声帯ポリープ(読み)せいたいポリープ(その他表記)Vocal fold polyp

六訂版 家庭医学大全科 「声帯ポリープ」の解説

声帯ポリープ
せいたいポリープ
Vocal fold polyp
(のどの病気)

どんな病気か

 声帯に生じる炎症性の腫瘤(しゅりゅう)(こぶ)で、通常片側に発生します。ポリープの大きさはさまざまで、まれに両側の声帯にできることもあります(図17)。

原因は何か

 一過性の声の乱用が原因といわれています。カラオケ、怒鳴り声、演説などの急激な発声誘因となり、声帯粘膜の血管が破れて内出血を起こし、ポリープを形成するという説が有力です。

症状の現れ方

 声がれ(嗄声(させい))が主症状ですが、のどの違和感や発声時の違和感などの症状を示すこともあります。

検査と診断

 間接喉頭鏡検査や喉頭ファイバースコープ検査で声帯を観察し、ポリープを確認することで容易に診断できます。

治療の方法

 声帯ポリープができたばかりの時(新鮮例)は、自然に消えてなくなる可能性もあります。また、消炎薬の投与ステロイドホルモン吸入治療により、ポリープがなくなることもあります。しかし、これらの治療に反応しない時はポリープを切除する手術が必要になります。

 手術は、一般的には入院のうえ、全身麻酔をかけ、喉頭顕微鏡下手術(ラリンゴマイクロサージェリー)として行われます。全身麻酔が不可能な場合や、入院を希望しない場合などは、外来でファイバースコープを用いて摘出することもあります。また、この手術のあとには声帯の傷の安静のために、1週間前後の沈黙期間を要します。

 声帯ポリープは悪性化はしませんが、まれにポリープのような外観のがんがあるので、摘出されたポリープは病理組織検査で、悪性化の有無をチェックします。

病気に気づいたらどうする

 声をなるべく使わないようにして、のどの安静を心がけます。それでも2週間で改善しなければ、耳鼻咽喉科を受診してください。喉頭がんなどの他の疾患がないかどうか確かめます。

塩谷 彰浩


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「声帯ポリープ」の解説

せいたいぽりーぷこうとうぽりーぷ【声帯ポリープ(喉頭ポリープ) Vocal Fold Polyp】

[どんな病気か]
 発声(はっせい)は、喉頭にある声帯(せいたい)という帯状(おびじょう)のひだ振動によって行なわれます。この、いわば楽器の弦(げん)のような声帯にやわらかいこぶのような腫瘤(しゅりゅう)(ポリープ)が生じた状態を、声帯ポリープといい、発声の障害になります。
 この病気になるのは、成人で、やや男性が多くなっています。
[原因]
 声は、左右2本の声帯が高頻度で振動して生じます。男性の会話では毎秒100回、女性では毎秒250回も声帯が振動します。
 ですから、無理な発声がいちばんの原因となります。歌手や学校の先生、アナウンサーなどの声を多く使う人に多くみられるゆえんです。ふつう、かぜでのどに炎症があるのに、むりに発声した後に生じやすいものです。
[症状]
 のどの異物感と嗄声(させい)(しわがれ声)が主症状です。また、いつもは歌えていた歌が、歌えなくなります。
 喉頭内視鏡検査で比較的簡単に、安全に診断できます。とくに最近では、各種ファイバースコープの開発で、診断の精度があがりました。
 声帯がんとまぎらわしいポリープもあり、このときは組織を取って調べる病理診断が必要になります。
[治療]
 できて間もないポリープならば、発声をやめて声帯を休めたり、消炎剤の吸入や内服で消えることもあります。
 古くなってかたまった場合は、外科的切除が望まれます。
 最近は、喉頭顕微鏡下手術といって、拡大視のもとに手術が行なわれるので安全確実です。
 予防としては、ふだんから声の衛生観念をもって、声帯を大事にすることがたいせつです。
 中年以降の男性で喫煙者は、がんとの区別も念頭に入れておきましょう。

出典 小学館家庭医学館について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「声帯ポリープ」の意味・わかりやすい解説

声帯ポリープ (せいたいポリープ)
polyp of the vocal cord

声帯縁に好発する広基性または有茎性の浮腫性腫瘤をいう。表面は平滑で,周囲の正常粘膜に比べるとやや赤みをおびていることが多く,大きさはアワ粒大から,声帯のほぼ全長にわたるほど大きなものまでいろいろである。成因は諸説あるが,現在では,声の乱用や喫煙,局所の急性炎症などにもとづく循環障害による血管破綻(はたん)が直接の原因とする説が有力である。症状としては〈声がかれる〉〈声を出すと疲れる〉と訴えることが多い。ごく初期の病変では,消炎療法や沈黙療法により保存的に治療することで軽快することもあるが,明らかな腫瘤形成がみられ不可逆的変化であると考えられる例では,手術的に切除することが必要である。従来は局所麻酔下に外来手術で行うこともあったが,術後の発声機能の保存という観点からは,全身麻酔下に顕微鏡を使って行う喉頭微細手術のほうがより確実な操作とされ,普及してきた。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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