(読み)カバネ

デジタル大辞泉 「姓」の意味・読み・例文・類語

かばね【姓】

上代、うじを尊んだ称。氏そのもの、または朝臣あそみ宿禰すくねなど、氏の下に付けてよぶものをいう。また、両者をあわせたものをも「かばね」とよぶ。狭義には、朝臣宿禰などのことをさす。古代の「かばね」には、おみむらじみやつこきみあたえなど数十種あり、氏の出自によるものと、氏の職業に与えられたものとがある。
天武天皇13年(684)の八色やくさの制で定められたもの。真人まひと朝臣宿禰忌寸いみき道師みちのしおみむらじ稲置いなぎの「かばね」を諸臣に与えて、氏族の身分秩序を確立しようとしたもの。

せい【姓】

名字みょうじうじ。「が変わる」
かばね(姓)
[類語]名字名前人名氏名姓名姓氏うじファーストネームフルネーム芳名尊名高名こうめい貴名

せい【姓】[漢字項目]

常用漢字] [音]セイ(漢) ショウ(シャウ)(呉) [訓]かばね
〈セイ〉
同じ血統を表す、一族の名。「百姓同姓不婚
名字。「姓氏姓名改姓旧姓他姓
ショウに同じ。「小姓素姓すじょう百姓
[名のり]うじ

そう〔サウ〕【姓】

《「しょう」の直音表記》「せい(姓)1」に同じ。
みかどの御子、三春といふ―を賜はりて」〈宇津保・藤原の君〉

しょう〔シヤウ〕【姓】

うじ。名字。せい。
「―はむばらになむありける」〈大和・一四七〉

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精選版 日本国語大辞典 「姓」の意味・読み・例文・類語

かばね【姓】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 古代豪族がその氏(うじ)の名に付けて家柄を示した称号。元来は氏人が氏上を呼ぶ尊称で、姓の間に上下の区別がなかったが、各氏の政治的地位と職掌の世襲化が進み、大和政権が姓の与奪を通して豪族統制を強めるようになって、姓に上下の別がついた。臣(おみ)・連(むらじ)・造(みやつこ)・君(きみ)・直(あたい)・史(ふひと)・県主(あがたぬし)・村主(すぐり)など。かばねな。
    1. [初出の実例]「境を定め邦を開きて、近淡海に制め 姓(かばね)を正し、氏を撰びて」(出典:古事記(712)序)
  3. (うじ)。姓氏。
    1. [初出の実例]「時に、皇孫、天鈿命に勅すらく、汝顕(あらは)しつる神の名を以て姓氏(カハネ)と為(せ)ん。因て猨女君の号(な)を賜ふ」(出典:日本書紀(720)神代下(兼方本訓))
  4. 転じて、ある人の素性、家柄、血筋または家をいう。
    1. [初出の実例]「御いんきょ様もしわい人だ。おらがかばねでさへ、二百や三百のもちはつくに、たった百の賀もちとは」(出典:咄本・千里の翅(1773)賀の餠)

姓の補助注記

天武一三年(六八四)に、各氏の家柄や天皇にたいする政治的貢献の度合を考えて、八色(やくさ)の姓の制度が定められた。平安以後は、各氏から分かれた家(いえ)がおのおの苗字を称して、姓は公式の場合にだけ使われるようになった。


せい【姓】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 一族。血族の集団。〔詩経‐周南・麟之趾〕
  3. かばね。氏(うじ)を階層づけるための称号。しょう。そう。
    1. [初出の実例]「散位正六位上大倭忌寸小東人。大外記従六位下大倭忌寸水守二人。賜姓宿禰自余族人連姓。為神宣也」(出典:続日本紀‐天平九年(737)一一月壬辰)
    2. 「姓はなにとかいふととひ侍ければ、夏山とはましける」(出典:大鏡(12C前)一)
    3. [その他の文献]〔春秋左伝‐隠公八年〕
  4. その家の名字(みょうじ)
    1. [初出の実例]「小生(やつがれ)姓は横尾、名は時陰」(出典:読本・英草紙(1749)二)

