ホームヘルパー(読み)ほーむへるぱー(英語表記)home helper

翻訳|home helper

デジタル大辞泉 「ホームヘルパー」の意味・読み・例文・類語

ホーム‐ヘルパー

《〈和〉home+helper》日常生活に支障がある高齢者障害者(児)・難病患者などの家庭に派遣されて、家事や世話をする人。特に介護保険法における有資格者である訪問介護員をいう。
[類語]ヘルパー訪問介護員

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共同通信ニュース用語解説 「ホームヘルパー」の解説

ホームヘルパー

訪問介護員。在宅の高齢者や障害者を訪問して身体介護や家事支援などをする。食事や入浴、排せつ、着替え、寝返りの介助など基本的な生活を継続できるようにするほか、掃除や洗濯、買い物や調理などを援助したり、代行したりする。全国に約51万人。厚生労働省は2040年度に必要なヘルパーを約280万人としている。

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精選版 日本国語大辞典 「ホームヘルパー」の意味・読み・例文・類語

ホーム‐ヘルパー

  1. 〘 名詞 〙 ( 洋語home helper ) 日常生活に支障がある人の家庭に派遣されて家事や身の回りの世話などをする人。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホームヘルパー」の意味・わかりやすい解説

ホームヘルパー
ほーむへるぱー
home helper

加齢に伴う心身の機能の低下や減退、あるいは心身の障害などのため、日常生活を営むうえで援助を必要とする高齢者や障害者を自宅に訪ね、身体の介護や家事の援助、その他各種相談や助言などを行い、自立支援のためのサービスを提供する専門職。

 具体的には、(1)食事や排泄(はいせつ)、衣類の着脱、入浴、身体の清拭(せいしき)、洗髪、通院などの身体介護、(2)調理や衣類の洗濯・補修、住居などの掃除・整理整頓、生活必需品の買い物、関係機関との連絡などの家事援助、(3)日常生活における身体の監護や金銭の管理などさまざまな悩み事や困り事に対する相談・助言、である。

[川村匡由]

沿革

老親の介護は長年、家族や地域の住民の有志によって行われていたが、1956年(昭和31)長野県の上田市や諏訪(すわ)市などが家庭養護婦派遣事業として取り組み、家族や住民の有志にかわり、高齢者の介護が行われた。これが公的な制度としては初めてのものであった。

 しかし、高齢者の介護は年々社会問題となったため、国は1963年に老人福祉法を制定し、翌1964年、介護が必要な高齢者を特別養護老人ホームなどに入所・保護する施設福祉サービス、および老人家庭奉仕員を高齢者本人の自宅に派遣させる家庭奉仕員派遣事業などの在宅福祉サービスを中心に施行した。当時、高齢化率(65歳以上の人口が総人口に占める割合)は6.1%であったが、高齢化率はその後、年々上昇するとともに、核家族化によって家庭における老親の介護機能が低下し、寝たきり認知症、虚弱などの高齢者の介護が深刻な問題となった。

 そこで、国は1989年(平成1)、「高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴールドプラン)」を策定、当時、約3万3000人しかいなかった家庭奉仕員を10万人に増やすなど、高齢者を対象とした保健福祉の公的サービスの整備目標を掲げるとともに、その具体的な実施のため、地方公共団体に老人保健福祉計画の策定を義務づけた。同時に、従来の家庭奉仕員をホームヘルパー、また家庭奉仕員派遣事業をホームヘルプサービスに改称・改正し、事業の強化を図った。そして、在宅で介護を受けている高齢者を特別養護老人ホームなどで日帰りで介護を行うデイ・サービス事業、および同ホームなどで1週間程度預かり介護を行うショートステイ事業を実施することにし、これらを「在宅福祉三本柱」と位置づけ、従来の施設福祉サービスよりも在宅福祉サービスのほうに力を入れることになった。そのうえで、主任ヘルパーとして2~3級のホームヘルパーの連絡・調整などを行う1級、身体介護を中心としたホームヘルプサービスに従事する2級、家事援助や相談・助言などに従事する3級の、各養成研修講座を設け、その事業を地方公共団体に委託、都道府県知事が指定する研修課程を修了した者をホームヘルパーとして認定した。その後、1994年の「新ゴールドプラン」で17万人、2000年(平成12)の「ゴールドプラン21(5か年計画)」で35万人の整備目標をたてた。

