日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩酸エフェドリン」の意味・わかりやすい解説
塩酸エフェドリン
えんさんえふぇどりん
ephedrine hydrochloride
交感神経興奮剤、鎮咳(ちんがい)剤(咳(せき)どめ)として用いられる薬剤。化学式C10H15NO・HClで、4種の異性体とそのラセミ体があるが、普通はL-エフェドリン塩酸塩をさす。マオウ(麻黄)のアルカロイドで、白色の結晶または結晶性粉末。においはなく、味は苦い。1885年(明治18)長井長義(ながよし)によって麻黄から瞳孔(どうこう)散大性をもつ物質として発見され、また喘息(ぜんそく)治療薬としての用途は1924年にチェンChenとシュミットSchmidtらによって発見された。気管支喘息、喘息性気管支炎、感冒、急性および慢性気管支炎、上気道炎、鼻粘膜の充血や腫脹(しゅちょう)などに内服、注射、点鼻、吸入、噴霧剤として応用される。また、脊椎(せきつい)麻酔時の血圧降下に注射剤として用いられる。内服では1回12.5~25ミリグラム、1日1~3回、常用量は1日75ミリグラム、注射は1回25~40ミリグラム、皮下注射を行う。極量は1回50ミリグラム、1日0.1グラム(経口、皮下注射)である。なお、覚醒(かくせい)剤原料としての取締りの対象となっている。
塩酸メチルエフェドリンは塩酸エフェドリンと効能は同じであるが、副作用が少ないので内服用には主としてこのものが用いられる。合成品でdl体が日本薬局方に収載されている。1回25~50ミリグラム、1日3回内服、注射は1回40ミリグラムを皮下または筋肉注射する。普通薬であるが、塩酸エフェドリンと同様に覚醒剤原料としての規制を受ける。
[幸保文治]