マオウ(その他表記)Ephedra

改訂新版 世界大百科事典 「マオウ」の意味・わかりやすい解説

マオウ (麻黄)
Ephedra

裸子植物マオウ科小低木で,半つる性のものもある。マオウ属は40種がユーラシア大陸,アフリカ北部および新大陸の乾燥地に分布する。体に節があり,鱗片状の葉が節から対生する。一般に雌雄異株。葉腋(ようえき)に1個の花をつける。雄花は1対の花被(苞葉)の間から1本のおしべを出し,その頂部に2~8個の合成花粉囊をつける。雌花は苞葉に包まれ,花序をつくり,花被と1個の胚珠からなる。花被は胚珠を包み,一見外珠皮の観を呈するので,かつては珠皮が2枚あるといわれた。珠皮は先端が長く伸び,珠孔管をつくる。花粉にはマツのように2個の前葉体細胞がある。シナマオウE.sinica Stapf.は中国北東部モンゴルの乾燥地に生育し,高さ20cm,節間の長さ3.5cm,径1mmあまり。

シナマオウのほか,中国産のE.distachya L.やE.equisetina Bunge,インド産のE.gerardiana Wall.などの茎を乾燥したものを,生薬で麻黄という。アルカロイド,l-エフェドリンl-ephedrineを含み,これは気管支の平滑筋の痙攣(けいれん)を弛緩させるので喘息(ぜんそく)に用いられるが,長期間連用すれば薬剤耐性を生じ,根治はできない。漢方では他の生薬と配合して感冒悪寒,発熱,頭痛,身体疼痛(とうつう)などの症状に用いて発汗作用があり,小児の麻疹にも応用される。また利尿作用があり,急性腎炎,慢性関節炎に用いられる。麻黄は茎と根,節は作用が逆で,茎は発汗,根と節は止汗といわれている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マオウ」の意味・わかりやすい解説

マオウ
まおう / 麻黄
[学] Ephedra sinica Stapf

マオウ科(分子系統に基づく分類:マオウ科)の草状の常緑小低木。シナマオウともいう。高さ20~40センチメートル。根茎は黄赤褐色で木質をなし、厚く、曲がっている。茎は緑色で細長く、分枝し、やや扁平(へんぺい)で節が多く、外形はトクサに似る。葉は細かく、白い小鱗片(りんぺん)状で茎節に対生し、その基部は合体して茎を包み、短い莢(さや)となる。雌雄異株。夏、茎の先に小さな卵形の単性花序をつくる。花序には対生する数枚の包葉がある。雄花は雄しべ2~4本が合生し、葯(やく)は黄色。雌花は2枚の合生した包葉に包まれて2個あり、裸の胚珠(はいしゅ)をもつ。雌花を包んだ包葉は熟すと肉質で鮮やかな赤色となり、長卵形で黒褐色の種子が2個ある。中国東北部原産。

 マオウ属は世界の温帯の乾燥地に分布、約40種知られ、薬用とするものが多い。

[林 弥栄 2018年3月19日]

薬用

地上部の草質茎を刻んだものを漢方では麻黄(まおう)といい、発汗、解熱、鎮咳(ちんがい)、利尿剤として感冒や流感などの熱性病の初期の治療のほか、喘息(ぜんそく)、気管支炎、皮膚病、関節痛、腎炎(じんえん)、浮腫(ふしゅ)などに用いる。草質茎にはアルカロイド、サポニン、タンニン、配糖体が含まれるが、薬用に供されるのは、アルカロイドのエフェドリン、メチルエフェドリンを含有する種類である。おもな種には、マオウのほか、中国東北部、内モンゴルからヨーロッパ南部のステップ地帯に分布するフタマタマオウE. distachya L.、華北から中央アジアに分布するエキセティナ種E. equisetina Bunge、インド、パキスタンに分布するゲラルディアナ種E. gerardiana Wall.、ネブロデンシス種E. nebrodensis Tineoなどがある。エフェドリンは副腎髄質ホルモンのアドレナリンに構造および作用が似ており、交感神経の末端を刺激するほか、中枢神経を強く興奮させる。

[長沢元夫 2018年3月19日]


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百科事典マイペディア 「マオウ」の意味・わかりやすい解説

マオウ(麻黄)【マオウ】

中国など主としてユーラシアに自生するマオウ科の草本状小低木,シナマオウ,フタマタマオウなどの総称。茎はトクサに似て分枝し,葉は鱗片状で対生する。雌雄異株。裸子植物であるが,被子植物の性質もあわせもつ。全草にアルカロイドのエフェドリンを含み,地上茎を乾燥して発汗・解熱・鎮咳(ちんがい)剤として用い,また塩酸エフェドリンの原料とする。
→関連項目薬用植物

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マオウ」の意味・わかりやすい解説

マオウ(麻黄)
マオウ
Ephedra sinica

マオウ科の常緑小低木。中国北部,モンゴルの原産。シナマオウともいう。砂地に生える草状の裸子植物で茎の高さは 30~70cm,根茎は太く木質,黄赤褐色で枝を分つ。茎は一見トクサに似て緑色で細長く,比較的分枝が少く節が多い。葉は白色を帯びた鱗片状で,節ごとに対生し,基部は合体して短い鞘になる。雌雄異株で,夏に花序を単生し,それぞれ2個の花をつける。雄花は包葉片が2~4個,おしべ2~4個が合生し,雌花は包葉片の下部が合生して胚珠は裸出する。種子は黒褐色で,赤く肉質化した包葉に包まれる。アルカロイドを含む薬用植物として知られ,主成分はエフェドリンで発汗,解熱に使われ,また根と節の部分には抗エフェドリンの薬理作用があり,止汗剤とする。

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デジタル大辞泉プラス 「マオウ」の解説

マオウ

マオウ科エフェドラなどの地上茎。鎮咳作用があり生薬として使用される。表記は「麻黄」とも。

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世界大百科事典(旧版)内のマオウの言及

【漢方薬】より

…エフェドリンはその発見者長井長義の名とともに漢方薬の有用性を世界に示した代表例の一つとなっている。マオウ
[甘草]
 主要成分グリチルリチンの薬理作用が詳細に調べられている。化学構造上副腎皮質ホルモンと類似点があり,生理活性も共通性がある。…

【グネツム】より

…葉は対生し,ほぼ楕円形で先がとがり,網状脈を有し,一見双子葉植物の常緑広葉樹の葉のようである。近縁のマオウウェルウィッチアとともにグネツム綱(マオウ綱)として分類される。この類は花に花被があり,雌花ではこの花被が完全に胚珠を包み,子房に似た構造を呈し,材には道管があり,裸子植物としては特異な形態を示すので,原始被子植物Protoangiospermaeまたは衣子植物Chlamydospermaeとして裸子植物から分離・独立させ,被子植物との中間型植物として扱われることもある。…

※「マオウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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