しょうシャウ【姓】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「しょう」は「姓」の呉音 ) 氏(うじ)。苗字(みょうじ)。かばね。せい。
    1. [初出の実例]「一人はその国にすむ男、しゃうはむばらになむありける」(出典:大和物語(947‐957頃)一四七)
    2. 「年十五にて、大臣の位に上り、秦の性(シャウ)を下さるる」(出典:風姿花伝(1400‐02頃)四)

そうサウ【姓】

  1. 〘 名詞 〙 一門一家の共通の名称。苗字。せい。
    1. [初出の実例]「帝の御子、三春といふさうを給はりて」(出典:宇津保物語(970‐999頃)藤原の君)

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普及版 字通 「姓」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 8画

[字音] セイ・ショウ(シャウ)
[字訓] かばね・やから

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]
[その他]

[字形] 形声
声符は生(せい)。〔説文〕十二下に「人の生まるるなり。古の人、母、天に感じて子を生む。故に天子とす」(段注本)と、感生帝説話を以て解する。姓の起原が多く神話の形態で語られているからであろう。金文に百生・多生・子のように、生・の字を用いる。卜文の好・・妊など、女部の字には、その姓を示すものが多いと考えられる。

[訓義]
1. かばね、同族の関係にあるもの。
2. うから、やから、血縁者。
3. 人民、役人。一族の王朝に対する服属が職能的な関係で組織されたため、百姓はまた百官の意となる。

[古辞書の訓]
〔字鏡集〕姓 ハユカム・メヒ

[語系]
姓・性siengは同声。生shengは声近く、生の出自するところを姓、天に承ける性情を性という。

[熟語]
姓系・姓号・姓氏・姓字・姓族・姓望・姓名
[下接語]
異姓・易姓・改姓・旧姓・群姓・姓・公姓・豪姓・子姓・氏姓・四姓・賜姓・種姓・庶姓・正姓・素姓・宗姓・俗姓・族姓・他姓・大姓・著姓・定姓・土姓・同姓・万姓・百姓・復姓・複姓・分姓・変姓・弁姓・望姓・本姓・名姓・右姓

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「姓」の意味・わかりやすい解説


かばね

古代の豪族・貴族が、その氏(うじ)の名に添えて家柄を示したもの。語源については、「あがめな(崇名)」「かばね(骨)」などからきているとして国語で解する説と、古代朝鮮語の「骨」すなわち族の意味をもつkyöröiの音をとったとする説があるが、後者が有力である。

 姓の起源は、首長(しゅちょう)や部族の長に対する尊称である彦(ひこ)、耳(みみ)、主(ぬし)、玉(たま)、根子(ねこ)、別(わけ)などにさかのぼり、これらは原始的姓とよばれることもあるが、原始的姓は私的な称号であり、天皇から授与ないしは承認され氏によって世襲された姓とは性格を異にする。

 原始的姓の間にはもともと上下尊卑の別はなかったが、大和(やまと)朝廷の統一支配の進展につれて、豪族の多くが氏という政治的な集団に編成されてくると、氏による職業の世襲と氏々の朝廷における地位・序列がおのずから定まり、それに伴って姓の制度が整えられ、姓間の尊卑もおよそ定まった。

 姓は朝廷における氏々の世襲の職業、政治的地位、家柄を示すものとして約30の種類があったが、姓の制度の形成に大きな影響を与えたのが百済(くだら)から輸入された部民(べみん)制である。部民制の導入によって大和朝廷の支配組織は飛躍的に進展し、氏々の朝廷の職務の分担・世襲や統属関係がいっそう明確となり、それに応じて部民を統率する伴造(とものみやつこ)の氏々に連(むらじ)・造(みやつこ)などの姓が授与されていった。また、大王(おおきみ)という称号の成立も、姓制度の発生に密接なかかわりを有している。

 大和朝廷の君主は7世紀以後天皇とよばれたが、それ以前は大王といい、さらに古くは一般の豪族と同じ称号を称し、称号や尊称の点で一般の豪族と違いがなかった。ところが5世紀中葉ころより大王という優越的な称号を称して、一般の豪族の称号や尊称と区別し、やがて大王は姓を制定して、これを諸豪族に授与する超越的な存在となっていった。大和朝廷の君主が大王や天皇という称号を有するのみで氏の名も姓ももっていないのは、姓制度の外にあって、姓を与奪できる唯一の超越的な存在であったからである。

