テラリウム(読み)てらりうむ(英語表記)terrarium

翻訳|terrarium

日本大百科全書(ニッポニカ) 「テラリウム」の意味・わかりやすい解説

テラリウム
てらりうむ
terrarium

陸生の小動物を飼育する容器を意味するが、園芸用語としては、密閉されたガラス器、または小口のガラス瓶などの中で小形の植物を栽培することをいう。主体容器が瓶類であることからボトルガーデンとよぶこともある。容器の中に数種類の植物を植え付けて観賞するもので、室内装飾も兼ねた園芸といえよう。

 容器内に植え込んだ植物は、外部からの光線以外は水、肥料などがほとんど遮断されたなかで生育する。すなわち、室内の弱光線を受けて光合成を行って呼吸し、養分は水分とともに用土から吸収するが、水は蒸発してまた土に帰るので、これらの循環作用によってほとんど自給自足できるのである。したがって、一般の鉢物のように毎日の灌水(かんすい)、生育につれての肥料、病害虫などの気配りが少なくてすむが、置き場所や採光には注意する。直射日光の当たる所や暗い場所に置くと、内部が高温になって枯死したり、光合成の不足から葉の黄化をきたすことがある。

[堀 保男]

歴史

イギリスの医師で動植物の野外研究家でもあったウォードNathaniel Bagshow Ward(1791―1868)が、瓶の中でシダや草、ガの蛹(さなぎ)などをいっしょに飼育していて、これらの植物が新鮮な水や空気のない封をした中で3年以上も生存していることを発見した。1833年、彼はこの原理をオーストラリア行きの船上プリムラを用いて実験し、4か月以上たってシドニーに着いたときには、花が咲いていたという。当時は発案者の名をとってウォーディアン・ケースとよばれた。幕末に来日したロバート・フォーチンは、この原理を大型の箱に応用して中国からイギリスヘ植物を運んだ。現在のテラリウムという呼び方が現れたのは、容器に装飾や細工を施して利用されるようになった1900年代の初めころと思われる。日本に紹介されたのは、イギリスから園芸用具が多量に入ってきた1910年(明治43)前後で、本格的普及をみるのは65年(昭和40)ころからである。

[堀 保男]

栽培方法

容器(瓶)は、植物の観賞と室内装飾の面から考えると、着色したものより無色のものがよい。植え込み作業上からは口の極度に小さいものは扱いにくい。

 対象となる植物は、全体に小形で葉が美しく、しかも多湿・高温に耐えるものがよい。生育が旺盛(おうせい)なものは適さない。具体的には、アイビー、アジアンタムおよび小形シダ類、アスパラガス・プルモーサス、エピスシア、シンゴニウム、テーブルヤシ、ドラセナ類、フィロデンドロン、フィカス・プミラ、ペペロミア類、ピレア類などで、病害虫の付着していないものを用いる。

 培養土は赤玉土(小)、ピートモス、バーミキュライト、川砂などを用いる。

 まず、植物をそろえて植え付け順を決め、スプーン、筒などで用土を入れ、長いピンセットを用いて植え付ける。ピンセットの先にガーゼをつけて容器内の汚れをとる。用土に水分が多いときはスポイトで吸い取る。最後に容器を密閉する。

[堀 保男]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「テラリウム」の意味・わかりやすい解説

テラリウム
terrarium

透明な容器に植物を寄せ植えして,インテリア装飾として観賞栽培する方法。専用のガラスケースもあるが金魚鉢やキャンディポットを利用して,室内でミニガーデンを楽しむことができる。半密閉状態の容器内では,土や葉の表面から水分が蒸発して飽和状態になると水滴になって用土に吸収され,再び植物の根から吸い上げられる循環が繰り返され,一定の湿度が保たれている。そのため,湿気に強く,弱光にも耐えられ,比較的生長の遅い小型の植物が適している。熱帯雨林を再現したものでは,アイビー,アジアンタム,シダ,ポトス,ヤシなどの観葉植物,乾燥地を再現したものでは,サボテンなど多肉植物を使うことが多い。イギリスの医師で園芸家のナタニエル・ウォード (1791~1886) が考案したガラス製の植物輸送容器「ウォードの箱」 Wardian Caseが原形といわれる。

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