定陵(読み)ていりょう(その他表記)Dìng líng

改訂新版 世界大百科事典 「定陵」の意味・わかりやすい解説

定陵 (ていりょう)
Dìng líng

中国,明の14代皇帝万暦帝陵墓。北京市北郊の天寿山のふもとの小盆地に分布する明十三陵の一つ。1583年(万暦11)から建設を開始し,6年の年月と銀800万両を費やしたという。万暦帝のほか孝端皇后,孝靖皇后を合葬する。陵域神道しんどう),稜恩門,稜恩殿(焼失),明楼,墳丘からなり,明楼と墳丘以外はしばしば破壊された。墳丘は円墳で,地下に設けられた墓室(玄宮)が1956-58年に発掘されている。塼積み墓道,石積み墓道の奥に金剛墻とよばれる大きな壁があり,鉄扉によってここから墓室の前室につながる。前室(隧道券)の奥に墓門があり,その奥に縦長の前殿・中殿が一直線にならび,横長の後殿につながる。中殿の左右に廊下があり,それぞれ縦長の左右配殿につながる。後殿は万暦帝と2皇后の棺(梓宮)を置く部屋で,多くの朱漆塗の木箱にそれぞれの副葬品をおさめていた。墓室の総面積は1195m2。定陵は盗掘をうけておらず,明代皇帝の葬制をよく伝えており,おびただしい副葬品は当時のすぐれた工芸技術を示す貴重な資料である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「定陵」の意味・わかりやすい解説

定陵
ていりょう
Ding-ling

中国,明の第 14代神宗万暦帝の陵。北京市北郊の明十三陵の一つである。万暦 12 (1584) 年から6年をかけて営造された。 1956~58年にわたって発掘され,地下 27mの深さにある墓の内容が明らかにされた。墓室は前中後左右の5つの室から成り,総面積は 1195m2にも及ぶ巨大なもので,まさに地下宮殿と呼ぶにふさわしい。後殿には3個の木棺が置かれ,宝冠をはじめとして多数の副葬品が発見された。

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百科事典マイペディア 「定陵」の意味・わかりやすい解説

定陵【ていりょう】

中国,河北省昌平県小峪山の東にある朝第14代皇帝神宗(万暦帝)〔1563-1620〕の陵。1956年―1958年に発掘され,壮大なことと,副葬品の絢爛(けんらん)豪華なことで注目を集めた。墓室は5室の広大な石築殿堂を連結して作られ,入口から奥壁まで87m。副葬品は,鳳冠(ほうかん),金冠衣服帯鉤(たいこう),金銀容器,玉製容器,漆器銅鏡武器など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「定陵」の意味・わかりやすい解説

定陵
ていりょう

十三陵

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世界大百科事典(旧版)内の定陵の言及

【明十三陵】より

…中国,北京市の昌平県にある明の13帝の陵墓。天寿山下にあり長陵(成祖),献陵(仁宗),景陵(宣宗),裕陵(英宗),茂陵(憲宗),泰陵(孝宗),康陵(武宗),永陵(世宗),昭陵(穆宗),定陵(神宗),慶陵(光宗),徳陵(熹宗),思陵(思宗)の13陵をさす。総面積40km2。…

【陵墓】より

…この地は引き続き明朝陵墓が集中し,明十三陵とよばれる。そのうち万暦帝の定陵が発掘され,地下宮殿としてその巨大な墓室と豪華な副葬品が公開されている。清は明の陵制を引き継いだ(清陵)。…

※「定陵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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