 姓は、初めは大伴(おおとも)・物部(もののべ)氏など世襲の職名や部名を名のる伴造の氏々を対象にして連や造などの姓が賜与された。その後、居住地の地名を氏の名とする葛城(かつらぎ)、平群(へぐり)、巨勢(こせ)、蘇我(そが)氏などに臣(おみ)が授けられ、地方の国造(くにのみやつこ)や豪族も直(あたい)や君(きみ)などの姓が与えられて、姓の制度は6世紀のころまでに大和朝廷の支配組織としてほぼ完成された。

 約30種に及ぶ姓は、その性格によって三つに大別できる。一つは連・造など伴造の氏々に与えられたもの、一つは臣・君など中央・地方の自立的な有力豪族に授けられたもの、一つは国造・県主(あがたぬし)・史(ふひと)・薬師(くすし)などの官職や、別・宿禰(すくね)などの称号が姓化したものである。大化(たいか)以前の姓のなかでは臣と連がもっとも重んじられ、それぞれの姓を有する諸氏の最有力者が大臣(おおおみ)・大連(おおむらじ)に任命されて天皇を補佐し、国政の枢要にあずかった。

 大化改新によって大臣・大連制や伴造制が廃止されて、姓と政治・職業との結び付きが断ち切られた結果、姓は単に家柄や出自を示す標識となった。さらに天武(てんむ)朝における八色姓(やくさのかばね)の制定によって、最高の姓であった臣・連はそれぞれ第六位・第七位に位置づけられ、こうして大化改新以前の姓制度は大きく改められていった。そして平安中期以降、氏が多くの家に分かれ、おのおの苗字(みょうじ)を唱えて氏の名を用いなくなると、姓を称することもしだいに廃れていった。

[前之園亮一]

『太田亮著『全訂日本上代社会組織の研究』(1929・磯部甲陽堂)』『阿部武彦著『氏姓』(1966・至文堂)』

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改訂新版 世界大百科事典 「姓」の意味・わかりやすい解説

姓 (かばね)

日本古代の豪族が氏名のもとにつけた称号。古代国家における政治的・社会的な位置の上下関係をあらわし,一族が世襲した。姓には,(おみ),(むらじ),(きみ),(あたい),(みやつこ),(ふひと)など多数があり,古くは公的・私的に用いられた尊称や称呼であったものに由来する。姓の君や(わけ)は,かつて首長を意味する豪族の尊称や称号,連はムラ(村)ジ(主)をあらわす尊称,(おびと)は集団のカシラ(頭)を示しオホヒト(大人)に語源をもつ統率者の称呼と考えられるが,大和国家の発展にともなって,諸豪族が朝廷のもとに組織づけられるようになると,かつての尊号や称号が一定の政治的・社会的な上下関係を示す称号として,秩序あるものとなってきた。その時期は,おそらく6世紀に入ってからで,すでにその萌芽は5世紀の後半にみられたであろう。《日本書紀》允恭天皇4年条などにみられる氏姓を定めるための盟神探湯(くかたち)の伝説は,姓の制度の発生の一端を伝える伝説であろうし,また埼玉県行田市稲荷山古墳から出土した鉄剣銘にワカタケル加多支)大王の時代の人として乎(臣)の人名が記され,称号としての居(ワケ,別,和気)の下に,姓的な臣の称呼がそえられてあるのは,姓の制度が成立してくる様相を端的に示している。姓の制度は,684年(天武13)に制定された真人(まひと),朝臣(あそん),宿禰(すくね),忌寸(いみき)など八色の姓(やくさのかばね)で一段と整ったものとなり,律令国家において皇親の下に諸貴族,諸氏族を身分的に秩序づける標識とされた。姓の制度は,日本古代において独自なもので,東アジアの他の国々にはみられない。ただし姓をカバネと読むのは,朝鮮の新羅(しらぎ)の社会制度で,位置の上下を示すのに〈骨品(こつぴん)〉の語を用いたので,その〈骨〉に相当する日本語カバネ(骸骨)が用いられたものとする説がある。
(せい)
執筆者:


姓 (せい)

