日本大百科全書(ニッポニカ) 「セントポーリア」の意味・わかりやすい解説
セントポーリア
せんとぽーりあ
[学] Saintpaulia
イワタバコ科(APG分類:イワタバコ科)セントポーリア属の総称。熱帯アフリカ東部原産の多年草で、原種は約20種あり、発育形態によって短茎種と長茎種に分けられる。ほとんどの種が青紫色で、スミレに似た5弁花をつけるので、アフリカスミレAfrican violetともよばれる。品種改良の歴史は100年足らずであるが、花形、花色、葉形、葉色などは変化に富み、多くの品種がある。これらにはおもにアメリカで改良された趣味家用品種と、ドイツを中心に育成された生産者用品種とがある。暑さには弱いが室内で栽培できることから、生活環境の改善に伴って普及した植物といえる。
栽培には温度18~24℃、湿度70%、光量約1万ルクスの温暖な環境が適しており、5℃以下の低温や直射日光のような強光に長時間当てると枯死する。用土はバーミキュライトとピートモスを半々に混ぜたものなどを用い、3~5号鉢に軽く植える。灌水(かんすい)はくみ置き水を用い、鉢土の表面が乾いたら与える程度とする。肥料は液肥を成長期に月2回の割合で施す。縞花(しまばな)品種以外は葉挿しによって容易に増殖できる。
[唐澤耕司 2021年7月16日]
文化史
セントポーリア属は18種知られるが、原産地はタンザニアとケニアの一部に限定され、その発見は遅かった。1892年(1850年説もある)当時ドイツ領東アフリカのウサンバラ地方の長官ウォルター・フォン・セントポール男爵Walter von Saint-Paul(1860―1910)が、タンザニア北部のタンガ海岸で最初の種を発見、ドイツに送った標本からヘレンハウゼン王室植物園長のヘルマン・ウェンドランドHermann Wendland(1825―1903)が発見者を記念した属をたて、セントポーリア・イオナンタSaintpaulia ionantha H.Wendl.と命名した。イオナンタはスミレのようなという意味。1930年にアメリカのアーマコスト・アンド・ロイストン社がイオナンタとコンフーサS. confusa B.L.Burttの雑種ブルーボーイを作出、その子孫から新品種が続々誕生し、ブームの礎(いしずえ)となった。
[湯浅浩史 2021年7月16日]