未来社) ▽大林太良著『神話学入門』(中公新書)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典内の地母神の言及

【聖婚】より

…それは,しばしば未婚の女性によって演じられた聖なる花嫁と穀物神に擬せられた王との婚姻を原型としている。宗教学的には,大地の豊穣を確実にするための象徴儀礼であり,その背後には,地母神に対する崇拝が存在していた。聖婚儀礼は,小アジアから東部地中海沿岸一帯に広く分布していたが,その中心地はキプロス島の南西端のパフォスPaphosにあるアスタルテ(ギリシアのアフロディテと同一視された)の神殿であった。…

【地霊】より

…地霊の働きには二面性があり,人々に土地を耕させ恵みを授ける慈愛の性質と,それとは逆に地震や干ばつをひき起こす過酷な性質とが同居する。前者はみずからの肉体を傷つけて子孫を養う地母神として,後者は地霊に従わぬ人間を襲う怪物や荒ぶる神として発現する。地鎮祭をはじめ聖域や結界にかかわる多くの習俗,風水(風水説)ほかの地相占いなどは,いずれも荒ぶる地霊を慰撫し抑え,その慈悲にすがろうとする人間の欲求から生じていると考えられる。…

【ビーナス】より

…ウェヌスはもとはローマの菜園を守る小女神であったが,のちにギリシアの女神アフロディテと同一視され,愛と美をつかさどる女神の総称となった。
[旧石器時代の地母神崇拝]
 ビーナスの原型およびビーナスにまつわる神話は,太古の地母神崇拝に起源をもっている。植物を生ぜしめる大地を地母神(大母神)とみなす思想は,古代世界各地に見られる。…

※「地母神」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

地母神の関連キーワードシンガポールのスリマリアマン寺院スペンタ・アルマイチアウグストゥス神殿イェリコ(遺跡)トラティルコ遺跡ワルプルギスの夜ニンドワリ遺跡トリポリエ文化オリエント神話死体化生神話ニンフルサグアルママータ桃太郎の母イシュタル上天神信仰デメーテルポセイドンペルー神話タンムーズ天父と地母

今日のキーワード

OAR

2018年の平昌五輪に国家資格ではなく個人資格で参加したロシア国籍の選手のこと。「Olympic Athlete from Russia(ロシアからの五輪選手)」の略。14年ソチ五輪での組織的なドーピ...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android