家庭医学館 「子どもの滲出性中耳炎」の解説
こどものしんしゅつせいちゅうじえん【子どもの滲出性中耳炎 Otitis Media with Effusion】
中耳に液体がたまり、耳の聞こえが悪くなる病気です。
液体は、水のようにサラサラしたものから、ニカワ状の粘(ねば)りけのあるものまでさまざまです。子どもは、ニカワ状の液がたまることが多く、聴力の低下も強く現われます。
子どもに多い病気で、成長につれておこらなくなることが多いものです。
[症状]
難聴(なんちょう)がおもで、ふつう、耳の痛みはありません。このため、見逃されて、健康診査などで初めて発見されることもあります。
子どもの耳の聞こえにたえず注意しておくことが必要です。難聴を見逃していると、乳幼児は、ことばの遅れがおこることがあります。
[原因]
急性中耳炎に引きつづいておこることがあります。
耳管(じかん)(耳と鼻の奥の上咽頭(じょういんとう)を結ぶ管)の機能が十分でないためにおこると考えられていますが、確かな原因は、まだ明らかではありません。
鼻すすりが、病気に悪影響をおよぼします。
[検査と診断]
診察すると、鼓膜が内側に落ち込み、ときに空気の泡や琥珀(こはく)色の液体が鼓膜を通してみられます。
聴力検査を行なうと、音の伝わりに障害のある伝音性難聴(でんおんせいなんちょう)を示します。
鼓膜の動きを調べる検査(ティンパノメトリー)を行なうと異常が出ます。鼓膜の落ち込みが激しいときは、真珠腫(しんじゅしゅ)になっている疑いがあるので、CT検査が行なわれます。
[治療]
鼓膜に穴を開けたり、切開をして中耳の液を出します。鼓膜に穴が開いても、中耳の液がなくなれば聞こえがよくなります。
再発をくり返す場合は、鼓膜にチューブを立てて、穴が閉じないようにします。この治療を行なうと、液が中耳にたまらなくなり、2年ほどで耳管のはたらきが改善され、チューブが不要になることが多いものです。通気(つうき)(鼻から耳管経由で空気を中耳に入れる)も効果があります。
特効薬はないのですが、マクロライド系の抗生物質、粘液溶解剤(ねんえきようかいざい)、漢方薬を内服します。アデノイドが悪影響をおよぼしているときは、アデノイドを切除します。アレルギー性鼻炎のある場合は、その治療が必要になります。
耳管の機能がよくなる小学生の中高学年まで、気長な治療が必要なこともあります。
[日常生活の注意]
鼻すすりを避けましょう。滲出性中耳炎は再発しやすく、完治まで時間のかかる病気なので、耳鼻咽喉科(じびいんこうか)での定期的な診察が必要です。
テレビの音を大きくしないかなど、たえず子どもの耳の聞こえに注意しましょう。
また、水泳は、チューブを入れている子どもでも、水泳用の耳せんをし、その上から耳までおおうビニールの帽子をかぶって、耳せんが落ちないようにすれば可能です。ただし、耳だれが出ている間は、水泳はできません。