日本大百科全書(ニッポニカ) 「季節性うつ病」の意味・わかりやすい解説
季節性うつ病
きせつせいうつびょう
seasonal depression
特定の季節にのみ発症する情動疾患である季節性感情障害(SAD:seasonal affective disorder)のうち、うつ症状を呈するもの。その大半は冬季に症状が出るため冬季うつ病ともいわれる。
発症サイクルは10月から12月ころにかけてうつ症状が現れ、春を迎える3月ころ自然にすべての症状から回復する。これを毎年繰り返すことが多い。冬季の日照時間の減少により、脳内のメラトニン(生腺刺激ホルモン放出を抑制する)の分泌が抑制されることで1日の体のリズムが乱れ、気分や行動に異常が生じたり、神経伝達物質のセロトニンが減って脳の活動が低下することが原因と考えられている。そのため、冬季に日照時間が短くなる北海道や東北地方の日本海側や、北陸地方に患者が多くみられる。また女性に多く発症する。特徴的な自覚症状は、十分な睡眠をとっていても日中に眠気を感じる、意欲が低下して外出がおっくうになる、食欲が旺盛になり、とくに甘いものや炭水化物を欲する、体重が増加するなどである。しかし、通常のうつ病に比べ症状は比較的軽く、春がくれば症状はなくなるため、治療を受けずに我慢している人も多い。
治療は日光浴や人工光照射などの光療法が効果的である。3000~1万ルクス程度の強い光を照射することでセロトニンの分泌を促進し、脳を活性化させて1日の体のリズムを調整する。これに薬物療法も併用する。家庭においても毎日、起床時に照明器具を利用して強い光を1時間程度浴びる習慣をつけることで効果が期待できる。加えてビタミンB12を多く含む食品の摂取や1時間以上の散歩なども体のリズムの調整に役だつとされている。
[編集部]