大アラコ古窯跡(読み)おおあらここようあと

日本歴史地名大系 「大アラコ古窯跡」の解説

大アラコ古窯跡
おおあらここようあと

[現在地名]田原町芦村 郷津

あしヶ池西南、通称大アラコという谷の標高一八メートルの谷頭に群在する古窯跡群で、八基が確認されている。発掘調査された第一・第二・第三・第六号窯は、いずれも分炎柱をもつ東海地方通有の窖窯で、全長約一七メートル。

出土遺物は、山茶碗・小皿・鉢・壺類が主体であるが、第二・第三号窯内および六号窯の灰原から「正五位下行兵部大輔兼 三河守藤原朝臣 顕長」と読むことのできる陶片が発見されている。藤原顕長の三河国司としての在任期間は、「公卿補任」によって、保延二年(一一三六)から久安元年(一一四五)、および久安五年から久寿二年(一一五五)と知られており、大アラコ窯の操業年代もこの時期と推定されている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

国指定史跡ガイド 「大アラコ古窯跡」の解説

おおアラコこようせき【大アラコ古窯跡】


愛知県田原市芦村町にある窯跡。渥美半島中央部にある芦ヶ池南西、通称大アラコと呼ばれる谷に位置し、平安末期~鎌倉時代に栄えたと考えられる渥美焼の窯跡の一つ。1950年(昭和25)、窯跡の近辺で「正五位下(しょうごいのげ)行兵部大輔(ぎょうひょうぶたいふ)兼三河守藤原朝臣顕長(あきなが)」とヘラ書きの銘が入った陶器の破片が見つかった。その後、大アラコでも同様の破片が見つかり、数回にわたる発掘の結果、窯跡8基と大甕(おおがめ)や壺、鉢、山茶碗、顕長銘の短頸壺(たんけいこ)などが出土した。出土品は愛知県陶磁資料館(瀬戸市)に保管されている。藤原顕長は藤原北家冬嗣(ふゆつぐ)の子孫で、1136年(保延2)からの8年間と1149年(久安5)からの6年間、計14年を三河国の国司を務めた人物で、顕長の銘入りの壺は、祖先の霊の供養のために大アラコの窯で焼かせたものと思われる。昭和30年代までは過去に渥美半島で陶器を作っていたことが知られておらず、この大アラコ古窯跡の発掘を最初として渥美半島全域で古窯の調査が進み、多くの場所で陶器を生産していたことが明らかになった。1971年(昭和46)に5基の窯跡が国の史跡に指定された。豊橋鉄道渥美線三河田原駅から豊鉄バス「野田下車徒歩約50分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大アラコ古窯跡」の意味・わかりやすい解説

大アラコ古窯跡
おおアラコこようせき

愛知県田原市にある窯跡。渥美半島の中央部,芦ヶ池のそばにある。平安時代末期の陶器窯で,保延2 (1136) 年から久寿2 (1155) 年まで三河の国司を務めた藤原顕長の銘のある甕が出土していることで知られる。渥美半島における窯の第1段階に属する窖窯であり,分炎柱を有する。

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