メラトニン

デジタル大辞泉 「メラトニン」の意味・読み・例文・類語

メラトニン(melatonin)

松果体しょうかたいから分泌されるホルモンメラニン色素細胞の収縮生殖腺の発達抑制作用がある。また、人においては通常夜に分泌量が多くなり、睡眠を促進する作用があると考えられている。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「メラトニン」の解説

メラトニン
メラトニン
melatonin

N-Acetyl-5-methoxytryptamine.C13H16N2O2(232.28).ほ乳類の松果体で,トリプトファンからセロトニンを経て合成されるホルモン.融点116~118 ℃.淡黄色の板状晶.エタノールに可溶.ほ乳類では生殖器発育を抑える作用があり,思春期になると血中濃度が急激に低下する.このほか,視交さ上核に作用し,生物時計(サーカディアンリズム)を調節していると考えられることから,時差ぼけの薬として市販されている.両生類ではメラニン細胞に作用し,メラニン顆粒凝集を起こし,体色を薄くする.[CAS 73-31-4][別用語参照]メラノトロピン

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「メラトニン」の意味・わかりやすい解説

メラトニン

化学式はC13H16N2O2哺乳(ほにゅう)類の松果体に含まれる生理活性アミンで,生殖腺の機能を抑制する作用がある。アミノ酸一種トリプトファンからセロトニンなどを経て生合成される。松果体での濃度が昼夜で変化するため,サーカディアン・リズム生物時計)による調節に関わるホルモンの一種として,視床下部などに作用すると考えられている。
→関連項目スマートドラッグ電磁波障害

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

家庭医学館 「メラトニン」の解説

めらとにん【メラトニン】

 メラトニンは脳の松果体(しょうかたい)というところから分泌(ぶんぴつ)されるホルモンです。日中は光刺激により分泌が抑制され、夜間になるとさかんに分泌され、明暗周期に敏感に反応した日内変動(にちないへんどう)、概日(がいにち)リズムを示します。
 メラトニンには、睡眠促進作用、外界の24時間周期に体内時計を同調させる作用があると考えられ、時差症候群(じさしょうこうぐん)、睡眠相後退症候群(すいみんそうこうたいしょうこうぐん)、非24時間睡眠(ひにじゅうよじかんすいみん)‐覚醒症候群(かくせいしょうこうぐん)などの概日リズム睡眠障害の治療に用いられます。しかし、日本ではまだ睡眠薬、睡眠導入薬として認知されていません。

出典 小学館家庭医学館について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「メラトニン」の意味・わかりやすい解説

メラトニン
melatonin

松果体から分泌されるホルモン。下等脊椎動物において,下垂体中葉から分泌されるメラニン細胞刺激ホルモンの作用に拮抗して,メラニン細胞 (色素細胞) 内の黒色色素胞を収縮させる (皮膚の色を薄くする) 働きがある。また,性腺機能を抑制する作用を示すという学説も一部にあるが,いずれもヒトにおける作用は不明である。メラトニンはトリプトファンからセロトニンを経て合成される。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

栄養・生化学辞典 「メラトニン」の解説

メラトニン

 C13H16N2O2 (mw232.28).

 松果体から分泌されるホルモン.発情遅延,性腺発育抑制効果などがあるほか,概日リズムを制御しているとされる.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のメラトニンの言及

【体】より

…視交叉上核から出た神経繊維はいくつかのニューロン連鎖ののち交感神経の上頸神経節に達し,その節後繊維は松果体に分布する。これら交感神経は夜間興奮して多量のノルアドレナリンを放出するが,それによって松果体細胞のメラトニン代謝に関与する酵素の一つ,N‐アセチルトランスフェラーゼの生成が促進される結果,松果体は夜間多量のメラトニンを産生放出する。メラトニンは性腺の発達に対して抑制的に働くといわれる。…

【間脳】より

…また手綱核は,大脳基底核の一部から運動性の情報も受けていることが最近判明し,辺縁系におけるさまざまな行動の〈動機〉と実際の行動調節の間脳における接点部としての意味をもっている。松果体は脳の中心部に存在する一種の内分泌腺で,多くのメラトニンを含んでいる。この部ではメラトニンの合成と分泌が日周期性に調節され,性腺ホルモンの産生を抑えているといわれるが,そのメカニズムの詳しいことは不明である。…

【松果体】より

…昼夜による明暗の長さや,季節による日照時間の変化などの光周期をなんらかの形で感知し,生殖活動の日周性や年周性そのほか種々の生体リズムの形成に役だつホルモンを作るといわれる。とくに生殖について松果体ホルモン(メラトニンmelatonin)の濃度が高いときは生殖細胞の発達を抑えるが,低い場合には逆に促進する働きをする。メラトニンは色素胞中の黒色素顆粒(かりゆう)を凝集させ,体色を白っぽくする作用もある。…

【セロトニン】より

…またレセルピンreserpineは結合性のセロトニンを遊離させ分解を促進するため精神安定作用をもつ。上生体(松果腺)には,水酸基の部分にメチル化を受けた脂溶性のメラトニンmelatoninが存在する。【大隅 良典】。…

【体色変化】より

…松果体が光受容体として働く場合には背地効果は生じない。この器官は黒色素胞内の顆粒を凝集させる作用をもつメラトニンmelatonineを産生,分泌する内分泌器官でもある。外界が明るいときは,このホルモンの分泌は抑制されているが,暗所では分泌されるので体色が明化する。…

【内分泌腺】より

…系統発生学的に考えて,精巣,卵巣は性細胞を形成するのが元来の機能であり,性ホルモンの分泌機能は進化の途上獲得されたものであろう。(10)松果腺 哺乳類,鳥類の松果体はメラトニンmelatonineを分泌し,腺構造をもつので松果腺とも呼ばれるが,爬虫類,両生類,魚類ではまだ光感覚器官で内分泌腺ではなく,松果体と呼ぶ。メクラウナギ類では存在しないといわれる。…

【メラニン】より

…メラニンの細胞内における存在様式はさまざまであるが,黒色素胞は,体色変化に関与し,メラノソームの凝集,拡散を調節することにより体色の暗化,明化が行われる。この過程は,黒色素胞刺激ホルモンmelanocyte‐stimulating hormone,メラトニンmelatoninなどのホルモンと色素胞神経によって支配されていることが知られている。メラニンは生体に過剰の光線に対する防御機構として役立っていると考えられるが,脳,副腎髄質などにおける役割は不明である。…

※「メラトニン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android