日本大百科全書(ニッポニカ) 「ばら積貨物船」の意味・わかりやすい解説
ばら積貨物船
ばらづみかもつせん
bulk carrier
包装しないで輸送するばら積貨物専用の貨物船。穀類、石炭、鉱石などは多くばら積みである。第二次世界大戦後、穀類の海上輸送量が大幅に増加したので、そのばら積輸送に最適な船型として開発された。油類もほとんどがばら積みされるので、油タンカーも統計上ばら積貨物船に分類されることもあるが、油タンカーの名で別に扱われることが多い。
船型は、船尾に船橋および機関室を配置した一層甲板船で、船底の二重底タンクの両側に斜めの斜面がつけてあり、グラブなどによる粒状・粉状貨物の荷役がしやすいためである。また鉱石など比重の大きい貨物を積むと重心が下がりすぎるので、重心を上げることもできるようにトップサイドタンクがある。このタンクの断面が三角形なのは、船体の横揺れによるばら積貨物の移動を防ぐためである。初期のばら積貨物船は1種類の貨物を運ぶ専用船が多かったが、その後、海運市況や荷動きに応じて広い範囲の貨物を運べるように設計される例が増えている。鉱石と原油、あるいは鉱石と原油とその他のばら積貨物を積む兼用船、さらには鋼材・製材などの長尺貨物、ブルドーザーなどの機械類などを積む船も現れて、多目的船とよばれたりするようになった。
[森田知治]