 しかし、増え続ける介護サービスへの需要に供給が追いつかないうえ、少子高齢社会の到来に伴う社会保障給付費の急増のため、厚生労働省はそれまでの措置制度から社会保険方式による介護保険法を1997年に制定、2000年4月に施行させた。ホームヘルパーは同法に基づいて高齢者を介護する場合、訪問介護員とされ、介護ヘルパーともよばれる。居住する市町村の介護保険認定審査会で要介護認定を受けた高齢者を対象に、介護支援専門員(ケアマネージャー)がその区分支給限度額に応じて居宅介護サービス計画(ケアプラン)を作成するが、訪問介護員はこれに基づき、身体介護、家事援助を基本とした生活援助、およびこれらの介護の複合型の三つからなる介護を行う。訪問介護員は介護保険法施行令第3条で定める者に該当する資格で、都道府県知事が指定する研修課程などを修了し、修了証明書の交付を受けた者とされる。その後、サービスの質の向上のため、厚生労働省は介護職員のキャリアパスの実施などを行っている。キャリアパスとは、介護職員が将来的に希望をもって就業し続けられるよう、その能力や資格、経験などに応じた処遇を適切に行うため、2010年度に導入された制度であるが、所定要件を満たさない場合、介護職員処遇改善交付金の助成額が減額されることになっている。なお、介護保険法施行規則の改正により、2013年4月から訪問介護員2級養成研修は「介護職員初任者研修」へ移行、訪問介護員1級養成研修および介護職員基礎研修は「実務者研修」へと一本化されるのに対し、同3級養成研修は廃止されることになった。もっとも、これまでの資格そのものは今後も存続される。

 一方、障害者を対象にしたホームヘルプサービス事業は、2005年に制定された障害者自立支援法では居宅介護(身体介護および家事援助)とされたが、2013年4月に障害者自立支援法が障害者総合支援法に改称・改正され、新たに重度訪問介護なども追加されることになった。

[川村匡由]

現状と課題

高齢化率は2055~2060年にピークを迎えるほか、団塊の世代が後期高齢者になり要介護者の増加が予測される2030年が目前なだけに、厚生労働省はこれまで介護保険法の改正や介護報酬の引き上げ、また介護職員処遇改善交付金の支給など、さまざまな措置を講じてきた。しかし、その需要に供給が追いついていないうえ、肝心のホームヘルパーの労働条件も抜本的な改善とはなっていないのが実情である。

 現に、これまでの訪問介護員養成研修2級課程の修了者は計267万3000人で、その大半は就業を希望しているものの、労働条件が悪いなどの理由で38万5000人と全体の15.4%しか就業していない(2011年推計)。就業者の87.8%は女性であり、平均年齢は50.9歳、また、常勤職員は約8割で、平均月収は18万8975円、平均時給は1235円(平成23年度財団法人介護労働安定センター調査)にとどまっており、過酷な労働の割に低賃金で、将来の見通しがたてにくいなどの実態が、供給不足のおもな理由となっている。

 そこで、今後の課題として、人材の確保にあたっては安易に外国人労働者に頼るのではなく、賃金の大幅な引き上げや社会保険の適用、定年制の導入など社会的身分の向上や雇用の保障があげられる。そのためには、国の財源として消費税などの租税や社会保険料を便宜的に引き上げるのではなく、真の行財政改革によって抜本的な解決を図るべきではないだろうか。

[川村匡由]