律令時代に中央の貴族から地方の農民に至るまで,全国の人々に付与された呼称。姓は朝臣(あそん),宿禰(すくね),臣(おみ),連(むらじ)などのカバネ((かばね))そのものを指すのではなく,またカバネが支配階級を構成する氏(うじ)に与えられた称号であるのと違って,姓は地方の一般人民にまで広く授与された公的な呼称である。姓が初めて全国の人民にいっせいに付与されたのは,庚午年籍(こうごねんじやく)とよばれる戸籍が作成された670年(天智9)のことであった。それ以前は地方の豪族や人民の大部分は氏の名もカバネももたず,無姓のままであった。たとえ部民に設定された人々が大伴部,春日部という部称を名のっていたとしても,それは国家的な制度として定められた姓ではなかった。律令国家は全国の人民を確実に支配するために戸籍を定期的に作ったが,無姓のままでは戸籍に登録できないので,身分や階級等に応じてさまざまな姓を与えた。律令制下の姓はカバネ姓,族姓(ぞくせい),人姓(ひとせい),部姓(べせい),人部姓(ひとべせい),某姓(ぼうせい)の6類型に大別できる。カバネ姓は藤原朝臣,出雲臣のようにカバネを含む姓で,貴族・豪族など特権的な支配階級に授与された。族姓は出雲臣族(いずものおみのやから),海部君族(あまべのきみのやから)のように末尾に族字のついた姓で,中小豪族の同族に与えられた。人姓は秦人(はたひと),神人(みわひと)のように末尾に人字のついた姓で,かつて下級の伴造(とものみやつこ)であったものに与えられた。部姓は大伴部,春日部のように末尾に部字のついた姓で,大化以前に部民であった人々に付与され,人口としては部姓がもっとも多数を占める。人部姓は秦人部,神人部のように末尾に人字と部を含む姓で,かつて秦人や神人などの人姓者に従属していた人々に与えられた。某姓は大伴,春日のようにカバネも族字,人字,部字もつかない姓で,大化以前は下級の伴造であったものに与えられた。これら族姓,人姓,部姓,人部姓,某姓は被支配階級に付与された姓であるが,そのうち族姓,人姓,某姓は被支配階級のなかでも比較的上層の人民に与えられた。ただし姓を与えられたのは良民だけで,賤民には姓が付与されず無姓のままにとどめられた。

 このように姓は670年の庚午年籍以降,人民支配の制度として律令国家によって作りだされたものであり,戸籍の制度や良賤制という身分制度と不可分の関係にあった。日本の律令制下の姓は中国の制度に学んだものであるが,中国や古代朝鮮の一字姓にくらべ,はるかに多様で複雑であるのみでなく,次のような特色がみられる。姓は天皇から与えられ,姓を有することは天皇の臣民であることを意味した。律令制下の身分は良民と賤民に大別され,姓を有することは良民である標識とされた。姓は父系相続され,いったん付与された姓は国家の許可なく変更することは許されなかった。10世紀以降,律令国家の解体につれて戸籍が作られなくなり,律令的身分制度が崩れてくると,やがて姓の制度も消滅して人民の多くはもとの無姓にかえったのである。
執筆者:


姓 (せい)

名字の地(みょうじのち)

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百科事典マイペディア 「姓」の意味・わかりやすい解説

姓【かばね】

日本古代の諸氏(うじ)の家格を示す称号。葛城(かつらぎ)・和珥(わに)・平群(へぐり)・蘇我(そが)・阿倍・紀などの氏は(おみ),大伴(おおとも)・物部(もののべ)・中臣(なかとみ)などの氏は(むらじ)というように,氏ごとに世襲された。種類は臣・連のほか,君(公)(きみ)・直(あたい)・首(おびと)・造(みやつこ)・史(ふひと)など,古くは多様であり,国造(くにのみやつこ)・県主(あがたぬし)などの官職も世襲されたために姓の一種とみられたが,初め諸氏が自称していたのを国家権力が次第に統制するようになり,684年に至って八色(やくさ)の姓に整理された。また支配的地位の表示という姓の機能も,官人組織の発達に伴う位階制度の充実によって次第に失われたが,奈良・平安時代でもなお伝統的な家柄の表示として公的に使用された。語源は株根・株名で血統の意とする説もあるが未詳。朝鮮には新羅(しらぎ)の骨品(こっぴん)制のように姓に類似する制度があったが,中国にはない。→氏姓(しせい)制度位階勲等
→関連項目朝臣大臣西文氏爵位菅原氏宿禰伴造東漢氏

