マオウ(読み)まおう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マオウ」の意味・わかりやすい解説

マオウ
まおう / 麻黄
[学] Ephedra sinica Stapf

マオウ科(分子系統に基づく分類:マオウ科)の草状の常緑小低木。シナマオウともいう。高さ20~40センチメートル。根茎は黄赤褐色で木質をなし、厚く、曲がっている。茎は緑色で細長く、分枝し、やや扁平(へんぺい)で節が多く、外形はトクサに似る。葉は細かく、白い小鱗片(りんぺん)状で茎節に対生し、その基部は合体して茎を包み、短い莢(さや)となる。雌雄異株。夏、茎の先に小さな卵形の単性花序をつくる。花序には対生する数枚の包葉がある。雄花雄しべ2~4本が合生し、葯(やく)は黄色。雌花は2枚の合生した包葉に包まれて2個あり、裸の胚珠(はいしゅ)をもつ。雌花を包んだ包葉は熟すと肉質で鮮やかな赤色となり、長卵形で黒褐色の種子が2個ある。中国東北部原産

 マオウ属は世界の温帯の乾燥地に分布、約40種知られ、薬用とするものが多い。

[林 弥栄 2018年3月19日]

薬用

地上部の草質茎を刻んだものを漢方では麻黄(まおう)といい、発汗解熱鎮咳(ちんがい)、利尿剤として感冒流感などの熱性病の初期の治療のほか、喘息(ぜんそく)、気管支炎、皮膚病、関節痛、腎炎(じんえん)、浮腫(ふしゅ)などに用いる。草質茎にはアルカロイドサポニンタンニン、配糖体が含まれるが、薬用に供されるのは、アルカロイドのエフェドリン、メチルエフェドリンを含有する種類である。おもな種には、マオウのほか、中国東北部、内モンゴルからヨーロッパ南部のステップ地帯に分布するフタマタマオウE. distachya L.、華北から中央アジアに分布するエキセティナ種E. equisetina Bunge、インド、パキスタンに分布するゲラルディアナ種E. gerardiana Wall.、ネブロデンシス種E. nebrodensis Tineoなどがある。エフェドリンは副腎髄質ホルモンのアドレナリンに構造および作用が似ており、交感神経の末端を刺激するほか、中枢神経を強く興奮させる。

[長沢元夫 2018年3月19日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マオウ」の意味・わかりやすい解説

マオウ(麻黄)
マオウ
Ephedra sinica

マオウ科の常緑小低木。中国北部,モンゴルの原産。シナマオウともいう。砂地に生える草状の裸子植物で茎の高さは 30~70cm,根茎は太く木質,黄赤褐色で枝を分つ。茎は一見トクサに似て緑色で細長く,比較的分枝が少く節が多い。葉は白色を帯びた鱗片状で,節ごとに対生し,基部は合体して短い鞘になる。雌雄異株で,夏に花序を単生し,それぞれ2個の花をつける。雄花は包葉片が2~4個,おしべ2~4個が合生し,雌花は包葉片の下部が合生して胚珠は裸出する。種子は黒褐色で,赤く肉質化した包葉に包まれる。アルカロイドを含む薬用植物として知られ,主成分はエフェドリンで発汗,解熱に使われ,また根と節の部分には抗エフェドリンの薬理作用があり,止汗剤とする。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android