大室古墳群(読み)おおむろこふんぐん

日本歴史地名大系 「大室古墳群」の解説

大室古墳群
おおむろこふんぐん

[現在地名]長野市松代町

善光寺平の東北部で、千曲川の東岸に臨む現長野市松代町まつしろまち大室・しば牧島まきしま小島田おしまだ地籍に築かれた古墳群。尾根上や谷筋により北山・大室谷・霞城かすみじよう北谷・金井山の五支群に分れる。

本古墳群の特徴は限られた狭い地域に五〇〇余基もの古墳が存することにあるが、古墳の大部が積石になる円墳であることと、内部主体の大部を占める横穴式石室のうちに天井部が屋根形をとる合掌型石室のみられる点がいわゆる大陸墓制の残影であるとして、当時の社会構成の考究上からも関心が寄せられている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

国指定史跡ガイド 「大室古墳群」の解説

おおむろこふんぐん【大室古墳群】


長野県長野市松代町にある古墳群。長野市街の南東約6km、千曲(ちくま)川南側の丘陵から派生する3つの尾根上と、それに挟まれた2つの谷に立地する。標高は350~700m、約2.5km2の範囲に帯状に分布し、5世紀前半~8世紀に築かれた総数約500基の古墳群である。古墳群は西から金井山、北谷、霞城(かじょう)、大室谷(おおむろだに)、北山の大小5つの支群に分かれている。古墳群には盛り土による前方後円墳が1基あり、そのほかに土石混合墳も見られるが、約330基が石を積み上げた積み石塚古墳である。積み石塚の墳形はほとんどが直径10mほどの円墳だが、日本ではきわめて珍しい積み石塚が、これほど多く密集する古墳群はほかに存在しない。そして、合掌形石室と呼ぶ特異な構造を備えたものが約40基あり、石室の天井部に板状の石を三角形の切り妻屋根のように組み合わせた合掌形石室は、全国でも珍しく大室古墳群の特徴となっている。出土遺物は土師器(はじき)や須恵器(すえき)、珠文鏡、短甲、馬具、刀子(とうす)、玉類、馬骨などで、なかでも馬具が多いのが特色といえる。馬骨は頭骨だけで、横穴式石室の前庭部に多量の土師器や須恵器と一緒に埋納されていた。このように大室古墳群は日本最大の積み石塚古墳群として重要であることから、大室谷支群の主要部分が1997年(平成9)に国の史跡指定された。積み石塚は高句麗(こうくり)の墓制と、合掌形石室は百済(くだら)の墓制と関係があるとする説もある。長野電鉄屋代(やしろ)線大室駅から徒歩約20分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

事典・日本の観光資源 「大室古墳群」の解説

大室古墳群

(長野県長野市)
信州の史跡百選」指定の観光名所。

出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報

世界大百科事典(旧版)内の大室古墳群の言及

【積石塚】より

…ここでは石清尾山に産出する安山岩の石塊を利用して,竪穴式石室を包蔵する比較的大規模な前方後円墳,双方中円墳や円墳・方墳状の小形積石塚など,4,5世紀ごろの積石塚が30基前後知られている。中部地方の長野市の大室古墳群も著名で,奇妙山の山麓に,7世紀ごろの小規模な積石塚の横穴式石室墳が500基ほど報告されている。中国地方では,山口県萩市の見島ジーコンボ古墳群が知られており,島の礫浜堤に,横穴式石室系統と箱式石棺に近い形のものを埋葬施設とする小型の積石塚が,築造当時で推定約200基築かれている。…

※「大室古墳群」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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