家族制(読み)かぞくせい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「家族制」の意味・わかりやすい解説

家族制
かぞくせい

家族制は、動物の個体群における社会的な組織形態の一つであるが、家族とは通常、人類の家族をさす。動物には人類の家族と同質な社会構成はないが、類似のものはさまざまな系統の多くの種にみられ、これを生物的家族とよび区別することがある。

 種としてみた場合、その社会が個体の家族的結合によって組織化されておれば、家族制ということができる。家族制は親による子の保護によって進化し、保護の程度、系統や生活様式、雌雄の関係などにより、さまざまな発達の段階や変異がある。家族形成にかかわる動物の婚姻システムは、一夫一妻、一夫多妻、一妻多夫に分けられている。一妻多夫は、タマシギ類、ヒレアシシギシギダチョウなどの鳥類でみつかっているものの、まれである。鳥類では一夫一妻が、哺乳(ほにゅう)類では一夫多妻が一般的である。節足動物においても、著しく家族制が進化している一夫一妻のレオミュールワラジムシのようなものがいる。しかし、雌雄の結び付きが持続する動物の間では一夫多妻が多い。この理由は、雌と雄の間における子1個体に対する投資量の違いから示される。

 たとえば哺乳類の場合、雌は胎盤で子を育て、出産後も哺乳し、子の保護や養育に相当なエネルギーと時間を投資するため、そう多くの子孫一生の間に残すことはできないが、雄はそのような投資をせずにすむ。そこで、雌を次々にかえて交尾するほうが進化上有利となる。鳥類では抱卵を行う必要があるために、雄が雌の援助をせず次々と相手をかえることは子の生存率低下をきたし、遺伝的適応度を下げることになる。ヒトでは、雌だけで子の養育をすることが不可能なほどの投資を要し、雄の分担が不可欠となり、一夫一妻的傾向が進化し、また雌の発情期消失はそれを補強したものと考えられる。

[桜井道夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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