室内園芸(読み)しつないえんげい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「室内園芸」の意味・わかりやすい解説

室内園芸
しつないえんげい

家屋内で植物を栽培・管理することをいい、家庭園芸の一種に数えられる。普及した背景には、家屋の洋風化とともにガラスサッシが多用され、屋内に多量の光線が取り入れられるようになったこと、室内暖房が発達、完備したことなどがあげられる。従来、室内では葉の色や形を楽しむ観葉植物が主流であったが、栽培の工夫改善から導入植物もさらに進んで、草花類、吊(つ)り鉢など多彩となってきた。栽培方法も、以前はクロッカスヒヤシンスなど小球根類の水栽培程度であったが、部屋の中に飾ることのできるミニ温室の開発や、人工照明、加温・加湿器等の発達によって急速に進歩し、栽培種の範囲も広がった。用土の改善も進み、ピートモスパーライトからハイドロカルチャーの人工礫(れき)にまで及んでいる。とくに普及した花類として、セントポーリア、ミニカトレアなどのラン類、熱帯性小花木類があげられる。これらは、大きな観葉植物と異なって、多量に栽培することができ、移植から開花、株分け等の増殖まで一貫して楽しめるという利点がある。また室内のインテリア的役割も兼ね備えており、グリーンライフ、インドアプランツ等の用語も普及しつつある。

 新しい室内園芸の楽しみとして、緑色・黄色野菜のもやし栽培、ガラス容器の中で栽培するテラリウムがある。とくにテラリウムは、容器内で植物体が水や空気を自給自足しながら生きるので、植物の種類や用土の選択が問題となる。

[堀 保男]

室内園芸の留意点

室内で長期間管理した植物は、弱光線(間接光線)や人工照明に慣らされているので、夏の強光線、冬の寒風、急激な温度変化にあうと障害をおこしやすい。

[堀 保男]

用土

植物の種類と植物特有の根の太さによって用土差がある。粒状土、ミズゴケ、ピートモス、パーライト、小礫、人工焼土(大小粒)などを使い分ける。

[堀 保男]

光線

太陽光線はできるだけ午前中に当て、とくに根づまり(鉢の中いっぱいに根がはびこること)したものは強い光線下に置かないようにする。人工光線で育ったセントポーリアや、密閉された中のテラリウムには注意する。

[堀 保男]

温度と湿度

暖房による乾燥などで葉が傷みやすいので、葉面に霧を吹きかけたり、葉につくほこりなどを取り除きながら、湿度の補給のために葉面をぬれた布で週1~2回ふいてやるとよい。夏は外気に直接触れさせてもよい。

[堀 保男]

灌水

灌水(かんすい)量は植物の種類と室温にも関連するが、低温期に用土を過湿にしないことが肝要で、用土の表面がすこし白く乾燥したころに灌水する。

[堀 保男]

肥料

悪臭のないものがよく、油かすその他の有機質肥料は発酵済みのものを使用する。マグアンプ、ハイポネックス、化成肥料などの無機質肥料を上手に使う方法もある。

[堀 保男]

手入れ

鉢物では、土が固まったり根づまり状態になると、下葉が脱落したり、肥料吸収が不良となり、成長も衰えるので注意する。植え替えは春から初夏にかけて行うが、成長旺盛(おうせい)なものは毎年、普通は2年目に行う。観葉植物の育ちすぎたもの、たとえばゴム類、ドラセナ類、ツユクサ類は、取木か挿木次代の苗作りをするとよい。肥料管理をよくすることで病虫害もある程度回避できる。

[堀 保男]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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