『安岡厚子著『ホームヘルパーと上手につきあう』(1999・自治体研究社)』『川村匡由編著『21世紀の社会福祉1 社会保障論』第5版(2005・ミネルヴァ書房)』『川村匡由編著『21世紀の社会福祉8 介護福祉論』(2011・ミネルヴァ書房)』

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改訂新版 世界大百科事典 「ホームヘルパー」の意味・わかりやすい解説

ホームヘルパー
home helper

低所得や家族員の病気・障害,その他さまざまの理由によって,通常の日常生活を営むのに支障がある家庭を援助するサービスを行うことを任務とする人で,家庭奉仕員ともいう。19世紀の末にはすでに,老人家庭を訪問し日常生活の世話をするホームヘルプ・サービスがスイスやイギリスにおいて実施されていたが,20世紀にはいって各国で一般化した。日本では,1950年代後半に,いくつかの自治体が全国にさきがけて,在宅老人福祉事業としてホームヘルパーの派遣を開始し,62年から老人家庭奉仕員派遣事業の名称で国庫補助の対象となった。この制度は63年の老人福祉法の制定とともに確固たるものとなり,派遣対象も,当初の所得制限は徐々に緩和され,現在では低所得世帯でなくても応分の負担で派遣を受けられることになっている。また76年以降は,この事業は身体障害者および重度心身障害児(者)への家庭奉仕員派遣事業と統合された。

 その後,本格的な高齢化社会への対応として1989年末に策定された〈高齢者保健福祉推進10ヵ年戦略(ゴールドプラン)〉において,ホームヘルパーは,デーサービス,ショートステーと並ぶ在宅福祉の3本柱の一つとして位置づけられ,90年の老人福祉法など福祉関係8法の改正のなかでこれらの在宅福祉サービスが法定化されたのを機に,ホームヘルプ・サービスのありかたやホームヘルパーの養成をめぐる議論が活発化している。1987年の社会福祉士・介護福祉士法の制定により,介護の専門職としての国家資格が成立したことで,ホームヘルパーの職務には一定の水準が求められるようになってきた。

 家族が小規模化・核家族化し,女性の就労が一般化したことによって,長期自宅療養者,寝たきり老人,重度障害者などへの家族内での対応は困難の度を強めており,他方,施設への入所難ばかりでなく,地域のサービス網を活用して在宅福祉サービスを追求するという昨今の動向から,ホームヘルパーの重要性はいっそう高まっている。今後は,ホームヘルパーの質量両面の充実を図りながら,保健・福祉関係諸職種との連携や地域社会のボランティアを含めた諸活動の組織化が課題となろう。
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百科事典マイペディア 「ホームヘルパー」の意味・わかりやすい解説

ホームヘルパー

老衰や心身の障害,傷病などによって日常生活を営むに支障のある家庭に派遣され,家事・介護・助言などに当たる人。かつては家庭奉仕員といわれていた。社会福祉の立場から仕事を行うもので,家政婦と異なる。19世紀末ころから英国で発達。日本では老人福祉法身体障害者福祉法に基づき制度化されている。家族の規模が小さくなり,また女性の社会進出が広まった結果,寝たきり老人や重度障害者を家族が世話することが困難となり,在宅福祉の中心的なサービスとしてその重要性は急速に高まっている。
→関連項目在宅ケア

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世界大百科事典(旧版)内のホームヘルパーの言及

【老人福祉】より

… 老人問題をかかえている欧米諸国の多くは,老人になんらかの援助が必要となった場合には,現在老人が生活している場所を移動することなく援助を与えることを基本としている。そのため主要なサービスはホームヘルパーの派遣である。社会保障制度は国によって異なり,社会福祉のとらえ方も異なるために安易な国際比較を行うことは危険であるが,歴史的にみても欧米諸国は日本以上に住宅政策,保健衛生政策,医療・年金政策などとのかかわりが強く,そのなかで老人問題対策が展開されている点に特徴がある。…

※「ホームヘルパー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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