簿記の種類の一つ。中世イタリアで商人が債権債務の記録を行った方法が起源とされている。世界最古の複式簿記の書物として、1494年イタリアの数学者ルカ・パチオーリが著した『ズンマ』Summa de arithmetica, geometria, proportioni et proportionalita(『算数、幾何、比および比例全書』)がある。
複式簿記では、すべての取引を、資産、負債、資本、収益、費用という五つの要素からなる勘定に記録を行うが、その場合、ある勘定の借方と他の勘定の貸方に同じ金額で記入する貸借複記の原則が貫かれる。このことにより、複式簿記では財産計算と損益計算の両者が行われることになり、期末の資産、負債、資本、収益、費用の残高を集計した残高試算表を、資産、負債、資本の要素に属する勘定と収益、費用の要素に属する勘定に二分することで、実質的には貸借対照表と損益計算書が導かれることになる。
[万代勝信]
『大野巧一・和田聡著『複式簿記のしくみ』(2008・関東学院大学出版会、丸善発売)』▽『橋本寿哉著『中世イタリア複式簿記生成史』(2009・白桃書房)』▽『百瀬房徳著『体系複式簿記』改訂版(2009・森山書店)』
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[会計の技術]
会計は一般に簿記という記録・計算・総括の技術を用いて実施される。簿記は,これを基礎づける原理の相違により複式簿記と単式簿記とに分類される。前者は,勘定,仕訳記入,貸借平均の原理等複式簿記原理に基づく500年の古い伝統をもつ高度の記録・計算技術である。…
…(a)簿記は,企業の経営活動すなわち諸取引についての記帳,計算および決算を通じて貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を作成する記録,計算,総括の技術である。企業について行われる簿記は,勘定,仕訳,貸借平均の原理等に基礎づけられる複式簿記として実施され,企業の公表する財務諸表を積極的,前向きに作成する点で会計監査に対比される。簿記論は,このような複式簿記の原理,簿記組織等を研究の対象としている。…
…朝鮮,李朝時代に開城(松都)の商人が使用した簿記。近代的な複式簿記の原理に通じるシステムをもち,ルネサンス期の北イタリア都市におけるその形成とほぼ同じころから,独自に考案され発展したものである。取引を発生順に記録する〈日記帳〉のほか,債権・債務の決済関係を記入する〈捧次秩〉〈給次秩〉,商品の購入・売却を記入する〈買得秩〉〈放入秩〉という四つの元帳があり,決済関係については取引先別に,売買については項目別に勘定口座が設けられていた。…
…摂津国伊丹出身で近世初頭に大坂に出て,酒造,酒・米の海運,大名貸,両替業,新田開発を行って,長者番付の筆頭にあげられるような富を築いた。1670年(寛文10)から残されている〈算用帳〉は現存する日本最古の複式簿記帳であり,同家の合理的な経営管理をしのばせる。同家が成功した背景には,戦乱が治まり,江戸開府があり,経済先進地である畿内から多くの商品が江戸へ運送・販売される機構が確立されつつあったことがある。…
…帳簿組織上,帳簿は主要簿と補助簿とに分類される。
[主要簿]
主要簿とは会計の具体的実践用具である複式簿記の機構上不可欠の帳簿をいう。複式簿記では仕訳帳によって取引発生順の記録を完成し,元帳記入の基礎資料とし,元帳においては勘定科目別の増減変動記録を行い,内部管理上の資料および財務諸表作成の基礎資料を完成する。…
…16世紀イタリアのG.カルダーノ,N.タルターリア,R.ボンベリらの数学研究の出発点となった点で特筆される。この書の1章は〈ベネチア方式〉,つまり〈複式簿記〉を刊行物として初めて公表したものであった。イタリア語で書かれていたためこの書は広く普及した。…
… 簿記は,人間の記憶の限界を克服し,自己の支配する財産の保全・管理を遂行し,また組織の資金提供者に対する受託会計責任fiduciary accountabilityを果たすべく長年にわたって累積されてきた経済計算に関する知識体系である。
[複式簿記と単式簿記]
簿記は経済価値の流れ(取引)の記入の仕方によって複式簿記double entry bookkeepingと単式簿記single entry bookkeepingとに分けられる。前者は,取引を財産とその財産の調達の源泉の両面からとらえて複式記入し,それらを一定時点で総括する組織的簿記法で,貸借平均の原理に基づいて企業などの財産状態を正確につかみやすいため現代ではほとんどの企業がこの方式によっている(図)。…
※「複式簿記」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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