日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩化アンモン石」の意味・わかりやすい解説
塩化アンモン石
えんかあんもんせき
salammoniac
天然に産する塩化アンモニウムの鉱物。火山昇華物として、また石炭層の燃焼産物としても生成される。前者の産状では自然硫黄(いおう)と共存し、後者では自然硫黄のほか、鶏冠(けいかん)石、石黄(せきおう)、マスカーニ石mascagnite(化学式(NH4)2[SO4])、アンモニウム明礬(みょうばん)tschermigite(NH4Al[SO4]2・12H2O)などを伴う。自形はまれ。可溶性のため、好条件でないと残存しない。多く皮膜状、繊維状、土状あるいは樹枝状、鍾乳(しょうにゅう)石様になることもある。
日本では桜島、三原山、三宅(みやけ)島などの産出が知られているほか、福岡県宮田町(現、宮若(みやわか)市)大谷炭坑(閉山)からも報告がある。命名はギリシア語をそのまま用いており、古代から合成物に与えられた名称そのままである。従来sal ammoniacと分離した鉱物名であったが、2008年、salammoniacという名称が国際的に採用された。
[加藤 昭 2016年1月19日]