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「姓」の解説


かばね

古代の政治的称号。今日では氏の名,または氏の名に朝臣(あそん)などを付したものをセイ(姓)というのに対し,朝臣・連(むらじ)など氏の名の下に付す称号をとくにカバネとよぶ。古代のカバネは臣(おみ)・連・君(きみ)・造(みやつこ)・直(あたい)など三十数種に及び,それらには皇別と神別の出自(氏族系譜)による区別と,職掌など氏の性格による区別がある。しかし氏族系譜は後世に造作された可能性が高く,実際は畿内の有力豪族・伴造氏族,地方の有力豪族など各氏族の性格の違いによってカバネが与えられたものと思われる。カバネはもともと人名に付した尊称から発生したもので,5~6世紀の伴造制度や部制度の成立が,氏姓制度の一環としてのカバネに影響を与えたと考えられる。また670年(天智9)の庚午年籍(こうごねんじゃく)で全国の人民の氏姓を定めたこと,683年(天武12)から始まる天武朝の族姓改革でカバネを再編成したこと(八色の姓(やくさのかばね))によって,カバネ制は確定した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「姓」の意味・わかりやすい解説


かばね

古代日本における氏族の称号。 (おみ) , (むらじ) ,君 (きみ) , (おびと) など三十種近くに上る。大和朝廷の国家統一が進むにつれて,姓は朝廷から諸豪族に授けられ,改められて次第に氏の尊卑を表わすようになった。皇別諸氏には臣,神別諸氏には連が与えられ,その最有力者の大臣,大連が朝政をとった。天武 13 (684) 年,従来の姓を真人 (まひと) ,朝臣 (あそみ) ,宿禰 (すくね) ,忌寸 (いみき) ,道師 (みちのし) ,臣,連,稲置 (いなぎ) の8種に整理統合し,朝廷から与えて家格を秩序づけた (→八色の姓 ) 。平安時代になると,皇子の賜姓に朝臣が,遠い皇胤には真人が与えられ,その順位も転倒するなど,姓本来の意義は薄れた。


せい
surname

家族,一族に固有の名。個人名に比べて発生は新しく,また,世界中どこにでもあるという習慣でもない。日本では明治維新で全国民が姓をもつようになった。西洋でも,ローマを別とすると中世以後 (イギリスやドイツでは 11世紀頃から) ,姓をもつ習慣が最初は貴族階級から始り,次第に一般化した。世襲の姓ではなく本人一代限りの添え名を個人名のほかに周囲から与えられたり自分でつけたりする習慣をもつ社会も多い。添え名には本人の特徴を記述したり功績を記念したりするもの,父親の名を取るもの,居住地や職業を表わすものなどのタイプがあり,それが世襲化すると姓になる。

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旺文社世界史事典 三訂版 「姓」の解説


せい

血縁的原理にもとづく同族的集団
父系によって伝えられ,祖先の祭りを共通にする人びとの集団として,殷 (いん) 代までの社会の基本単位であった。氏 (し) は姓よりも小さい範囲の血族集団をさすと見られるが,周代に封建制度の実施に伴い,姓よりも細分化された氏が実質的な血縁団体となり,秦・漢代にかけて両者は混一し,区別のないものになった。しかし,同姓の女をめとらないという同姓不婚の原則は変わりなく固く守られた。

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旺文社日本史事典 三訂版 「姓」の解説


かばね

古代氏族の称号で,大和政権における政治的地位を示す名称
臣 (おみ) ・連 (むらじ) ・君・直 (あたい) ・首 (おびと) ・忌寸 (いみき) など30数種に分かれ,臣・連の中の有力者が大臣 (おおおみ) ・大連 (おおむらじ) として国政に参与した。684年天武天皇は八色の姓 (やくさのかばね) を定めて豪族の統制をはかった。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【名字の地】より

