夜討(読み)ようち

精選版 日本国語大辞典 「夜討」の意味・読み・例文・類語

よ‐うち【夜討】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 夜、不意に敵をおそい打つこと。闇に紛れて敵陣を襲撃すること。夜襲夜駆け。⇔朝駆け
    1. [初出の実例]「彼の介良兼は兼ねて夜討之兵を構へて」(出典:将門記(940頃か))
  3. 夜、他人の家・宅に討入って財宝強奪すること。また、その盗賊。夜盗。
    1. [初出の実例]「右右大将家御時所定置者、大番催促謀叛、殺害人〈付夜討強盗山賊海賊〉等事也」(出典御成敗式目(1232)三条)
  4. 新聞記者などが取材のために、夜に政治家の私邸などを訪れること。→夜討ち朝駆け

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「夜討」の意味・わかりやすい解説

夜討 (ようち)

(1)夜間,敵の城,館,陣などに討ち入る戦闘形式で,保元の乱での高松殿への夜討,赤穂浪士の吉良邸討入りなどはその典型である。中世の武士社会では,通常の昼間の戦闘には合戦の日時,場所の指定など一定のルールがあったとされるが,夜陰に紛れ名のりもあげず侵入する夜討は,こうしたルールにまったく適合しない。しかし夜討がまったくの無法や卑劣な行為であったわけではなく,武者の芸の一つに数えられていたように,それ自身,昼とは別の正当性をもつものであった。(2)夜間,他人の宅,家に侵入して強奪,放火,さらに殺人などを行う犯罪。中世では《御成敗式目》に大犯(だいぼん)の一つとして挙げられているように,武家法,本所法を問わず殺人などとならぶ重罪であった。(1)(2)は夜という時間,中世の私的支配根源とされる〈宅〉への討入りという点では共通するにもかかわらず,社会的許容度においては大きな差があり,二つの夜討の関係はいまだ明らかにされていない。
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