専用船
せんようせん
特定貨物の大量輸送に適した船体構造や荷役設備をもつ貨物船。おもな専用船は、鉱石専用船、ばら積船(ばら積貨物船、バルク・キャリアーbulk carrier)、自動車専用船、チップ専用船、セメント専用船、冷凍冷蔵運搬船、その他の専用船である。タンカーとコンテナ船を専用船に含める考え方もある。専用船は1950年代以後、原燃料資源の増大と工業製品の多様化に対応し、その大量・長距離・定型・低廉輸送の必要から発達した。専用船は、特定の貨物しか積み込めず、片荷輸送にならざるをえないが、船舶の大型化や荷役の機械化により、輸送トン数当りの費用は大幅に軽減された。世界のなかで、日本の海運会社が国内外に所有する船舶の専用船化の程度はきわめて高く、その大型化も進んでいる。
[篠原陽一]
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専用船
せんようせん
ある特定の貨物を専門に輸送する船舶。そのために最適の構造と設備をもち,一定の航路に専用的にはりつけられた形で就航する。特定貨物の積揚げと輸送に最も適した船体構造と荷役設備を装備しているものと,石炭や鉱石その他のばら積貨物船のように,揚積地に設備されるローダー,アンローダーによって荷役することが最も効率的なため船舶には揚積荷役設備をもたないものとがある。荷主には長期運送契約による安定運賃で原料または製品輸送を計画的に実行できるメリットがあり,船主側には運賃変動にわずらわされることなく長期安定運賃収入が保証される利益がある。専用船の増加と大型化は特に第2次世界大戦後の重化学工業化によって著しく促進された。
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世界大百科事典(旧版)内の専用船の言及
【貨物船】より
…20世紀後半に入って,旅客のほとんどは飛行機に移り,船による旅客輸送の比重は非常に小さくなったが,一方,産業活動の拡大に伴う貨物輸送はその後増大の一途をたどり,とくに外国貿易ではほとんどの物資が貨物船により輸送されている。石油,鉄鉱石,石炭など輸送量が多い物資にはそれを専門に輸送する専用船が使われ,他の貨物についても輸送量の増大とともに専用船化の傾向が強まっている。
[運航形態から見た貨物船の特徴]
貨物船はその就航状態によって定期船と不定期船に分けられる。…
【商船】より
…貨客船は旅客定員のうえでは客船に入るが,旅客のほかに貨物を積むものである。貨物船はかつては雑貨を運ぶ一般貨物船が主体であったが,近年の海上輸送量の増大に伴って,大型化とともに専用船化が進んできた。輸送量が増えると同種の貨物が大量に動くことになるから,これは専用船で運ぶほうが有利になる。…
※「専用船」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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