…したがってその一族にとって,名字の地は先祖相伝の開発所領であり,根本所領であった。平安時代,地方武士の勢力の発展に伴い,源平藤橘などの姓を有する各氏族が所領を開発,さらに氏族間で分有相伝してその地名を名字として称することが一般となった。たとえば三浦半島を領有する平姓三浦氏一族は惣領は三浦を称したが,支族はそれぞれ本拠地とした津久井,蘆名,和田,長井,佐原など半島内の所領の地名をとって津久井氏,蘆名氏,和田氏,長井氏,佐原氏などを称した。…

【氏姓制度】より

…日本古代において,中央貴族,ついで地方豪族が,国家政治上に占める地位,社会における身分の尊卑に応じて,朝廷より(うじ)の名と(かばね)をあたえられ(氏・姓(かばね)をあわせて(せい)ともいう),その特権的地位を世襲した制度。大化改新ののち,律令国家におよぶと,戸籍制によって,氏姓はかつての部民(べみん),つまり一般の公民にまで拡大され,すべての階層の国家身分を表示するものとなり,氏姓を有しないものは,天皇,皇子,諸王と奴婢のみとなった。…

【姓氏】より

…一般には,父系の血縁集団を意味するが,その具体的な内容は中国と日本では異なっているし,日本においても時代によって相違している。中国や朝鮮では同姓不婚の規制が厳しいのに対し,日本では族内婚は社会的に忌避されていない。 古代の中国では,〈姓〉字は同一の祖先に出自し,同一の祖神を信奉する血縁集団を指しており,ラテン語のgens,英語のclanにほぼ該当する語であった。…

【家族法】より

…しかしここで家族といわれるものが,両国において基本的に異なる原理の上に立つものであったことを忘れてはならない。 両国における家族の基本的な性格の違いは,中国人の考える〈姓〉の観念は日本には存在せず,逆に日本人の考える〈いえ〉の観念は中国には存在しなかったという一点に,最もよく集約されるであろう。
[姓の観念]
 中国人の〈姓〉は,父の姓が子に伝わることを不動の鉄則とする。…

【氏姓制度】より

…日本古代において,中央貴族,ついで地方豪族が,国家政治上に占める地位,社会における身分の尊卑に応じて,朝廷より(うじ)の名と(かばね)をあたえられ(氏・姓(かばね)をあわせて(せい)ともいう),その特権的地位を世襲した制度。大化改新ののち,律令国家におよぶと,戸籍制によって,氏姓はかつての部民(べみん),つまり一般の公民にまで拡大され,すべての階層の国家身分を表示するものとなり,氏姓を有しないものは,天皇,皇子,諸王と奴婢のみとなった。…

【人名】より

…人名には,個人の所属を明らかにするため氏族,家族,父親,居住地などの名が添加されるといったことがあり,また世界の各民族や地域によって,その社会・文化のあり方とかかわる多様性もみられるので,世界数地域における人名について説明する。
【日本】
 日本人の場合は,姓(苗字(みようじ))を冠し名(個人名)を付けてその人名とするので,〈姓名〉と呼ばれる。それは長い歴史を経て今日に至っているが,その著しい特色は,世界に類をみない複雑多様性である。…

【姓氏】より

…一般には,父系の血縁集団を意味するが,その具体的な内容は中国と日本では異なっているし,日本においても時代によって相違している。中国や朝鮮では同姓不婚の規制が厳しいのに対し,日本では族内婚は社会的に忌避されていない。 古代の中国では,〈姓〉字は同一の祖先に出自し,同一の祖神を信奉する血縁集団を指しており,ラテン語のgens,英語のclanにほぼ該当する語であった。…

【律令制】より

…8世紀前半の各地の籍帳による統計では,奴婢は全人口の4.1%しか存在せず,官奴婢や中央の貴族・寺院の奴婢を加えてもその割合は10%にも満たなかったと推測される。 以上のような賤民と良民とを区別する重要な標式は(せい)の有無である。律令制下において姓をもたないのは,身分秩序の形成者,姓の賜与者としての天皇(および皇族)と賤民だけであり,すべての良民は天皇への人格的な隷属関係の象徴である姓を付与されていた(ただし僧尼籍にあるものは,その限りにおいて俗人としての姓をもたない)。…

※「姓」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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