男女が結婚の際にそれぞれの姓を変えない制度で、日本では導入されていない。法制審議会(法相の諮問機関)は1996年、選択的夫婦別姓制度を盛り込んだ民法改正を答申したが、保守系議員の反対などで法案は提出されていない。最高裁は2015年と21年、現行法の規定を「合憲」と判断したが、15人の裁判官のうち15年は5人、21年は4人が「違憲」とした。今年3月8日、夫婦別姓を認めない民法や戸籍法の規定は個人の尊重などを定める憲法に違反するとして、北海道、長野、東京などに住む男女12人が国に損害賠償を求めて東京、札幌両地裁に提訴した。
更新日:
出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
夫婦が別々の姓を名のること。中国や韓国(大韓民国)、ベトナム、サウジアラビアなどでは伝統的に夫婦別姓である。ヨーロッパ諸国では、どちらの姓を名のるか法律で規定されていない国や夫婦同姓とする国などさまざまであるが、1975年の「国際婦人年」以後、各国で女性が自立した社会人として、職業をはじめあらゆる分野に進出するのに対応して、夫婦別姓、あるいは双方の姓をつなげた結合姓を選択する自由を認める法改正が、イタリア(1975)、オーストラリア(1981年および1986年)、デンマーク(1981)、スウェーデン(1982)、ドイツ(1993)などで行われた。アメリカでは州法によって規定が異なるが、カリフォルニア州やマサチューセッツ州など多くの州で、夫婦別姓や結合姓が認められている。
日本の民法は、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」(750条)と夫婦同姓(夫婦同氏)を規定しているが、夫婦が別々の姓を称することを認めるよう法を改正しようとする動きが出てきた。1989年(平成1)、東京弁護士会の女性の権利に関する委員会が「選択的夫婦別氏制採用に関する意見書」を関係機関に提出したのをはじめ、夫婦別姓を認めるよう求める運動が広がり、国民の世論も高まった。法務大臣の諮問機関である法制審議会の民法部会身分法小委員会は、1991年1月から結婚・離婚に関する法改正の一環として夫婦同姓・別姓の検討を開始し、1996年2月、婚姻制度の見直しを中心とした民法改正要綱を決定した。同要綱に盛り込まれた夫婦別姓制度は、
(1)夫婦は結婚の際に同姓を名のるか別姓を名のるかを選べる(選択的夫婦別姓)
(2)別姓夫婦の子供は、婚姻時に決めてあった同姓を名のる
(3)既婚夫婦も改正法施行後1年間は夫婦の合意で別姓夫婦になることができる
といった内容である。しかし、内閣府によって行われた「家族の法制に関する世論調査」によると、選択的夫婦別姓について、「婚姻をする以上、夫婦は必ず同じ姓を名乗るべきであり、現在の法律を改める必要はない」と答えた人は、1996年(平成8)39.8%、2001年(平成13)29.9%、2006年35.0%、「夫婦が婚姻前の姓を名乗ることを希望している場合には、夫婦がそれぞれ婚姻前の姓を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない」と答えた人は、1996年32.5%、2001年42.1%、2006年36.6%となっている。2009年の調査では、賛成49%、反対48%であるが、20~50代では賛成が過半数であった。このように、世論は賛否が拮抗しており、また国会議員のなかに強く夫婦別姓に反対する勢力があって、民法改正は進んでいない。女性のなかには、婚前・結婚後、離婚・再婚後に同じ姓で社会人として活動するために、通称として別姓を使用している例が増加している。
[山手 茂]
『高橋菊江・折井美耶子・二宮周平著『夫婦別姓への招待――いま、民法改正を目前に』(1995・有斐閣)』▽『福島瑞穂・榊原富士子・福沢恵子編著『楽しくやろう夫婦別姓――これからの結婚必携』(1996・明石書店)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
→氏名
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…それらは,氏の法的な変更を伴わない〈夫の氏の使用権の取得〉であったり(フランス),自分の氏と夫の氏との〈結合氏〉であったりする(イタリアなど)。また,妻も夫も〈出生氏〉を生涯維持する夫婦別姓の国もあれば,別氏・同氏・結合氏から選べる国も多い。〈名〉こそが個人を特定する表象であり,名に付随して男性は〈親の名+ソン〉,女性は〈親の名+ドッティル〉という〈父称(ないし母称,あるいは父称と母称との結合)〉を〈ラースト・ネーム〉としてもつ国もある(アイスランド)。…
※「夫婦別姓」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
《「晋書」杜預伝から》竹が最初の一節を割るとあとは一気に割れるように、勢いが激しくてとどめがたいこと。「破竹の勢いで連戦連勝する」[類語]強い・強力・強大・無敵・最強・力強い・勝負強い・屈強・強豪・強...