日本大百科全書(ニッポニカ) 「天津司舞」の意味・わかりやすい解説
天津司舞
てんづしまい
山梨県甲府市小瀬(こせ)町に伝わる人形芸。2メートルほどの竹の心串(しんぐし)の上部約1.3メートルが人形という杖頭傀儡(じょうとうかいらい)形のものを用いる。4月10日前の日曜日に行われる。人形を祀(まつ)る天津司神社を行列で出て諏訪(すわ)神社に着き、社殿前に設けられた御船とよばれる楕円(だえん)形の高幕舞台で人形を掲げながら遣う。人形は、一ノささら・二ノささら・一ノ太鼓・二ノ太鼓・一ノ笛・一ノ鼓・鹿島(かしま)・姫・鬼の九体からなる。一ノ笛と鼓と鹿島は一人遣いで、他は2~4人で遣うが、基本的には2人で操る棒遣い形式である。簓(ささら)、太鼓、笛、鼓など人形の持ち物、綾藺笠(あやいがさ)風の一文字笠、狩衣(かりぎぬ)・袴(はかま)の衣装からして明らかに田楽躍(でんがくおどり)人形で、鹿島は田楽の曲芸の刀玉を、姫と鬼が田楽の能を演じる。天津司の名称は手傀儡(てくぐつ)の転訛(てんか)音で、中世の人形芸を思わせるが、初発は不明。地元では、住吉十二神体が天降(あまくだ)り舞楽を舞ったのに始まり、名称は囃子(はやし)の擬音と称している。国指定の重要無形民俗文化財。
[西角井正大]