食の医学館 の解説
ねたきりにならないためのななつのほうさく【「寝たきり」にならないための7つの方策】
高齢者が「寝たきり」になってしまう原因はさまざまですが、とくに多いのが脳卒中(のうそっちゅう)と骨折です。実際、この2つで、寝たきりの原因の約半数を占めているほどです。
脳卒中は、脳内の血管が裂けて出血したり、あるいは血管がつまってしまったために、脳神経が損傷を受ける病気です。これにより、手足がまひしたり、言葉が話せなくなるなどの障害が残ったときに、ショックで意欲が失われ、寝たきりになるケースが典型例です。
また、骨折の場合、痛みのために体を動かすのをためらううちに、筋肉や関節がかたまって起きられなくなり、寝たきりになるケースが目立ちます。
ですから、まずは脳卒中と骨折の予防につとめることが、寝たきりにならないための第一歩といえます。
《2.過度の安静は逆効果》
家族など、周囲の人の対応も鍵を握っています。本人にはそれほど強い痛みや障害があるわけではないのに、いたわって世話をやきすぎると、周囲への依存心が強くなり、ずるずると寝たきりになることがあります。「寝たきりはつくられる」といわれるゆえんです。
過度の安静は、自立心を阻害(そがい)するだけでなく、筋力も低下させます。周囲も、そしてみずからも、けがや病気が回復したら、医師と相談して、できるだけ早く離床する(離床させる)ようにすることです。
《3.早期からリハビリを開始する》
たとえ脳卒中などの後遺症で障害が残ったとしても、使えなくなった部位を使おうとすることで、損傷を受けた周囲の神経が機能を補って働くようになります。早期から適切なリハビリテーションを行うことが、機能の回復を早める鍵となるので、ベッドに寝ているときから、手足を動かすなどの簡単な動作を試みてみましょう。
最初の目標は、上半身を起こした状態(座位)を保って、自分で食事ができるようにすることです。この座位が安定するということは、歩行の条件でもあるからです。
ほかにも、排泄(はいせつ)や着替えなど、日常動作でできることは、まず自分でやってみることです。
もちろん、本人が気力をもってリハビリ訓練に臨めるよう、家族が気持ちを支え、自立への環境をととのえてあげることがたいせつです。
《4.退院後も車いすや杖で歩行訓練》
入院中にリハビリ訓練を行っていても、退院してから家でなにもしないでいると、体の機能が衰えて、再び寝たきりになってしまうことがあります。家庭でも引き続きリハビリ訓練を続けることが必要です。
ベットから立ち上がることができるようになったなら、近くに置いたいすまで移動したり、車いすや杖(つえ)などを使って外にでてみましょう。
最初は近くを散歩することからはじめて、徐々に行動範囲を広げていくようにします。
慣れてきたら、積極的に外にでて、人と交流しましょう。外出意欲も向上してきます。
《5.朝は着替えて生活にメリハリを》
また、まだ自分で起き上がることができない場合でも、朝、目覚めたら、家族や介護者に手伝ってもらい、寝間着を着替えて身支度だけでもととのえるようにします。起き上がることがむずかしくなると、どうしても身だしなみに気をつかわなくなり、一日中、寝間着のままですごしがちです。そうなると気力も衰えてきて、家に閉じこもるようになります。
朝起きたら、かならず着替えて食事をとるようにし、生活にメリハリをつけることがポイントです。
《6.住まいの環境をととのえる》
本人がいくら自立への意識をもっていても、部屋と廊下の境に段差があったり、階段に手すりがついていないと、移動することがおっくうになって部屋に閉じこもりがちになってしまいます。自立への意欲をそがないよう、高齢者の立場にたって、できるところからバリアフリーに改善していきましょう。とくに障害のない高齢者でも、目の衰えや筋力の低下からころびやすくなっています。
住まいの環境をととのえることは、寝たきりの大きな原因となる骨折やけがの予防にもつながります。
《7.地域サービスを有効利用する》
リハビリ訓練のサポートを、家族や介護者だけでやろうとするのはなかなかむずかしいものです。
忙しいときなどは、ついせかしたり、無理に激励したりしてしまいがちです。
介護の悩みや問題は、ひとりで抱え込まず、機能訓練デイサービスやショートステイ、訪問介護、ホームヘルパーなどの在宅介護支援サービスを有効に活用してください。
そして、けっしてあせらず本人のペースに合わせて、自立までの過程を見守っていくことがたいせつです。