日本大百科全書(ニッポニカ) 「宮地伝三郎」の意味・わかりやすい解説
宮地伝三郎
みやじでんざぶろう
(1901―1988)
動物生態学者。広島県に生まれる。1925年(大正14)東京帝国大学理学部卒業。京都帝国大学理学部臨湖実験所、同瀬戸臨海実験所、同動物学教室に在職し、1964年(昭和39)停年退職。初期には日本および近隣地域の湖沼・海洋の底生動物の群集生態・生物地理学的研究に従事し、この分野に一紀元を画した。また、第二次世界大戦後は海洋の藻場群集、アユを中心とする河川生物の研究、ニホンザルの研究などを組織指導し、大学を超えた共同研究を進めて生態学を各方面で大きく発展させ、日本の動物相は実は貧弱であるとする説を出して群集地理学の基礎を築き、自然哲学の必要性と応用への関心を説いて多くの後進を指導した。さらに京都大学自然人類学講座、同霊長類研究所、財団法人日本モンキーセンターなどをつくって霊長類学・人類学の発展に尽くした功績も大きい。200編以上の専門論文・著書のほか、「アユの話」「サルの話」などを含む『宮地伝三郎動物記』『生物学の視座から』『俳風動物記』など、一般向きの著作もある。
[川那部浩哉]
『『宮地伝三郎動物記』全5巻(1972~1973・筑摩書房)』▽『『生物学の視座から』(1980・人文書院)』▽『『俳風動物記』(岩波新書)』