デジタル大辞泉
「垂る」の意味・読み・例文・類語
た・る【垂る】
[動ラ四]
1 物の末端が下方へさがる。たれさがる。
「あさましう高うのびらかに、先の方少し―・りて」〈源・末摘花〉
2 したたる。流れおちる。
「父の命はたくづのの白ひげの上ゆ涙―・り嘆きのたばく」〈万・四四〇八〉
[動ラ下二]「たれる」の文語形。
[補説]中世初期に「垂らす」が用いられるようになり、他動詞としては下二段の「垂る」と併用されるようになった。その影響で自動詞のほうにも変化が生じ、自動詞の四段「垂る」はしだいに用いられなくなった。現代では自動詞としては「垂れる」、他動詞としては「垂れる」と「垂らす」がある。
し‐だ・る【▽垂る】
[動ラ四]長くたれ下がる。しだれる。
「限りなく宿のさかえむしるしにや君が御垣に―・る小柳」〈重家集〉
[動ラ下二]「しだれる」の文語形。
しず・る〔しづる〕【▽垂る】
[動ラ下二]木の枝などに積もった雪が滑り落ちる。
「朝まだき松の上葉の雪は見む日影さし来ば―・れもぞする」〈丹後守為忠百首〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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た・る【垂】
- [ 1 ] 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙
- ① 物の端が下にさがる。ぶらさがる。たれさがる。
- [初出の実例]「あさましう、高うのびらかにさきの方少したりて、色つきたる事」(出典:源氏物語(1001‐14頃)末摘花)
- ② 血、汁、涙など、液状のものがしたたる。流れ落ちる。
- [初出の実例]「ちちのみの 父の命(みこと)は たくづのの 白鬚の上ゆ 涙多利(タリ) 嘆きのたばく」(出典:万葉集(8C後)二〇・四四〇八)
- 「頸のまはりかけて血たり」(出典:徒然草(1331頃)五三)
- [ 2 ] 〘 自動詞 他ラ下二 〙 ⇒たれる(垂)
垂るの語誌
( 1 )奈良時代には自動詞がラ行四段活用、他動詞がラ行下二段活用であったが、平安時代の用法は、「血たり」「鼻たり」のように、大部分が連用中止法に固定しているところから、すでにこの時代、四段活用には衰退のきざしが見える。
( 2 )のち、本来は他動詞である下二段活用が自・他兼用となる。これは同じ四段活用の「足る」との同音衝突を避けたためである。
( 3 )「浪花聞書」に「たる 水がたる、乳がたるなどいふ。江戸でたれるといふ也」とあるところから、上方方言では江戸時代末期まで四段活用が用いられていたことがわかる。
し‐だ・る【垂】
- [ 1 ] 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙 下にたれる。たれ下がる。
- [初出の実例]「我が門のや 垂(しだ)ら小柳 さはれ とうとう 之太留(シダル)小柳 垂るかいては なよや 之太留(シダル)小柳」(出典:風俗歌(9C前‐11C中か)我門)
- 「其の樹の様は上より下まで等しくして葉しだりて枝に垂敷けり」(出典:今昔物語集(1120頃か)一)
- [ 2 ] 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙 ⇒しだれる(垂)
しず・るしづる【垂】
- [ 1 ] 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙 木の枝などから積もっていた雪がすべり落ちる。
- [ 2 ] 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙 ⇒しずれる(垂)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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